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華ノ探偵少女・反町友香  作者: 空波宥氷
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金とカルテ

主な登場人物


・青山清花(アオヤマ サヤカ

神奈川県警の刑事。友香の姉的存在。

英国人と日本人のハーフ。

灰色の髪色に青い瞳という身体的特徴を持つ。

愛車はナナマル(JZA-70)。



・足利孝之(アシカガ タカユキ

ベテラン刑事。清花の教育係。

中年太りの男性警部。

高校生になる娘がいる。

7-1


 清花は、足利とともに取調室にいた。



「刑事さん!だから、俺やってないって言ってるでしょ!!」



 机を挟んで、向かい側のパイプ椅子に座った男が叫ぶ。

 男の名は、吴浩三ウーコウゾウ。周博然に金を貸し、口論の現場を度々目撃されていた人物であった。

 彼は、周暴行の容疑を否定していた。

 その言い方に、すかさず清花が突っ込む。



「では、金銭トラブルがあったことは認めるんですね?」

「え?あ、ああ……」

「詳しく聞かせていただけますか?」



 彼は、トラブルがあったことは認めた。

 清花が更に問いかける。



「えーっと、3ヶ月前にアイツに5万貸したんだ。モチロン円でな。1ヶ月以内に返すって言ったのにいつになっても返えさねぇからよ、ムカついて取り立てに行ったんだ」



 5万円といえば、今の通貨レートではかなりの額である。

 戦後からしばらく経過して穏やかになったものの、日本経済は未だに超円高のままであった。



「それで口論になったと。では、推定犯行時刻、昨夜10時から11時の間、どこで何をされていましたか?」

「ちょっと、勘弁してくれよ刑事さん……」



 彼にアリバイを尋ねる。

 吴は机に突っ伏し、頭を抱えたが、



「ん?待てよ……その時間なら俺、雀荘で卓囲ってたよ!店長に聞いてくれれば分かると思うけど!」

「店の名前は?」



 身を乗り出して、アリバイを主張してきた。

 清花の後ろで腕を組み、やり取りを静観していた足利が尋ねる。



「雀荘Vampireっつー、大通りからひとつ路地に入ったトコの店だ」



「聞いたか?至急調べてくれ」



 足利が背を向け、スーツで口元を隠しつつ首輪に指示を送った。

 その間にも、清花が聴取を続ける。



「では次に、周氏があなたに借金していたことについてですが、その理由は何だったのですか?」



 周から何か聞いていないか、彼女が尋ねる。

 それに、吴は記憶を探りながら答えた。



「あぁ、それか。たしか、新規事業の開拓だとか何とかで金使ったから当面の生活費っつってたかな?よくわかんねぇけど」

「そうですか……」



『失礼します。足利さん』



 現場の捜査員から連絡が返ってきたようだ。足利はいくつか言葉を交わすと、通信を切った。

 そして、吴に向き合い、呻くように言った。



「……アリバイが証明された」

「そ、それじゃあ……!」

「ええ……ご協力ありがとうございました」



 喜ぶ男とは対照的に、清花と足利の表情は険しいものであった。






7-2


「空振りだったか……」

「そのようですね……」

「さて、これからどうする?」



 微かに険しい顔をする清花に、足利が問いかけた。

 彼は、彼女の教育係を任されている。おそらく、清花を試しているのだろう。

 少なくとも、彼女はそう思った。それだけに頭を回転させ、答える。



「そうですね……私は、消えたカルテが気になります。もしかしたら、そのカルテに記された患者……の飼い主の中に犯人がいるかもしれません」

「ああ、残された手がかりは今のところそれだけだもんな」



 苦い表情をしながら足利が同調する。

 それを受けた清花が、更に提案をした。



「ペットクリニックに常設されたバスタブから、水没したパソコンが見つかっています。鑑識が調査中とのことですが、何か分ったかもしれません」

「行くか」

「はい」



 清花が頷く。

 2人は鑑識課へと向かった。


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