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華ノ探偵少女・反町友香  作者: 空波宥氷
2/27

事件発生

主な登場人物


・反町友香(ソリマチ ユウカ

中華街に暮らす探偵少女。中学2年生。

ピンク味の帯びた白い髪に、赤い瞳を持つ。

茉莉花茶が好き。



・青山清花(アオヤマ サヤカ

神奈川県警の刑事。友香の姉的存在。

英国人と日本人のハーフ。

灰色の髪色に青い瞳という身体的特徴を持つ。

愛車はナナマル(JZA-70)。



・足利孝之(アシカガ タカユキ

ベテラン刑事。清花の教育係。

中年太りの男性警部。

高校生の娘がいる。



2


「えー、被害者の名前は周博然しゅう はくぜん。年齢は37歳。このペットクリニックの店主です」



 中華街大通り沿いにあるペットクリニック。そこに青山清花あおやま さやかの姿があった。

 事件現場となった店内は、物が散乱し、凄惨たる様相を呈していた。被害者と犯人が揉み合いになったのだろうか。戸棚のカルテや処方箋などの書類が床に散らばり、医療器具の類も倒されていた。



「凶器の詳細は不明ですが、被害者は頭部を鈍器のような物で殴られており、一命は取り留めたものの、現在意識不明の重体です」



 清花が状況を淡々と語る。

 彼女の首に装着された通信機器、通称『首輪』が空間に画面を照射していた。それに表示された概要を読み上げる清花。

 彼女たちの周りでは、複数のロボットが鑑識作業をしていた。



「第一発見者はこの店の受付嬢で、朝店に入ろうとしたところ、鍵が開いており、呼びかけにも応答がなかったそうです。不審に思い診察室に入ったところ、床でうずくまった被害者を見つけたとのことです」




 画面から顔を上げ、彼女は目の前にいる小太りの中年男性、もとい上司に報告した。

 上司こと足利孝之あしかが たかゆき警部は、彼女の報告に感想を漏らした。



「命があっただけ不幸中の幸いか。にしてもヒデェ散らかりようだな。盗まれた物とかはあったのか?」



 辺りを見回しながら、彼女に問いかける足利。



「ええ、こちらへ」



 清花は、店の受付へと向かう。

 それに足利が続く。彼が足の踏み場がないとばかりに、大げさに大股で移動する。



「レジの中身が全て盗まれています。また、書類棚からカルテの一部が紛失しているそうです」

「そうか、捜査室に情報を流しておいてくれ」

「了解です」



 彼女は首輪を再度操作すると、サイバースペースに作成された捜査資料室に情報を共有した。






第一発見者談。

映像ファイル12MB


レジの金銭紛失。消えたカルテ、数部あり。現在、物盗りの線が濃厚。






「青山、お前はこの事件をどう見る?」



 捜査室に情報が共有されたことを確認した清花に、真剣な表情をして足利が問いかけた。



「そうですね……鑑識の見立て通り、レジの金が無くなっていることから金銭目的の線が濃厚かと。ただ、そうだとすると金庫に手がつけられていないのが引っかかります」



 少し考えるポーズを取って、清花が見解を述べる。

 それには足利も同意見のようで、頷き言葉を付け加えた。



「確かに。いくら店主がいたからといっても、金庫の中身を奪う方法はいくらでもあったはずだ」

「ええ。それと、一部カルテが紛失していることから、犯人が身元を隠すために持ち去ったと考えられます。室内の荒らされ具合からこちらが本命だと私は感じました」



 物盗りの線には疑問が残る。清花はそう結論付けた。

 その彼女の推理に、上司が納得といった様子で頷く。



「なるほどな。レジの金はフェイクか」

「その可能性は充分にあるかと」



 ただし、ひとつだけ引っかかる部分があったようで首を傾げていた。



「しかし、金でないとすると犯人の目的は何だ?」



 だがすぐに、足利はハッとした表情をすると、トーンを落として推測を口にした。



「……!復讐か」




 清花も上司と同様、真剣な顔をして頷く。



「ええ、私もそう考えています。飼い主にとってペットというものは家族のようなものです。ペット葬なんてものがあるくらいですから。もし、医療ミスや手違いで殺されてしまったのなら相当な恨みを抱くはずです」



 彼女が、頭の中で犯人像を作り上げ、その立場に立って心情を代弁する。

 犯人を検挙する上で、こういった相手の考えを推察することは効果的だと彼女は考えていた。

 上司である足利も同じようで、彼女の見解に同調する。



「医療ミスなんてなくても逆恨みする奴だっているだろうな。そこは人間相手と大して変わらない。それこそペットは家族だからな。大変だな。医者ってヤツは」



 最後にボヤき、首を振りつつため息をつく足利。

 だが、すぐに頭を切り替えたようだ。



「よし、俺たちも周辺への聴き込みに行くぞ」

「はい」



 足利が犯人検挙に向けて、店の外へと歩を進めた。

 清花もそれに続く。

 被害者のためにも、一刻も早く事件を解決し、真相を究明する。彼女はそう決意し、捜査へと向かっていった。


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