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華ノ探偵少女・反町友香  作者: 空波宥氷
15/27

友香

主な登場人物


・反町友香(ソリマチ ユウカ

中華街に暮らす探偵少女。中学2年生。

ピンク味の帯びた白い髪に、赤い瞳を持つ。

茉莉花茶が好き。



・青山清花(アオヤマ サヤカ

神奈川県警の刑事。友香の姉的存在。

英国人と日本人のハーフ。

灰色の髪色に青い瞳という身体的特徴を持つ。

愛車はナナマル(JZA-70)。


15


「あ、あの……」



 捜査情報を共有する友香たちの様子に、控えめながら申し出する声があった。

 周玲奈である。



「そんなこと教えていいんですか……?捜査情報じゃ……」



 少女の様子をチラリと見ながら、玲奈がおずおずと清花に尋ねた。

 それは当然の反応である。が、こと友香に至っては例外なのである。



「ああ、言っていませんでしたね。大丈夫ですよ、この子は国選探偵ですから」

「こ、国選探偵……!?こんな小さい子が柳さんと同じ国選探偵なんですか……?」



 柳の肩書きは知っていたようだ。

 知っているのなら、なおさら驚いたことだろう。



「タイミングを逸していましたが、その子は一体……?」



 友香を恐る恐る見つめる玲奈。



「ああ、そういえば紹介していなかったな。こいつは……俺の弟子の反町友香だ」

「で、弟子……!そうだったんですか!」



 シンが友香の正体を明かす。

 玲奈は、友香の顔を見て、シンの顔を見て再び友香の顔を見た。



「初めまして。国選探偵で、李徳深の弟子の反町友香よ。いつもお世話になってるわ。よろしくお願いするわ」

「よ、よろしく……」



 友香が笑みを浮かべ、きちんと玲奈の目を見つめ、自己紹介をした。

 一方、玲奈は、少女の笑みから凄みでも感じているようだ。人見知りのような、引き気味な挨拶をしていた。



「まぁ、弟子であり、師でもあるがな」



その様子を尻目に、シンがワイングラスを見つめながら呟いた。



「どういうこと?」



 言われたことがわからず、怪訝な表情をする友香。

 彼はその疑問には答えず、顔を上げ、逆に彼女に問いかけた。



「アーユ、お前にとって香りとは何だ」

「香り?そうね……」



 その問いに、少し考えるポーズをとる友香。

 そして彼女は答える。



「それ単体では存在できないもの。何かがあって初めて成り立つもの、それが香りよ」

「その通りだ。そしてそれは、俺達人間も同じだ。人も独りでは生きてはいない。そういうことだ」



 彼女は、彼の言いたいことを理解していた。

 そしてそれを、母親が残した言葉と重ねていた。



(友達を大切に……か)



 人は人と関わることで、様々なことを学び、日々進化を続けているのだ。

 目にも見えず、実感も湧かないごく微量な変化ではあるが。それが縁の持つ力であると、シンは言っているのだ。

 それはもちろん、友香も信奉しているところである。



「……香りを薫じる華もまた、何かがなければ香りを薫じることはできない」



 少女が言葉を生ける。

 彼の言葉には、忠告めいたものも含まれていた。

 それは、ひとりの人間には限界があるということだ。



「大丈夫よ。私の華は、そう簡単に枯れたりはしないわ」

「……そうか」



 友香が不敵な笑みを浮かべた。

 彼女は示したのだ。

 自分には心強い仲間がいると。その仲間に支えられている自分は、そうヤワではないーーその仲間が困ったとき、手を差し伸べられるほどに自分を熟成させていると。

 そう示したのである。



「フッ、そうだったな……」



 彼は、子どもの成長を喜ぶ親の気持ちがわかった気がした。

 少女の言わんとしていることを理解したシンは、口元に笑みを浮かべ、満足そうにワインを煽った。


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