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第七十八話 休憩した

 駆除対象(レッドベア)を中心に相手に何度かの戦闘を経た僕らは、一度休憩を取ることにした。


 最初に見張りへ向かう数名の中には、エマさんの姿がある。前線に立たないぶん、気を使っているのだろうか。


「だから、エマさんは休んでいただいて結構ですから……俺らの回復で魔力を使ったぶん、その回復に充ててもらったほうがーー」


「いえ、周囲を警戒しながらでも魔力は回復しますのでお気になさらず! いざと言うとき障壁を作れるだけの量は残っていますし!」


 ……いや、あの空気を読まず莞然と笑う様子を見るに、献身が習慣として当たり前になってしまっただけなのかも知れない。エマさんもみんなも、難儀だなあ。


 それはそうと、僕はいつ見張りに立てばいいのだろう。


 自分も前に出ていなかったぶん、少し石を投げた以外は実質ピクニックだったので多少気まずい。


 とは言え、僕も指名依頼で受けた役割がある。収納魔法から人数分の水と食料、必要に応じて魔法薬の瓶も取り出し、休んでいる冒険者たちに渡していく。


 途中、なぜか水と食料が足りなくなったので、僕が事前に用意していたものを渡した。


 おそらく、何人かが並び直して多く持って行ってしまったのだろう。


 昔スポーツをしていた頃、修学旅行に行った先輩のお土産を一人で複数貰っていた奴らを思い出す。


 とは言え、ここが日本なら誰から見ても余計なルールや取り決めなどがあったはず。


 となれば、この程度は緩さと引き換えに受け入れるべきデメリットなのだろう。ここは日本ではないのだし、郷に入れば郷に従え、だ。


「おう、ジョージもここ来て座れよ」


 次からはきちんと、渡した人のことを覚えておこう。反省していると、先に腰を下ろして補給をしていた冒険者から声をかけられた。


「ありがとうございます。失礼します」


「いやあ、荷物持ちがいると全然違うな。あのレッドベアどもを丸ごと回収しちまうんだから。こんなことなら、もっと傷が少なくなるよう狩るべきだったぜ」


「なに言ってんだお前の腕で。けど、今日の報酬は大いに期待できそうだな」


 気づけば、周りに人が集まっていた。少し離れた場所にいる人からも、ときおり声がかかる。


「単なる荷物持ちしてくれるだけでもたいしたもんなのに、とんでもない投石まであるんだもんな。さっきは助かったぜ」


「まったくだ。そのうえ弁当まで出るんだから、割のいい依頼だぜ。あれ、今日のメニューはちょっと違うか……?」


 輪の中心に近い位置でプレッシャーを感じながらも、なるべく人好きする笑みを浮かべられるよう努力する。


「いや、とんでもないです。ありがとうございます」


「おいジョージ、お前、物資横領したら死刑だからな」


 その乱暴なジョークに、場がドッと沸いた。


「あはは、怖いこと言わないで下さいよー」


「おいおい、そいつ怒らせたらケツの穴二つにされちまうぞ」


『新しい現場に行ったとき、早いうちにあだ名を付けられたり冗談を言われるぐらいのコミュニケーション能力を身に付けろ』


 土方時代の先輩が、こんな言葉を言っていた覚えがある。


 一緒に仕事をする人間の中には、時に意味もなく嘘をついて他人を貶める厄介な奴もいる。


 そういう人間からターゲットにされにくくなるため、輪の中から外れないようにするのは決して疎かにできないことだった。


 そういう意味で、あんちゃんや坊主でなく名前呼びというのは渾名(あだな)でこそないものの順調なペースと呼べるのではないだろうか。


「何やら賑やかですねぇ。どのようなお話でしょうか?」


「お、エマちゃんおかえり」


 振り向けば、自分の番の見張りを終えたエマさんが戻ってきていた。


「疲れてませんか?」


「いえ、まだまだ大丈夫です。それより、俺はいつ見張りに行けばいいですか」


 アンナさんは少し離れた場所で体を休めているし、身内に聞く機会は今しかない。


 そう思って訊ねたのだけど、エマさんは笑いながら僕を押し止めるようにした。


「ジョージさんは仕事熱心ですね。ですが、ご心配には及びませんよ」


「そうだぞジョージ。お前にもし何かあったら、冗談じゃない量の物資がパアだからな」


「魔術に尋常でなく長けた奴なら、死体からだって取り出せないこともないんだろうが……まあ、気にせず休んでおけよ」


 そういうことなら……でも、なるべく雑用なんかは僕がしよう。胡座をかいた結果、顰蹙を買うのも面白くない。

計画通り書けずすまぬ…すまぬ…。

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