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第六十九話 依頼内容を聞いた

前の話、最後のほうで主人公の魔力回路が治ったという形に若干修正しています。

ご迷惑をおかけします。

『……何か、ジョージさんにお訊ねしたいことや、頼みごとがあるんだと思います』


 やはり、数日前にオリヴィアさんが言っていた通りの展開みたいだ。


「依頼、ですか」


「そうだ。レッドベアを駆除する冒険者たちの補給のため、君には収納魔法を使って物資を運んでもらいたい」


 そういう話かと納得した僕へ、シャロリア様は続ける。


「現状、レッドベアどもが我が領内を我が物顔で闊歩しているせいで、(ノース)マディソンは物の行き来が苦しいことになっている。討伐に参加しに来てくれた冒険者たちが落としてくれる金も少なくはないが……それ以前に、一日でも早く物流を元通りにしたいところなのだ」


 隣のオリヴィアさんと、微かに視線を触れ合わせる。レッドベアが出て以来、街へ来る馬車はハワードさんが使っていたようなものではなく、もっと頑丈そうなうえに護衛も多く引き連れたものとなっていた。


 別にそれは、善意や騎士道精神とやらだけでやっているわけではないのだろう。おそらく、相当足元を見られているに違いない。


 それでも、飢える人間が出れば不満は一気に爆発する。財政事情は、思ったよりずっと逼迫しているようだ。さっき、長年使われていた家財を売りに出していたのは、そのためだったのか……。


「連日拘束する依頼になるぶん、報酬は弾むつもりだ。どうだろうか」


「投石は、しなくてもいいのでしょうか?」


「休みを取らなければならなくなるほど負担にならない範囲でなら、是非頼みたい」


 僕個人の判断としては、既にこの依頼を受けるつもりでいた。ここは現在僕たちにとっての拠点であり、そこの治世が乱れるというのは、あまり好ましくない。


 それに、近場のレッドベアを駆除すれば、もとからこの街にいた冒険者たちも早めに本来の依頼をこなせるようになるだろう。


 そうしたら、同期の合格者であるアリアさんたちみんなも、依頼を求め街を出なくて済む。カミラさんが以前言っていた、世代の空洞化なども多少は緩和されるはずだ。


 とは言え、僕だけの判断では決められない。昔もとの世界で働いていた頃、工事の日程について近隣住民に憶測で答えてしまい、幸いズレずに済んだものの先輩からきつく叱られた経験があった。下手をすれば、抗議がきて会社が謝る事態になって もおかしくなかったのだ。


 だから、僕の一存では決められない。なるべく受けたいと主張するつもりではあるが、まずは二人にお伺いを立ててからだ。


「あの、同じパーティーの方々と相談させていただきたいので、一度持ち帰らせてはもらえませんでしょうか」


 僕の言葉に、シャロリア様はさして気分を害した様子もなくあっさり返した。


「もちろん構わん。君たち冒険者は自由だ。もし依頼を受けてくれるようなら、いつも通りにギルドへ行ってくれ。話は既についている」


 そしてそのあと、彼女はなぜか、可笑しそうに笑みを溢した。なんだろうと訝しがっていると、ああ、済まないとシャロリア様は弁解した。


「なに、こうして会って話してみたところ、君たちがあまり冒険者らしくなかったものでな」


 昔土木作業員になったばかりの頃、だいぶ上の先輩から『お前の顔はドカタの顔じゃない』と、面と向かって言われたことを思い出す。


「早く馴染めるよう、努力させていただきます」


「いや、そういう話をしているのではない。聞けば君は、送った褒賞金と見舞金を、合格者全員で均等に分けたそうじゃないか」


「はあ……」


 そんなの全員で切り抜けたのだから当たり前だし、損得勘定の話で見たって当たり前の処世術でしかないと思うけれど……。


「普通冒険者となれば、取り分を争って流血沙汰になるようなものだが。なあ、ギャヴィンよ」


 イタズラっぽく笑いながら言うシャロリア様の言葉に、僕とオリヴィアさんはギャヴィン試験官のほうを振り向く。そして、まさかの気まずそうにする姿に若干引きながら訊ねた。


「そ、そうなんですか……?」


「……昔の話だ」


 そう言うと、ギャヴィン試験官は僕らから目を逸らした。マジか……きっと、お酒でも入っていたんだろう。などと、無理矢理納得する僕たちの様子を見てもう一度笑ったあと、シャロリア様はトーンを変えて話しはじめた。


「今回の被害は悲しむべきものだが、君たちの存在は復興に向けた希望のうちの一つだ。我々も支援を惜しむつもりはない。何かあったら、気軽に声をかけてくれ」 


「ありがとうございます」


 全て言葉通りに受け取るつもりはないが、他の街への流出を避けるためなら、協力してくれるつもりらしい。


「それに、聞けば君たちは十六歳だそうじゃないか。つまりと同い年。私から見ても一つ下と年齢(とし)が近い」


「是非、親睦を深めていただきたいものですな」


 執事さんも調子よく続けるが、僕は十六歳どころかそれより一回り近く上のオッサンだ。


 シャロリア様は普通に話してくれるが領主だし、ケイトさんは睨むのをやめて以降目を合わせる素振りも見せない。ちょっと難しいんじゃないかな……。


 それにしてもシャロリア様、まだ十七才なのか。もちろん未成年だろうとは思っていたけど、それにしては華奢で背も高くないにも関わらず貫禄がある。


 おそらく、立ち居振舞いで上手くナメられないようにしているんだろう。常に仏頂面とは言え、そこに年齢相応の生硬さや気負いが見てとれるケイトさんとは大違いである。

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