無情なもの
都会の雨は何処か無情で
重く暗い灰色の雲から無数に降りてきて
傘を持たない人びとを嘲笑うかのようだ
いや寧ろ
無情なのは街の方なのだろうか
人間などとうに及ばぬ高いビルが
そこに入れぬ人びとを見下ろしている
いやいっそ
雨でも街でもなく
そこに居る人間が無情だから
それに関わるもの全ての情が
削ぎ落とされてしまうのだろうか
澄ました顔で足早にすれ違ってゆく人びとは
まるで情なき人形のようだ
そんな事を考えながら
ビルのてっぺんにある
カフェから全てを見下ろしながら
コーヒー啜る私こそが
最も無情なのかもしれないと
漂う湯気の中から見出してみる