2話 私と絵本
仕事は、小さくはあるが出版社である。
子供向けの絵本なんかを扱っている出版社『星の光出版社』というところで働いている。
元々小さい時から、絵本を読むのが大好きだった私は。
最初は、絵本作家を志してみたのだが。
残念なことに絵心というものが、悲しいかななくて。
早々に諦めてしまったのだが…。
本に携わるような仕事がしたいと出版業界を志していた時。
一冊の絵本と出逢った。
『トイプードルと私』という絵本だった。
あらすじは、主人公の笑美ちゃんという5歳の女の子が。
トイプードルのシルクという1匹の犬と出会い、一緒に生活を共にして成長していくのだが。
生きているものであれば、必然的に別れが訪れる。
特にドラマチックな展開があるわけではないのだけれど。
ページを進めていくうちに、自分自身とモカとが重なって涙がとめどなく溢れてきた。
その作品に、一瞬で心を奪われた。
絵本を書いたのは、『月野春』という作家さんだった。
その作家さんの作品をもっと読みたいと思い、調べていくと…。
その作家さんは、すごく売れっ子という作家さんではないけれど。
絵本好きの方達の中では、かなり人気がある作家さんだった。
私が手にした絵本以外にも、多数の素晴らしい作品を世に出していた。
だが、月野春先生が決まって絵本を出版するのは一社だけ。
それが、星の光出版社だった。
私もこんな作品を一緒に作りたいと思い。
今の出版社に入社した。
まだまだ、ペーペーな私では一緒にお仕事をする機会は巡ってこないが。
いつか…と思いながら、日々仕事をこなしていた。




