1話 今の私
今年、28歳になった私。
宇佐美円香。
私は無類のトイプードル好き。
グッズなんかも見つけるたびに買ってしまうから、家の中はトイプードルグッズで溢れかえっている状態だ。
そんな私だけど、今はトイプードルを飼っていない。
三年前に、小さい頃から飼っていたメスのトイプードルのモカを亡くしていたからだ。
亡くなった時は、現実がなかなか受け入れられなくて。
精神的にだいぶまいってしまったが。
今はだいぶ落ち着いてきた。
今もトイプードルが好きなことに変わりはないが、もう犬を飼うことはないと決めている。
もうあんな悲しい想いはしたくないから…。
今の生きがいは、トイプードルのグッズを集めることになっている。
そのために、仕事も一生懸命に頑張っているといった感じだ。
28歳といえば、結婚や出産など。
女性としての人生の転機を迎えていても、おかしくはない年齢です。
円香の周りを見てみても、同級生達から結婚式の招待状や、子供の誕生を告げるハガキなんかも届いていた。
田舎の母からも、友人達に孫が生まれ。
羨ましさから結婚を催促するように、見合い話が毎回のように舞い込むが。
その気はさらさらないので、突っぱねている状態だ。
仕事が生きがいの仕事人間!という人種とも違うが…。
なんだか、結婚というものに、興味が全く湧かない悲しい現実。
周りから、トイプードルグッズを集め、うっとりそれらを見つめている姿から。
『宇佐美はトイプードルが恋人。』とまで言われてしまっている。
一生このままかな?と思っていたのだが…。




