最後のレストラン
ブラックなユーモア。ショートショート作品。
とある国の貴族の男が
気紛れで避暑の為に
田舎街を訪ねました
宿にいても
退屈なので
彼は街を見て
歩く事にしました
しかし田舎なので
なかなか食事を
とれる場所が無く
困り果てています
昔は炭鉱の要所として
栄えた街だったのが
時代の流れとともに
寂れていったのです
その貴族は道行く人に
店の場所を尋ねながら
やっと探し当てました
最後に残ったレストランを
そっと中をのぞくと
お客は誰もいません
営業中だというのに
しかし他のレストランは
もうこの街にありません
仕方なく貴族の男は
お世辞にも旨いとは
言えぬ粗末な食事で
空腹を満たしました
支払いの時に
貴族の男は
その金額を聞き
酷く驚きました
「あの粗末な食事で
そんな法外な金額とは
ひょっとして私が
食べた肉はそんなに
貴重なものだったのか?」
貴族の男の問いに
店の主人は笑顔で
こう答えたのです
「……いいえ貴族様
このあたりでは大して
珍しい肉ではありません
貴重なのは金持ちの客です」