表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

第5話




あれからも俺は、変わらずストーカーとしてメールを送り続け、古宮さんの好きな人として"城戸稜弥"を演じ続けた。


そして、とある作戦を実行した日の夜、彼女に電話をかけた。

もちろん、"城戸稜弥"としてだ。



隠しカメラで、彼女の様子を観察する。

今は、雑誌を読んでいるようだ。


その様子を見ながら俺は電話をかけた。


すぐに音に気づく彼女。


分かりやすく慌てふためく。


そこて、呼吸を整えると、スマホを耳に当てた。




『もしもし?』



彼女の声が聞こえる。



「あ、もしもし?今、大丈夫?」


『うん!暇してた!』




そう言って笑顔をこぼす彼女。


本当に可愛いな……。




「良かった。今日も無事に家に帰ってるんだね。」


『うん。心配かけてごめんね。』


「そんな事ないよ。……あのさ……1つ確認したいことがあって……。」


『……確認したいこと……?』


俺が改まった感じで言葉を発すると、彼女は正座になって俺の話を聞き始めた。





「うん。ここ最近、帰り道につけられてるなって感じたことある?」


『ここ最近っていうか……毎日誰かにつけられてる感じはしてるよ……?』



そりゃ、そうだよね。


最近は、俺だけじゃなくて、周藤も君の後をつけてるんだから。


でも、それは君を守るための尾行だけどね。



「やっぱりそうだよね。」


『どうしたの?』



彼女は緊張しながら尋ねる。



「見てほしい写真があるんだ。」


『写真?』







「うん。もしかしたら、コイツが犯人かもしれない。」





『……えっ……!?』





そう。


俺が犯人に仕立てあげた人物。



お前には悪者になってもらうから。


少しの間だけだけどね。






『分かった。じゃあまた明日ね。』


何かを決意したのか、彼女はそう言って電話を切る。





きっと、明日には全てが分かる。


古宮さん……楽しみにしててね──?























次の日のお昼休み。


俺は古宮さんを呼び出した。



誰もいない講義室。


そこに向かい合って座った。








「──この写真なんだけど……見覚えある?」



俺は、スマホの画面を古宮さんに見せる。



目を思いきり見開く彼女。


今までて一番驚いている顔だ。



まあ、仕方ないよね。


君の仲良しが写ってるんだもん。




「これって古宮さんといつも一緒にいる、周藤陽太だよね。」



俺は、彼女にしっかりと認識させるためにその名前をハッキリと告げる。



「俺も、まさか犯人が周藤くんだとは思わなかったよ。でも、近くにいるからこそ見えない事ってあるよね。」



俺は淡々と語る。



古宮さんは色々な事を思い出している様子だ。


その様子を眺めながら、俺ももう一度写真を見る。


そこには、黒っぽい格好で電柱のかげに隠れている周藤の姿。



これじゃあ、本物のストーカーに見えちゃうよ。


でも、俺としてはラッキーだけどね。




「──古宮さん……?」


俺が、話しかけると彼女の瞳から涙がポロッとこぼれた。


まさかの出来事に俺は驚く。


泣くとは……思ってなかった……。



俺は罪悪感に駆られ、そのまま彼女のの頭を引き寄せ、優しく抱き締めた。





「……ごめんね。泣かせるぐらいなら言わなければ良かった。俺が、話をつけてくれば良かった……。」





「違っ………ごめっ……なさいっ………!!」






「後は俺に任せれば良いから。だから…泣かないで?」




できるだけ優しく話しかけると、古宮さんは声を殺して腕の中で泣き続けた。



さあ、クライマックスだ。


古宮さん──。




















昼休み終了、10分前になると、誰もいなかった講義室にも人が増えてきた。


それは、周藤がこの教室に現れることも意味している。




古宮さんは、下を向いて悲しげに座っている。


すると、周藤が講義室に入ってきた。



俺と周藤の目がバチリと合う。



俺は、勝ち誇ったように笑った。



すると、向こうもニヤリと笑みを浮かべたのだ。







……は?




何だよ。その笑顔。






今のお前には、余裕の1つも無い筈だろう?



そのまま、周藤は古宮さんに話しかける。


古宮さんは周藤の言葉には耳を貸していないようだ。



それで良い。


それで良いんだよ。



そいつの事なんて気にしなければ良い。



しかし、次の瞬間、周藤が何を言ったのかは分からないが古宮さんが肩を震わせた。



そして、周藤はその場を立ち去り、講義室も出ていった。


古宮さんは、慌てて後ろを振り返ったが、周藤は既に講義室の外だった。





……何をするつもりだ?



少しの焦りと不安を抱えたまま俺は、教授の声に耳を傾けていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ