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第4話







「──古宮さん、おはよ!」


「お、お、おはようっ!!」



後ろから、肩をポンッとたたいて古宮さんに挨拶をすると、それを見た葛西さん、周藤がひどく驚いた顔をした。


思わず、笑みがこぼれる。



周藤……お前にだけは絶対に負けない……。





席に着いて、古宮さんの方を見ると、矢継ぎ早に質問をされているところだった。


何を話しているのだろうか?


ちょうど良い。

あれを試すには最高の機会だ。



俺は、イヤホンを耳に差し込むとスイッチを押した。









『───ごめん。最初は単なる嫌がらせだとしか思ってなくて……それはストーカーだって、昨日城戸くんに言われて気づいたの……。』




昨日、古宮さんの鞄に仕掛けた盗聴器。

性能はバッチリなようだ。


気分よく、二人の会話を聞いていると、葛西の口から聞きたくなかった言葉が飛び出した。






『──警察には?』





その言葉に、俺は思わず唾をごくりと飲み込む。






『……相談しようと思ったけど、城戸くんがそれで犯人が逆上すると怖いって言ってたから、してない。』




良かった……。

ちゃんと、俺の忠告を受け入れてくれているようだ。


俺が安心したのもつかの間。

葛西がさらに続ける。






『確かに城戸の言うことも分かるけど、まずは警察に相談するべきよ。一般市民が守ってくれるって言ったって、限界があるんだから。』







『……そう……だよね。』




ふーん……。

頷いちゃうのか……。


まあ、今の説明なら俺でも納得するしね。

仕方ないことだ。


でも、警察に相談するのだけは許さないよ?



『分かった。放課後にでも相談してみる。』




『それで良いのよ。あー、朝から驚いた。

ちょっと飲み物でも買ってくる。』





俺は、イヤホンを外しスイッチを切ると、いつものようにもう一台のスマホを取り出す。


今は、周藤と話をしている古宮さん。


その様子を見て、さらにイライラが増す。




周藤が、古宮さんの元を立ち去ると、すぐにメールを送りつけた。









『警察に相談したらどうなるか……分かってるよね?』









このメールを確認した瞬間、彼女は慌てふためいて、まわりをキョロキョロと見回した。


恐怖にひきつるその表情が、あまりに美しくて、俺は笑みを溢す。


ああ、最高だ……。


そうやって、俺のことばかり考えて狂ってしまえば良い。


そう思うと、さらに笑みが溢れた。




俺は、その時は気づいていなかった。


そんな俺を鋭い目付きで見ている奴のことに──。

















それからも、俺のストーカーは変わらず続いていた。


帰りをつける事も増えたし、隠しカメラで彼女の様子を観察するのは毎日の事だった。


俺からの連絡に頬を染める彼女の姿は何度見ても飽きることはない。


また、ストーカーからの連絡に震える体も、飽きることはない。




そんな充実した日々を送っていた矢先、事件は起きた。





いつものように、彼女の後をつけている時の事だった。


彼女の姿をカメラにおさめようと、スマホを向けた瞬間、誰かに肩をポンポンと叩かれた。


俺はビクッとして振り返る。





「──!?……あれ?周藤くん?こんなところで会うなんて偶然だね?」


俺は、平然を装い周藤に話しかける。


周藤の表情は曇ったままだ。




「……偶然なんかじゃないよ。」




「……は?」




「僕、君の後をつけてきたんだから。」






俺としたことが、コイツにつけられている事にも気がつかなかったのか……!?


古宮さんに集中しすぎた……。





「……何で、俺の後なんてつけるの……?」




「やっぱり君だったんだね。古宮のストーカーの正体は。」




ずばり言い当てられ、俺は戸惑う。


しかし、息を整えて続けた。




「……そうだよ?俺が、古宮さんをストーカーしてる犯人。」



「…あっさり認めるんだね。」



「否定したって、バレてるものは仕方ないからな。」



俺の開き直った態度に、周藤はムッとする。






「これ以上そんな事止めなよ。古宮が怖い想いをしてること分かってるか?」



「は?そんなの当たり前だろ?」



「……は?」




「だからこそ、止められないんだよ。彼女が、俺の事を考えて怯えてるその様子を見るだけで、俺は満足なんだ。彼女が、俺だけの事を考えてると思うと、すごく興奮するよ。お前なんて、目に入らないくらい、彼女の頭の中を俺だけに染めてやりたいんだ。」



興奮気味に話す俺を見て、明らかにひく周藤。





「……そんな事しなくたって……古宮は……。」





「…とりあえず、俺の邪魔だけはしないでくれ。もし、彼女に伝えたり、警察に相談したりしたら……どうなるか分かってるよね?」



俺の言葉に、周藤は黙り込んだ。



「……じゃあ、俺は忙しいから。」




そう言って、周藤を置いて帰る。


あと少し……あと少しで良いから楽しませてくれよ。



彼女が、俺の事が好きだなんて分かっている。


でも、その好きな人が自分のストーカーだと知ったら彼女は一体、どんな目で俺の事を見るのだろう?


それが、楽しみで楽しみで仕方ないのだ。






「そろそろ、新たな作戦を実行するか……。」





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