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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
artifact
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6

 休日も事件に巻き込まれたが、仕事はそういった事情は考慮してくれない。


「今回は秘法を得た生物の殺害、殲滅だ」


 指令が下り、回収部隊である俺たちが秘法を得た生物を討伐しに向かう。


「なあ、俺たちは回収部隊じゃねえのか?」


 以前の話も聞かないような自分勝手さは鳴りを潜めたものの、相変わらず上司に対する口の利き方はよくないままであるワレンコフが聞いてくる。確かにこの舞台は回収部隊と呼ばれる部隊だ。


「俺たちの仕事は主に回収なのは事実だが、場合によっては破壊することも織り込まれている。そもそも、回収だけを行うつもりなら攻撃できる人員を多大に組み込むはずもないだろう」


 秘宝によってはその場から動かせなかったり制御できないものも多い。そういったものはその場の判断で破壊することもある。特に危険なものであったり、利便性、汎用性、有用性のないものであるとかで必要のない秘宝は多くの場合破壊される。コレクションにしたい、とか研究したいという職員もいるが、当たり前だがそういった声は無視されている。

 特に秘宝とは違い、秘法を得た生物の場合、人間以外はほぼ全て殺害、殲滅が指示される。なぜかと言うと、人間並みの知能を人間以外が持っていると非常に厄介なことになるからである。そのため、たとえ知能系の秘法でなくとも、確実な殲滅を行うように言われている。


「今回は何を狩るんですかい?」


 フェルモートが今回の討伐対象について訊いてくる。


「調査部隊の話では、大きな亀らしいな。大型バスくらいの体長と高さの大亀だ。体にいくらかの硬質化、通常は見られないような棘のような未知の器官なども見られる。恐らくだが、身体強化か改造を行うような秘法を得た結果だろう」

「てことは私の出番はない感じですか」


 相手の内容を聞き、メイシエが言う。


「そうだな。ジェイドとメイシエは待機だ。いつでも逃げられるように車の発進の準備や周囲の確認などを残ってやってもらえると助かる」

「了解です」


 メイシエは持っている武器がヌンチャクであるため、人型サイズの敵であればその能力もあり遠距離から一方的に殴り倒せるのだが、今回の相手は巨大で固い亀だ。ヌンチャク程度では全く通じないだろう。


「でも、リーダーはその武器でいいのか?」


 ワレンコフが俺の腰につけている銃を指し言ってきた。


「リーダーの使っている銃は秘宝よ。普通の銃とは違うわ」

「まじでっ!?」


 ディナエリーの言葉にワレンコフが驚いている。


「リーダーだからってそういうのを使えるのは羨ましいぜ」

「……使ってみてもいいぞ。下手をすれば死ぬが」

「へ?」


 ワレンコフが俺の言葉を聞き、ぽかんとした顔をする。何を言っているのかわからない、といった感じだ。俺は腰から銃を抜き出す。


「これは所有者の血液を吸い出して弾丸にする。その弾丸は普通の銃器とは桁違いの硬度、威力、そして貫通途中で破裂し、内部から破壊するといった高い攻撃性能をもつ。だが、血液を吸い出すってのが非常に厄介で、普通なら六回も撃てば血液が足りなくなって死ぬ」

「まじか……でもリーダーは何故平気なんだ?」


 そういえばワレンコフには俺の能力が何であるかを説明したことはない。一応、どういった特性があるのかは前の"闇の祝杯"の回収を行た時に見せたが、あれだけで理解できるはずもないだろう。


「俺の能力に由来するものだ。俺の秘法は……………"観測者の決定論"という能力なのだが」

「うわ……」

「相変わらずな能力名……」

「言っておくが能力名をつけているのは博士だからな? 俺じゃないぞ?」


 ワレンコフとディナエリーが能力名を聞いて微妙な声を出す。俺だって名前に関してはもう少し何とかしてほしいところだ。俺はいつも"現状維持"で通している。というか、お前たちも"焔天球"と"月夜の地母神"とかで人のことは言えないんじゃないか?


「まあ、能力名に関しては良い。秘法の能力は、現状の維持、不変性だ。俺は例え体の一部を失っても直ぐに元に戻る」

「それはすごいが……何故そんな名前に?」

「もう少し能力に言及してほしいんだが……まあ、もともとはシュレディンガーの猫に関しての話が元らしい」

「しゅれでぃんがー……の猫?」


 ワレンコフが分からないといった顔をしている。まあ、今は学校教育は昔とは違っている。攻撃系の能力の秘法を持っているのならば、学問系に進まなかった可能性もある。


「……まあ、あまり面倒な話はあれだ」


 手のひらで顔を隠す。


「ワレンコフ。今俺が顔を隠したが、怒った表情か普段の表情かはわからないな?」

「そりゃ顔を隠しているし」

「どちらの表情をしているか、確率は半分、50%だ。シュレディンガーの猫はこの状態でいろいろと言われている話なんだが、それは今回はどうでもいい。今俺がどちらの表情をしているか、それを知るのは簡単だ。手のひらをどけて顔を見ればいい」


 そう言って顔を隠していた手のひらをどける。


「今、お前が俺の顔を見たことでどのような表情をしているかが確定する。俺の能力はこれがもとであるらしい」

「?????」

「……まあ、俺も最初聞いたときはよくわからなかった。わからないならわからないでい。名前に関しては気にするな。俺はいつも"現状維持"って言っているからな」

「はあ……」


 ワレンコフはまだわからないことで頭がいっぱいなようだ。そのあとは現地に着くまでとても大人しかった。

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