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 数日、巨大な王種に対するための人員集めに追われ、数十人の王種が集まり、巨大な王種を討伐することとなった。


「見たことない人ばかりだな」


 基本的に王種は各地に散っている。その中で戦闘を主に行える者は少なく、上級以上はその中でも数人程だ。多くの王種は戦闘を行えないか、行えても強くないことが多い。そのため、アジクみたいに強い一部の王種が遠くまで行って仕事をする羽目になっている。


「……戦闘経験なし、中級の王種ばかり。流石になあ」


 周りにいる者は戦闘経験が殆ど無い者ばかりであるためか、大半が不安そうな顔をしている。これだけ多くの王種が集められる事態だ。今回のことがどれだけ大きいことか、経験がなくてもわかっているのだろう。そのうえ、初めての実戦だ。正直逃げ出したいところだろう。


「……結局倒す手段が思いつかなかったんだよな」


 ぼそり、と独り言をつぶやくアジク。結局あの後も巨大な王種を倒すための手段を考えていたが、どうやって倒せばいいのかアジクは全く思いつかなかった。唯一方法があるとすれば、アジクと戦った男の使った天剣という強大な威力の斬撃くらいである。しかし、あの男は他国の王種であるため、協力の要請などもできないだろう。


「……まあ、やるだけやるしかないよな」


 相手が相手だけに放置するわけにもいかない。放置していれば確実にアジクの住む国がなくなることになるだろう。








 巨大王種を相手にするのに数で挑もうとするものの、明らかに無謀だった。


「ぜえ、ぜえ……どう考えても無理だ!」


 今アジクは各所に分散した王種の保護、回収に回っている。まず、王種の向かう方向に攻撃能力のある王種を散会させ、それぞれ巨大王種が射程範囲に入ってきた際に攻撃するように指示された。その指示通り、各王種たちが分散し、巨大王種を待った。それ自体はうまくいったが、そもそも前提が間違っていた。あの巨大王種相手に中級王種がそれぞれ攻撃したところで、蟻が象に蟻酸を吐くようなもの、当たっても全くダメージにならないのである。

 巨大王種に火の矢、水の球、雷の槍、岩塊や空気弾、さまざまな攻撃を行ったが全くそれらは相手の体に傷をつけることはなかった。ある意味ダメージがなかったのは幸いだったのだろう。その攻撃に対し巨大王種は明確な反撃を行わなかった。ただ、煩わしい、何か当たっているな程度のことは思ったのか、尻尾を振り回しその攻撃の元を掃おうとした。ここで問題なのが、やはり相手の大きさだ。相手は尻尾を軽く振っただけだが、そのちょっとした動きは木々を薙ぎ払い、地面を抉り飛ばすようなとんでもない脅威なのだ。どう考えても戦闘経験のろくにない中級の王種が回避、防御できるようなものではない。

 そこで活躍するのがアジクである。相手の攻撃速度よりも速い速度で動けるアジクであれば、相手の攻撃が届く前にその攻撃先にいる王種を回収できる。最も、負荷のかからない速度では間に合うことはなかったようで、何度かの回収を行った後、かなりの疲労で休まざるを得なかった。その間は攻撃をやめてもらうように頼み、その指示が伝達された。各王種の攻撃が全く聞いていなかったのもその指示があっさり行われた理由だろう。


「ダメージなし……中級じゃまるで相手にならないか」


 伝承では上級でも半数を失い戻ってきたレベルの相手である。それでダメージを負ったかは不明だが、少なくとも戦闘を継続できない、する意味がないと考えられたことからも、大したダメージは与えられなかったのだろう。これから上級の王種による攻撃が行われるが、それがどの程度のダメージになるか次第でこの後どうするかが決まりそうだ。


「……それにしても、負荷が大分軽いな」


 今回アジクは各王種の回収で動きっぱなしだったが、その際に能力の加速の負荷の限界の上昇、負荷の軽減が起きているのが判明した。今まで最大とされていた時間加速での負荷がいつも使う最低限の負荷程度まで落ちていた。


「……最大が上がったけど、この加速で攻撃するにも相手のサイズが問題だな」


 防御力が高くても、相手のサイズが小さければまだ戦うことは出来たかもしれないが、相当な巨体の相手だ。そもそも武器が相手の外側からどこまで届くか不明だ。下手をすれば皮を斬る程度で中の肉にまで届かない可能性だってある。


「攻撃手段……槍? 槍でも長さは届きそうにないよな。目を狙う……どうやってあそこまで登るか、ってところだ。目を潰せてもよくある脳にまで届かせるのは恐らく難しい。そのあと暴れることから考えても厳しいな」


 あの巨大王種相手にあらゆる攻撃手段、対策を考えるが、どれも内容は厳しい。今アジクが考えられる手段だけでは巨大王種には届かない。








 王種の住む建物。ケティはそこで待機している。ケティのほかにもメティエやゴウト、エリシェなど、戦闘能力でない王種はもともと住んでいる場所で待機している。しかし、沢山の王種が戦闘に参加している状態では待機していても落ち着かないのか、入り口でそわそわしている。そんな中、客が訪れた。


「はい、誰ですか?」


 来客は珍しい。しかし、今は色々と忙しい状況だ。もしかしたら何らかの緊急連絡かもしれないと訪れた相手にケティが対応する。


「すまないが、アジクはいるか?」

「あら……あなたは」


 ケティが玄関の扉を開けると、そこにいたのは王種解放戦線の長、ディレルであった。




「そうか、やはり件の王種の討伐に駆り出されているのか」


 アジクの行先、その戦いの相手の話を聞き、納得しているディレル。どうやら彼もあの巨大王種の情報はすでに入手しているようだ。


「アジクに何の用だったのですか?」


 今の状況でアジクにどんな用があったのか、ケティはディレルに尋ねる。


「何。彼の向かった先、巨大王種の討伐は我らにも必要だった。そのために彼の助力を受けたかった。それだけだったのだが」


 王種解放戦線の活動の場は現在のところこの国が中心だ。各所に人員がいるし、住む場所の都合としてもこの国を巨大王種に破壊されてしまうのは困る。


「だが、すでに行っているというのであれば……我らも行かなければならないな」

「それは……王種討伐に参加してくれるということですか?」

「別にお前たち、国の活動に手を貸すわけではない。こちらも必要に駆られて行うだけだ。共闘くらいはしてやるがな」


 ケティにそう言って、すぐに建物を出ていくディレル。すでに巨大王種のいる場所は把握している。その戦場へと向かっていった。


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