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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
guardian
64/485

E

「うまく避けたじゃないか」

「貴様っ!」

「真ん中を狙ったんだけどなぁ。不意打ちだったがよく避けたもんだ」


 壁を登って一人のヒーローが現れる。黒い戦闘服を身に纏うヒーローだ。


「よく頑張ったもんだ。だけどこれ以上は無理だろ」


 そう言って黒いヒーローは槍を作り出す。そして、その槍を静城に向けて思いっきり投げつけた。


「っあ!?」


 投げつけたその速度が乗った槍は静城を貫き、その勢いのままに飛んでいく。しかし、静城を貫いた槍は静城に傷を与えることはなかった。そのまま静城は本部の方角へと飛んでいく。


「おっと。そういえば高い場所だったな。まあ、落下程度なら死なないだろ」


 黒い戦闘服のヒーロー――槌原は槍の勢いが落ち、徐々に落下し始める静城を見てつぶやく。そのまま静城の方から悪の組織の首領のほうを見る。


「悪いが、このまま続けるぞ」

「ふん。不意打ち程度、何とでもなるわっ!」


 首領は無数の闇のエネルギー球を生み出し、槌原に撃ちだした。槌原は生み出した白い槍でエネルギー球を弾き首領に一気に近づく。懐に入り、槍を突き刺す。


「はあっ!」


 しかし、首領が体全体からエネルギーを放出し、懐に入った槌原を弾き飛ばす。


「くっ」


 弾き飛ばされた槌原はその勢いのまま後ろに下がる。そのまま遠距離から多数の白い槍を作り、首領に撃ちだした。首領も同様に闇のエネルギー球を撃ちだし槍を撃墜する。


「なかなかやるようだな。だが、あまり長引くのも面倒だ」


 首領が両腕を前方に突き出す。その差し出された手の前に膨大な闇のエネルギーが集まる。


「死ぬがいい」


 集められたエネルギーが槌原に撃ちだされる。


「雷の槍!!」


 天空から槌原の前に三本の雷が纏まり落ちる。その雷が首領の撃ちだしたエネルギーを相殺した。流石にこの攻撃を防ぐのも、避けるのも難しいと思ったのか、必殺技を放ち対処したようだ。


「……ふむ。流石に怪人も大分やられたか。しかし、戦果は悪いものではない。ここは退かせてもらおう」

「させると思うか?」

「これ以上やるというのならば我も全力をださせてもらうが?」


 今までとは違う、強力な闇のエネルギーが首領から放出される。流石に一人では危険だと感じ、槌原は一歩下がる。


「今まで手を抜いてたのか」

「生憎と、お前たちだけが我らの相手ではないのでな。それでは行かせてもらうぞ」


 そう行って首領が撤退をする。その首領の撤退を皮切りに、まだ生き残っている怪人たちが撤退し始めた。こうして本部への襲撃は終了した。







「……ここは」


 静城がベッドの上で目を覚ます。


「あ、静城さん! 大丈夫ですか?」

「……風見さん」

「空か落ちてきたうえに、ボロボロで槍に刺されていたのでとても心配していたんですよ!!」

「あ、はい」

「とりあえず今は休んでいてくださいね」

「はい……そういえば、結局襲撃はどうなったんですか?」

「私は最後のほうは静城さんの治療をしていたのであまりわかりませんけど……」


 風見が静城が飛んできた後の状況について話す。静城が落下してきた後しばらくして生き残った怪人が逃げ出したらしい。結果的に正義の味方側の勝利という形になった。最後に戻ってきた黒い戦闘服のヒーローが悪の組織の首領を退かせたため、怪人たちが撤退することになったようだ。そのあと、この後の査問についても風見が話し始める。

 査問は結局、静城の職務怠慢とそれに付随する被害はすべて基地長の起こした問題行為による結果の改竄、嘘であるとわかり、静城に責任はなく、全くの無実であると判断された。そして、基地長はそれ以外にも行っていた幾つかの問題行為を証拠付きで提出、告発され、今回の裏切り行為も踏まえ、これまでのすべての物事を洗い出されたらしい。


「基地長は罷免、怪人や悪行を行ったヒーローを隔離する施設に送られるそうです」

「そうですか」


 今はこれ以上聞くこともないので、言われた通り静城は休んだ。







 その後、もともと務めていた基地まで戻り、いつもの状況に戻った。基地長が罷免され、代わりに今回の襲撃で悪の組織の首領を撤退させたヒーローがその役に就いた。ちなみに静城はその新しい基地長と廊下で出会い、直接話を聞いた。その人物は静城を本部に送ってくれた人物で、槌原という人物だ。槌原は静城が首領を引き付けたことも評価するべきだと考えていたが、上層部は槌原を持ち上げるだけだったので、直の上司に就くことでこの後の静城の行動を正しく評価することで今回の功績を独り占めすることになったことに報いるつもりのようだ。


「いいやつが上司になってくれてよかったじゃねーか」

「僕は別に今まで通りでもいいんだけどね」


 静城は今までが今までだったので、これからはきちんと評価される、ということに戸惑いを感じているようだ。


「今までが変だったんだ。お前のやってることが必要なのは他の奴だってわかってるぜ」


 廊下で穂村と話していると、風見が静城を見つけ、近づいてくる。


「静城さん……それに穂村さんも。こんにちは」

「おう」

「こんにちは」


 そのまま暫く廊下で話し、別れる。


「そういえば、さっきの娘に飯に誘われたんだって?」

「……まあ、そうだけど」

「へぇ」

「何、その笑い」


 にやにやと穂村が静城を見る。


「いや、お前にも春が来たかってな」

「……そういうのじゃないでしょ」

「否定するもんじゃないぜ? ま、これからどうなるかはしっかり見させてもらうぜ」

「……はいはい」







「よう」

「穂村さん」


 治療室に穂村が尋ね、風見に話しかける。


「静城さんはどうですか?」

「意識はしてるが、それだけだな。あいつは頑なだし、あんたが頑張るしかねえな」

「そうですか……」


 あの襲撃の後、穂村は風見に何度か静城との付き合い方に関して幾つか相談を受けている。今までも風見は静城を意識していたが、恋心みたいなものではなく、心配する気持ちが強かった。しかし、元基地長の攻撃を庇ってくれた姿を間近で見た結果、一気に気持ちに変化があったようだ。


「とりあえず、今度一緒に飯に行くんだろ? その時にあいつにしっかり自分を意識させるようにするのがいいんじゃねえか?」

「そうですね。頑張ってみます」

「……ああ、そういえばあんたからあの娘には話してくれたか?」

「自分で誘いましょうよ……」


 どうやら穂村は大倉を気にしているらしく、静城のことを相談した後にどうやって誘えばいいか、話せばいいかなどを風見に相談しているようだ。二人はその後もお互いの想う相手がどんな物が好きか、趣味や普段の行動、どう誘うべきかなど、しばらく相談を続けた。


「それじゃあ、俺はいくぜ」

「はい。今日もありがとうございました」

「気にすんな。うまくいくことを祈ってるぜ」

「そちらも、頑張ってくださいね」


 二人の思いが実るかどうかはこれからの彼らの努力次第だろう。


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