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11・12



精霊と人が共同戦線を張ってからしばらくして、森に住む人々の技術に変化が出始めた。

恐らくだが、大きな戦争を経験したことで今のままではいけないと考えたためだろう。

この意識の変化は森に住む人種全体に起きているが、森を切り開かず自然と一体に生きる人種と、森を切り開き住みよい環境を作る人種でその内容に違いが出ている。

森を切り開いた人種は、森の外まで繋げられる道を作り、森の外との交流や、出稼ぎを行っているようだ。

特に遠くに見える山まで鉱石を採取しに行っているようで、それらを使い金属製の道具を作っている。

今のところ遠出している場所は人がいない領域らしく、襲ってきた獣の怪我などはあるが、人と争った様子はない。

そのため、鉱石の採取自体は困っていないらしい。ただ、彼らはそもそもそちらの知識はあまり詳しくないようだ。

もともと外から来た人種を受け入れ、そちらから情報を得ているみたいで彼らそのものが持った知識ではないせいだろう。

断片的な知識から発展できているそのはすごいことではある。

森と一体に生きる人種、主に長耳…仮称森の民たちは、精霊の能力に目を付けたようだ。

精霊は特殊な能力を持ち、それらの能力で風や火、水や土などを作ったり操作したりできる。

それらは共同戦線を張っていたときに精霊が使っているところを彼らは見ている。

そして、それらを発展させることにより強力な攻撃手段になるだろうということに目を付けたようだ。

しかし、その技術発展は難航しているようだ。当たり前である。

精霊の持つ能力はもともと技術的なものではなく、生物の持つ特性みたいなものだと思う。

そんなものを技術として使えるようになるのはできるかどうかもわからない。

だが、彼らは精霊と関わるようになっており、彼らと交流を持つ。そういった精霊たちの手助けを得て、能力を技術として得られるようにしているようだ。

精霊たちは特に特別なことはしていないが、それぞれで考えがあるようで、色々なことをしている。

まず住居を人のいる場所に移してみたり、積極的な人種との交流などを子行ってみているようだ。

精霊も自分たちだけで生きるのではなく人と生きる道を模索してみているようだ。


長い時間が過ぎ、森に住み人種は大きく発展した。

森を切り開いた人種、仮称土の民は大きく技術を発展させ、石や金属を用いた道具や建物などを作り始め、大きな町を作るまで至った。

まだ森にいるが、そのうち森の外側付近にまで建物を作り、そこに居を構える準備をしているようだ。

森を捨てるわけではなく、もともといたところもいろいろと利用するようで、必要な建築や場所の整備を行っている。

技術的には以前戦った外からの侵入者と同じ程度にはなったようだ。

彼らは積極的に森に逃亡してきた人種を受け入れ、その人種の持っている知識や技術を取り入れているらしい。

技術発展にはその影響もあるようで、同時に外側に近い場所に居を移すのも人が増えてきているのもあるようだ。

森の民は精霊の持つ能力を技術として扱えるようにしてしまった。

ただ、これらは今のところ彼らのみが扱える技術になってしまっている。

彼らは精霊たちに近い位置で過ごしている。それは精霊が見えるようになるという種を生むことになったが、単純にそれだけの影響ではなかった。

精霊をみえるようになるというのは精霊に近くなるということであり、精霊の持つような力を彼らも持つということらしい。

能力ではなく、一種の魔力的なものだろう。つまり彼らの作った能力の技術化というのは魔術の創造ということだ。

もっとも、それらは精霊の使う力と比べ、使い勝手が悪い。儀式的な部分があり、それらの手間がかかる。

しかし精霊の使う能力程限定的な力ではなくなり、精霊ではできないようなこともできるようになったらしい。

そういった能力を作るなどの発展はしているが、彼らは道具などの技術的な発展はあまりしていない。

これは森を切り開かないことや、外からの逃亡者を受け入れが少ないこともあり、必要な材料、素材が少ないためだろう。

そのままでは流石に問題があると思ったのか、多少森の木を伐り、それらを使用するようにはなった。

だが、それでは道具としては不十分であるため、土の民と取引をするようになったようだ。

彼らは魔術を使用できるので、それらを使った労働力を対価に土の民から者を提供して貰うようだ。


そして精霊たちも状況がかなり変わった。まず、精霊たちはその分布が大きく変わった。

人種の近くに住むようになった精霊の数が大きく増えた。そしてそれらには偏りができている。

まず、土の民の住む場所の近くには土の精霊、火の精霊が大きく住んでいる。

これは土の精霊に関しては土の民が山に行き鉱石をとってくるようになったため、鉱物、土の資源が増えたことによる。

火の精霊は彼らが金属を加工する技術を持ち、積極的に使うようになり居つくようになった。

それに対し、森の民の住む場所では直接精霊が居つくようになり、彼らの住みよい環境を積極的に作るようになった。

これには森の民が精霊を侵攻していることも影響しているだろう。

そのため、大きな水場や土壌などが作られ、水や土の精霊が多くいる。火の精霊は彼らは積極的に火を使わないため、少ない。

水の精霊に関しては土の民の近くの場所にもいるが、森の民の近くにいる数から比べると小さい。

風の精霊は大きく全体に分布している。彼らは風が通る場所であればどこにでも存在でき、かなり自由にいられるからだ。

今は俺の体の近くに住む精霊はかなり減り、まだ精霊としてあまり成長していない者や、精霊としての大きなまとめ役が住むようになっている。

ちなみに俺の体に住んでいる精霊は風と水と土の精霊のまとめ役、かなり昔から存在している各精霊の一番強い精霊だ。

火の精霊はまとめ役的な精霊が近くに住むようになったが、流石に俺の体で住むのはよろしくないと考えられているようだ。

まあ、俺も自分の体に火の精霊がすんだらさすがに怖いのでそのあたりは仕方ないかと思っている。





















結構な時間、年月が過ぎ、土の民は森の外側に居を構えた。

こちらからははっきりと見えるわけではないが、その様子からそこそこ文明的な発展が見える。

彼らが外に行くと同時に、精霊のいくらかは彼らについていった。

それらの精霊は今は森の外で生活している。時々戻ってきて森に住む精霊と交流している。

どうやら森の外にも精霊はいるようだ。そもそも精霊は外から来たのだから当然のことだが。

外の精霊はここの精霊と違いあまり大きな力を持たないようで、森から出て行った精霊がまとめ役として率いている。

時々ここまで連れてきているのを見る。ただ、ここにいる多くの精霊とは違う種の精霊もいるようだ。

精霊は自然的なものだが、外に存在する精霊は自然から離れた特殊なタイプもいる。

文明から発展したような精霊もいた。これらは森の中では生まれなかった精霊だ。

精霊が生まれる要因は不明だが、ここにいる精霊はもともと俺が実を落とした場所から生まれた精霊も多い。

恐らくだが、俺の影響を強く受けているのだろう。力の差もそうだ。

ある意味、外に出ていった人種と森にいた人種の関係性に近いのだろう。

外では俺のような特殊な力の源的なものがなく、それゆえに精霊が特殊な発達、誕生を見せた。

ここにいる精霊は俺が力を提供する形になっており、俺の影響を受け成長、発生した。

それゆえに俺の力に近しい精霊ばかりとなったのだろう。

精霊についてはよくわからないこともまだまだ多い。それ以前に自分のことも全然わかっていない。


森の外と内で人種がわかれ、その成長、発展も大きく変わっていった。

土の民は俺がもともといた世界のように、金属を用いた道具などを用いた文明を作っている。

時代的にはまだ戦国よりは前くらいなのだと思う。

彼らは森のうちに住むものと違い魔術を使用することはできないようだ。精霊も見ることはできない。

ただ、精霊の存在自体は感知しているようで、彼らの力を借り受けることも多いようだ。

森の民ほどではないが、精霊に対する信仰に近い要素はあり、精霊を招くための場所も作っている。

なんだかんだで精霊の存在、恩恵は大きいようだ。魔術が使えないのも理由の一つだろう。

外に行った精霊はそういった自分たちにとって良い環境を作った人間に対し恩返し的に力を貸すようだ。

特に外は森と比べると自然的な力は少ない。その分そういった自然的な場所の提供は重要なのだろう。

森の民は文明的には原始人というと失礼だが、森の中に木造建築を作っている。

彼らは特に自分たちて金属武器を作ることはせず、代わりに魔術を用いた、その力を持った木製の武器を作るようになった。

精霊は彼らと交流を持っているが、どちらかといえば彼らが精霊を信仰しているような状態で精霊を使う、利用するようなことはない。

魔術に関しては相当に発展したようで、精霊の使うような能力ではないものも見るようになった。

また、これらの魔術を制限、弱化した形で扱えるような道具も作っている。

そういった道具は土の民の作る金属の武器などと交換しているようだ。

今のところ森の民と土の民の関係は良好なようだ。

以前のように時々外側から人が来ることもあるが、今のところ侵入者はいない。

力を蓄えているのか、こちらと争って負ける可能性を恐れているのか、争いを起こしたことによる犠牲などを理由に反乱がおきたのか。

彼らのことは不明だが、今のところは平穏なようだ。



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