表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/485

9・10



戦争が勃発した。以前から森に侵入してきていた争いを好む種族が森に住む種族に対し戦争を仕掛けてきた。

現状、森を舞台に戦いを行っているためこちら側が優勢で戦えている。

しかし、そんなことも相手はわかっているようで、森に火を放ったり、死体を投げ込んだりなどの行動もとっている。

火を放つのは今のところ、大きな効果はない、こちら側も火を消したりしている。

死体に関してはどうしても処理などが必要で、そのために労力が割かれているようだ。

そこを片付ける人員を狙い攻撃してきてもいる。なかなかにいやらしい感じだ。

死体には手を出さないが、精霊たちも火を消すのにはこっそり参加している。

彼らとしても森を破壊されるのは死活問題だ。人同士の戦闘に参加するわけではないが、それ以外に関してはある程度行動する。

基本的に精霊側としては手を出さない方針なようだ。森は守るみたいだが。


戦争状態は継続している。森で生活をすることを選んだ彼らはある程度自分たちが増えすぎないように注意している。

それは生活の範囲の制限、過剰な動物の狩猟の禁止、森を荒す行為を行わないようにするためなど、理由はいろいろある。

要は彼らの数はさほど多くはないという問題がある。もちろん、森に住んでいる人種はいくらかいるし、今回の抵抗には同盟を組んでいる。

しかし、外から攻めてくる人種はそれ以上の数がいる。外は肥沃な土地こそ少ないが、その分貪欲に生きようとする意志が強い。

安定した暮らしを簡単に維持できる森とは違い、人を多く生み、過酷な戦いをして生きてきたのだろう。

つまり森に住む者たちよりも彼らのほうが強いということだ。戦闘能力ではなく、戦いに臨む理由の面で。

戦争状態は継続している。そう、悪い方向に傾いた状態で。

最初は森側が優勢だったが、敵の攻撃が絶え間ないというか、こちらの人員はどうしても減らざるを得ないのに相手の人員は減ったように感じられない。

こちら側が同じだけの戦闘状態を維持できない状況になってきている。

流石にこれは何とかする必要があるのではないか、と思うが俺にできることはない。せいぜい実を投げることくらいしかできない。

当たればダメージにはなるだろうが、これを攻撃手段とするのはどうなのだろう。


ついに精霊たちが動き出すまでの状況になってきた。というのも、森を抜けて精霊の住む領域まで来るものも出てきたからだ。

流石に精霊も自分たちの領域に侵入して来たら手を出さざるを得ない。

しかし、精霊には肉体がなく、実体化できるものがいても戦闘経験も武器も存在しない。

精霊の持つ能力も危害を加えられるほどの攻撃をできるものはほとんどいない。

よってせいぜい今できるのは侵入してきた存在を追い出す程度だ。精霊たちではそれが限度になっている。

森に住む人種はかなり劣勢になっている。さすがずっと同じだけの戦力を送られていたせいで戦う力が削られすぎた。

このままいけば争いを好む人種が勝ち、森は蹂躙されるだろう。

そうなってしまえば精霊や俺も無事では済まないと思う。流石にそろそろ本気で何とかしないといけない。

できることは少ないが、なるべく頑張ろう。



















精霊たちが集まっている。今の森の状況が芳しくないためだ。

なんだかんだで精霊も精神構造的に人に近いような動き、行動が見られる。

まあ、そんな話はいい。自分にできるのは肥沃な土地にしたり実を落とすくらいだ。

だがそんなことしかできなくてもできることはいろいろある。

実を精霊のそばに落とす。突然落ちてきた実に対して驚いた様子を見せる。

そのままどんどん実を落とし、俺の体の近くまで誘導する。

誘導した先にあるのは以前風の精霊を含めた精霊のまとめ役達に飲ませた特殊な水だ。

今回は結構な量を用意した。これでまず精霊たちを強化する。

誘導されて来た風の精霊は以前飲んだ水と同じものであることに気づいたのか、ほかの精霊たちも呼ぶ。

そして、みんなでその水を飲み、精霊としての力を高めた。

戦力としてはこれで十分な強化ができるだろう。


そのあと、精霊たちの近くに再度実を落とし、森に住む人種たちの下まで誘導した。

彼らの知能、知性次第だが、この意図を理解してもらえればありがたい。

人種、以前見た長い耳の人種たち。ほかにも精霊を感知できる人種はいるが、彼らが一番精霊に対して敏感だ。

その人種のもとまで精霊が訪れる。長耳の人種は自分たちのところに訪れた精霊たちに対し深い礼を示す。

精霊たちはなぜここまで来たのかという理由がわかっていない。ただ、風の精霊だけは真剣な表情をしている。

彼女は自分たちのことを彼らが感知していることを理解しており、その信仰についても詳しく知っている。

そして、彼らが外からくる人種と争っていることも把握している。

恐らくだが、こちらの誘導の意図を理解したのだろう。風の精霊が長耳の人種と話し始める。

何を話しているかを聞くことはできないが、人種のほうも風の精霊と同じように真剣な表情でときどき頷く。

そして話が終わり、それぞれ自分たちの仲間に話している。恐らくどうるか話が付いたのだろう。


精霊と人種が共同戦線を張っている。森に攻め込んでくる人種に対して人種同士で戦っているところに相手の行動の阻害などを仕掛け、手助けしている。

他に侵入自体の阻害を行ったり、敵の司令塔、頭に当たる存在を攻撃したりなど、本気の妨害だ。

ときどきこちら側の人種も阻害に引っかかったりしているが、完璧な支援は難しいのだろう。

全ての人種が精霊を感知できるわけではないし、能力の使用を感じられるわけではないようだ。

だが、なんだかんだで精霊という、碌に見えず魔術のような攻撃手段を使う精霊に相手側は対処できない。

それが争っているところに起こされるので余計に対応できない状況になっている。

そして、なんとか人種たちの侵入、戦闘を終わらせることができたようで、森と人種たちにある程度の被害が出たようだが戦争を終えられた。

特に外側にいた逃亡者の人種の集落はひどい状態で、途中で他の森に住んでいた者たちの下に逃げてきていた程だ。

今は一緒に生活していたせいか、隣接するほど近くに住んでいるわけではないが、村でも少し離れたあたりにその住居が存在している。

今回の戦争は森の生活状況に変化を与えたらしい。

精霊もそうだ。精霊たちは一部の精霊は人種とのつながりを持ち、人種と関わって生きていくようになった。

他に大きな変化はないが、精霊たちの強化の影響もあり、その様相は変わっている。

まとめ役となっている三人の精霊以外にも小さなグループができ、そのグループ内の精霊をまとめる者もでてきた。

おかげで頂点の三精霊はかなり状況が楽になったようで、時々ゆったりとしている姿が見えるようになった。

また、火の精霊は人種の里付近に存在しており、そのまとめ役となっている精霊は三精霊と時々交流を持っているのが見られる。

かなり森の状況は変わったが、悪い変化ではなかったと思う。森の外の人種の状況が分からないのが気になる。

そちらの情報をなんとか集めてくれるようになってくれればいいのだが。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ