7・8
かなりの年月が経ち、森の周辺はあまり様変わりはしていない。
時々森に外側からの来訪者がいる。これらは森に侵入してきた外敵であったり、この土地にむ住人に用があるものなど、色々いた。
特に以前この地にいた争いを好む種族は時々この森に攻撃を仕掛けに来ている。
彼らは特に森に住まう温和な種族たちと時々戦争をしている。今のところはこちらが同盟を組み、複数の種で戦い勝利しているようだ。
外の様子が詳しくわからないのが憎い状況だ。この世界には精霊がいるし、確認した限り魔術みたいなものもあるようだ。
最近はある程度文明が進んでおり、様々な道具を作り、自然環境をある程度自分たちに都合がいいように調整したりしている。
その過程でいくつかの精霊が消えたりもしているようだが、精霊にとっては調整し安定させられた自然環境から生まれたものも存在し、それらにとってはありがたいようだ。
森に住む彼らは、森を破壊せず森と同調したような住処などの環境を作る種と、一部の森を切り開いて住処を作る種に大きく二分している。
時々口論になっているが、お互いあまり過剰に相手に反応しないようにはしているらしい。ただ、やはり一部は衝突しているようだ。
別に仲が悪いわけではなく生活様式、思考、宗教的なものによるものなので、どうしても難しい。
こういったことは理解できても感情面で受け入れることができないことは多い。
また、同じ種族でも思想に反発する者はおり、そういったものは森を出て行ったり、もう一方のグループに移動したりしているようだ。
最近はどうやらそれぞれの混血も出てきた。正直こういったものは余計な騒動になりかねないので不安だ。
彼らは彼らなりに頑張っている。俺はそれを応援し、見守ることしかできない。
精霊は現在では消滅も増加もかなり緩やかだ。それだけこの場所の環境が安定しているのだろう。
数が増えないので、それぞれの精霊のまとめ役も安定してまとめられているようだ。
そして安定し始めた彼らは徐々に力をつける精霊とそうでない精霊に分かれ始めた。
特に力をつける精霊は人里周辺の精霊と、俺の体に住まう精霊だ。
人里周辺の精霊は人種の環境整備など、自然環境に刺激を与えることで、その自然から発生した精霊が影響を受け成長するようだ。
ただ、この過程で精霊が消滅することもあり、安全に成長しているわけではない。
そして俺の体に住む精霊は今のところまとめ役の三人だ。彼らは全員が成人したくらいの外見年齢になっている。
それ以上の年齢への成長は見受けられないが、彼らにはそもそも寿命があるかも不明だ。成長しすぎることがないのはいいことなのかもしれない。
時々落とす実の下に精霊がいるとその精霊が成長することもある。ただ、成長せずに消滅したりすることもあり、危険なので下に精霊のいないところを狙うようにしている。
ところで、侵入者や来訪者とは別に人種が森の一部に存在している。
彼らはこの森に住処を作って過ごしている。多くは一人で、時々男女二人であったり家族であったりする。
恐らくだが、彼らは逃亡者なのだろう。罪人かどうかは不明だが、自分の住んでいたところにいられなくなった者たちだ。
今のところ森に住む人種とは出会っていないようだが、もし彼らと出会ってしまった場合どうなってしまうのだろう。それが心配だ。
今のところ森の状況は安定した状態になっている。
外からの逃亡者である外側周辺に住み始めた様々な人種は彼らだけで寄り集まり村を作った。
彼らについてはもともとの森の住人たちも気が付いているが、これといって特に干渉することはない。
流石に自分たちの領域まで入ってきた場合、警告として脅しをかけることはあるが、それ以上の過剰な攻撃はしない。
もちろん、警告を無視して入ってきたものを攻撃し怪我をさせたり、最悪殺してしまうことはある。
だが、それらでしっかり自分たちの意思を示したため、向こうもこちらに来ることはなくなっている。
たまに子供が入ってくることがあるのでそのあたりは注意してほしいところだ。
そして、彼らの村はもともと森にいた住人たちに生まれた混血の行く場所ともなった。
混血自体は完全に排斥されているわけではないが、やはり自分たちとは違うものとしてみるものも少なくないようだ。
家族ごと移住することになるか、子供だけ移住することになるかはその家族によって違う。
後者の場合、結局家族が離散することになることもある。なんだかんだで異種婚姻は難しい問題なのだろう。
森に住まう彼ら人種は精霊の存在を理解している。そして、彼らは若干だが精霊を見ることのできる種も出てきていた。
恐らくだが、精霊が近くにいる状態で過ごしたからだろう。それらの精霊を見ることのできる種は精霊の住む場所により近い人種だ。
もしかしたら俺が原因の可能性もある。精霊に力を与える水を出せるし、実が落ちた場所から精霊が生まれることもあった。
この体は芳醇なエネルギーの塊ともいえるものだ。それが近くにあればその体から放射されるエネルギーの影響を受けてもおかしくないだろう。
精霊が俺の体のそばに住むのもそのあたりに理由があるのかもしれない。
精霊が見えるようになった彼らだが、彼らは精霊を上位の存在としてみており、信仰、崇拝しているようだ。
ただ、これに対しての精霊たちのアクションはない。
そもそも精霊を信仰したところで何らかの恩恵があるわけでもないし、精霊も信仰されたところで彼らから何かをもらっているわけでもない。
これらはあくまで彼らの信心の関連だろう。特にそれらの信仰が強いのは自然と一体的に生きている人種が多い。
精霊は自然か環境から生まれたものだと今までの経験から考えられる。
彼らは精霊がより自然的、自然の上位の存在として考えているのだろう。
精霊たちは特に変わりない。森が安定した結果、増減もなく普通に過ごしている。
特にすることもないのでのんびりだらだら過ごしているようだ。
ただ、精霊たちのまとめ役である三人はいろいろとやっているらしい。
時々遠出をしているのを確認している。だいたいその役割を持っているのは風の精霊だ。
土と水の精霊は地面に寄る存在であるため、自由な移動が難しいのだろう。
風は空気さえあればどこまででも行ける存在ともいえる。だから遠くに行くのは風の精霊の役割となっているらしい。
何を目的にしているのかは不明だが、時々精霊を連れてきている。
連れてきている精霊は彼らの属性とは違う精霊のようだ。理由は不明だが、精霊を増やすのには何らかの意図があるのだろう。
ところで、森そのものは安定した形となっているが、時々来る侵入者は増えている。
特にそれらは敵対意思を持った、以前この森にいた争いを好む種族が多い。
若干不穏な感じを受ける。これから先彼らと戦争になるのではないかと不安になる。
その時この森がどうなるかはまだ分からない。何もなければいいのだが……




