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5・6



周辺の森に住む人種が増えてきた。

上のほうからの視点で見ると、結構な大きさの集落ができている。

これらの集落はやはりそれぞれの人種で分かれている。

彼らは時々殺し合いをしている。まあ、普通に戦争をやっているみたいなものだ。

ただ、それは相手を支配する、とか領土を奪うみたいなものではなく、排斥、殲滅だ。

彼らはまだかなり原始的な生活をしている。精神的な部分での習熟がないのもあるのかもしれない。

かなり苛烈で攻撃的な傾向にある。

そしてその余波は精霊たちに及んでいる。彼らが殺し合いを行った後、残る死体などの影響だ。

単純に自然に任せれば問題ないものだが、意外に影響は大きく、周辺環境に変化を与える。

一部の精霊は土地の精霊、周辺の自然物の精霊みたいなものであるのか、影響を受けゆがんだ存在になったり消滅したりする。

精霊たちもそういった人同士の争いをどうにかするために頑張っているが、実体を持っているわけでもない精霊では難しい。

精霊はその精霊の持つ特殊能力により物理的干渉ができるが、そもそも大きな力ではない。

せいぜいが自分の住む場所を整える程度に使える程度の力だ。人に危害を加えるほどの強さはもたない。

その程度の力では、せいぜい移動を少し阻害したりすることができるくらいで、争いを止めることはできない。

一番力を持つのは俺の体に住んでいる風の精霊だが、実体化できるがそもそも争いをしたことない精霊が実体で攻撃するのも無理な話だ。

風を扱う能力も、せいぜいが突風を吹かせる程度で、そんなに長時間もできない。

精霊の持つ力でそれが現状で最大である以上、精霊に戦闘能力はないに等しいだろう。


どうしたいいか、と思っていたら、精霊を済ませている場所の近くに枝でできた水飲み場ができてていた。

実の時もそうだったが、何か意味があるのだろう。肥沃にする能力よりも物質的に存在しているせいで何かあるのが分かりやすい。

精霊が帰ってくる。いつの間にかできていたものに何だろう、と様子を見ている。

風の精霊が意を決して手を伸ばす。触れるだけで何かある様子はない。

特に何かあるわけでもないので、実際にのんでみるようだ。

飲んだところ、見た目上には変化がなかった。しかし、風の精霊は驚いたような表情だ。

風の精霊が能力を使う。今まで突風程度のことしかできていなかったのが、小規模の風の渦を作り出す事ができるようになったようだ。

能力が強くなったことを理解したためか、さらに飲むようだ。その前に他の、まとめ役の二人の精霊を呼びに行く。

そして二人を連れてきて一緒に水飲み場の水を飲む。ほかの精霊も能力を使用し、それが強化されているのが確認できる。

どうやら、できた水飲み場は精霊の力を強めるためのものだったらしい。

この体は不思議がいっぱいだ。ただ、肥沃な土地にする能力や、様々な植物とそれを育てる力を持つ身、精霊に力を与える水。

それらの能力から考え、この樹は与える、育てるみたいな能力が極めて高く、樹自身も相当な力があるものだと考えられるだろう。

三人の精霊は力をつけたが、それ以外の精霊の力が高まるわけではない。今は三人で頑張るようだが、人を止められるわけではないだろう。

俺はそれを見守ることしかできない。いきなり生えてきた水飲み場は多分またはやすことができるだろうし、水の補充くらいはできるだろう。

だが、あまり精霊が力を持つようになるのは好ましいとは言えない。特に力を持ちすぎると、やはり力を得た人間が陥るような状態になる可能性がないとは言えない。

そういうのは望ましい形ではないだろう。まあ、結局そのあたりを決めるのは俺だ。俺がそういう状態になってほしくないからそうするだけだ。

今は彼らがどうなるかを見守ろう。いつの間にかこの世界にいた俺があまり干渉するのは変だからな。


















周辺の森からはだいぶ人が減った。

まず、最初にそれぞれで争いが起きることにより、ごく少数だが人種が滅んだ。

これらの人種は主に戦闘手段を持たず、一方的に蹂躙されたか、数が少なすぎるがゆえに存続できずに滅んだものだ。

ある種生存競争に負けた形になるのだろう。ここ以外で生き延びることができたかは不明だ。

だが、ここに来たことがその種の滅びを速めたのは確実だろう。それは少し残念に思う。

次に、多くの種は争い続けてまでこの地に残ることを選ばず、外に出て行った。

ここは肥沃な土地だ。それほどの土地を捨て、外に出ていかざるを得ないほど大変な状況だったと言える。

ただ、現在ではこの地の外側にも多くの植物が自生するようになっている。

それゆえに、豊かだが争いが激しい場所よりもある程度食べていけるだけの安全な地を選んだのだろう。

賢明な判断だと思う。多くは力が弱い種族だったが、中には強い種族もいた。

この場所やここに住まう者を見限ったのだろう。


そしてこの場所に残ったのは争う力の強い種族たちだ。

だが、さらにこれに状況を変化させる一つの要素があった。

精霊たちである。精霊たちは、残った彼らの中でも争い続ける種族たちを頑張って追い出した。

残った種族の中には争いを望まない、力は強いが温和な種族もいた。

精霊にとっての問題は、人間によって環境が荒れ、自然が安定した状態が崩壊することである。

だからこそ、争い続ける人種を排除する必要があった。

彼らはかなり頑張った。傷つけるほど強力な能力はなかったが、住んでいる建物を破壊したり、水場を汚したり、土地を荒したりなど、かなり頑張っていた。

その過程でどうしても犠牲も出た。彼らの住んでいる場所の自然から生まれた精霊もいたからだ。

しかし、犠牲が出ながらも彼らは頑張って彼らを攻撃し続けた。

その結果、彼らもここに住まうことができなくなった。精霊の頑張りの勝利である。

そしてここに残ったのは温和で力の強い種族である。数種族いたが、その中には長い耳を持った種族もいた。

これを見た時はエルフはやはり森の民か、などと馬鹿らしいことを考えた。

彼らは争いを好む種族を追い出した精霊たちの存在を把握していた。

争いを望む種族たちは彼らにとっても厄介な相手で、時々相手の住んでいる場所に隠れて様子を見に来たりしていたのを見ている。

その時に精霊たちが行動を起こしたこともあり、そのことから争いを好む種族を嫌う何らかの存在として考えたのだ。

そして精霊たちは主に俺の体の周囲に住んでいることも理解しており、彼らはこちら側に来ないようにしているようだ。

とりあえず、これでこの周辺での物事は落ち着くだろう。あとは時代がどう進んでいくかが気になるところだ。


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