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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
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E

「おはよう直斗! 美空!」

「おはようございます、直斗さん、美空」

「おはようございます、兄さん、姉さん」

「おはよう二人とも」


 朝、直斗と美空が家を出て学校に向かおうとしたところで竜司と優枝に出会う。二人と出会うのは普段は学校でという形だが、今日は二人とも早く家を出たため、登校途中、家を出たところで出会ったようである。竜司と優枝および美空たちの家である萩野家は現在この世界において、直斗の家である結城家のお隣となっている。

 これはこの世界が再構築される際、直斗が望んだ世界の再構築における想いの結果だ。プレイヤーたちに、この世界における救いを。それが再構築による彼らのもともといた世界への再構成だ。もちろん、完全に再構成するのは不可能だが、プレイヤーたちの記憶から家族を再構成するのは不可能ではない。それらを利用し、家庭や友人関係などの人物を再構成した結果が現状の世界状態だ。


「おはようございます竜司さん!」

「おう、おはようあかり!」

「……おはようあかり!」

「……おはよう優枝」


 竜司たちと直斗たちがまとまって学校へ向かおうとしたところで声をかけてくる存在があった。あかり、三綴あかりと呼ばれる竜司たちの幼馴染である少女だ。なお、直斗と竜司たちはお隣、昔からの友人関係であるため、直斗とも幼馴染であるが、それは彼女にとってはどうでもいい話だろう。

 三綴あかりは本来の世界では竜司たちの幼馴染としては存在していない少女で、この世界においてそうなっている存在だ。しかし、彼女は直斗たちにとって面識のない存在ではない。彼女はスキルメーカー、および召喚された先でずっと一緒だったシャインである。

 この世界に再構築された際に、主だったプレイヤーたちはかなりまとまった形、狭い範囲内で過ごす家などが配置され、特に学生時分である彼らは一緒の学校となっている。ちなみに家庭環境が再構成されているが、昔からやり直したわけではない。ただ、彼らの記憶はこの世界の者として生まれた記憶となっている。おかげで直斗たちは現状における自分たちの状態を正しく把握するのが結構大変だったようだ。


「……おはよう、三綴」

「……おはようございます、三綴さん」

「あ、おはようございます、直斗さん、美空」


 挨拶されてようやく二人の存在に気づくあかり。少々酷いが、彼女にとっては竜司に関した事柄が心を占めているため、他のことに関しての思考は他所に放り捨てている。優枝に関してはライバル的な位置づけか気付きやすくはあるのだが。


「五人で登校とか久々だなー」

「いつもは直斗さんたちは先に行ってるからねー」

「そうだね。でも、なんで竜司さんと優枝はこの時間に出てきたの? いつもより早いけど」

「それはあかりもでしょ……せっかく早めに出たのに」


 ぼそりと優枝が呟く。あかりはその言葉を耳聡く聞きつける。


「二人が出たのが見えたから、準備できてたしいつもより早めに出たの」

「ふーん、いつも通り出ればよかったのに」


 二人の視線がかち合い、その間にばちばちと電撃が走っているような印象を受ける。ちなみに、三綴家は萩野家のお隣だ。この五人の家庭環境は一か所に集中している。再構成の際で他の四人に関しては別所となっているが、あかりの家だけは竜司の家の隣となっている。それだけ強い想念があったためか、それとも単なる偶然か。世界の再構成を行った直斗もそれに関してはわかっていない。


「……あの二人はいつも通りだなぁ」

「まあ、ある意味仲が良い関係ですよ」


 二人が出会えば竜司をめぐってにらみ合う。そんなことが日常となっている。ちなみにこの世界では近親婚が可能である。また、複数との婚姻も可能だ。この世界に再構築する際にいくらかの本来の世界とは違う変化がいくらか存在する。それらに関しては偶然そうなった例もあれば、ある程度直斗や美空の意図が含まれている部分もある。別にこの国以外では可能であった例もあるのだからそこまで極端な変化ともいえないのだが、一般的な常識感では複雑なところがあるだろう。ちなみに、どちらも美空が言い出したことである。

 そんなふうに、いつも通りのやり取りをしながら五人は学校へと向かった。








「ただいま」

「おかえりなさい、直斗さん」


 家にかってきた直斗を美空は出迎える。朝の時点でわかるが、二人は同棲中である。同棲というか、そもそも関係上は婚約しているみたいな状態である。ちなみに、直斗の家族は戸籍上存在しているが、実際には存在していない。なのである程度の状態的な無茶が効く。


「……ヘルヴィレナは美空の差し金かな?」

「ようやく転校してきました?」

「うん、うちのクラスに編入してきたよ。ご丁寧に竜司の隣の席まで用意されてたし」


 元の世界では直斗と竜司の教室は別だったが、この世界では同じである。そして、今日は学校に登校した後、授業の前に竜司たちの教室にヘルヴィレナ・アルディードの編入があった。異世界における住人も再構成の際、この世界で竜司たちと同じ形で存在している。ただし、もともとの文化圏の関係上、大半は外国籍ということになっているが。そんな中、ヘルヴィレナが直斗たちの通う学校、それも竜司と同じ教室への編入である。どう考えても意図的なものとしか思えない。


「流石に今回のはどうだと思うんだけど」

「……わかってます。これ以上の世界への干渉はしません。ただ、兄さんを想っていた人はできるだけその思いを叶えさせてあげたいと思っていたので」


 近親婚のルール改変、複数対象との婚姻の可能、ヘルヴィレナの編入。それらは全て美空が世界に干渉した結果である。世界に対する干渉はこの世界の神である直斗のみが本来許されていることであるが、その従者である美空も不可能ではない。私的利用は本来宜しくないが、世界を再構築したばかりの現状であればまだそこまで厳しく非難されることはない。世界が安定した後は流石に怒られるが。

 美空がそうしたのは彼女の関係者に対する思いがあるからである。神である直斗もそうだが、美空は彼らと共に歩み、終わるということはない。それゆえに、兄や姉、その親しい関係である存在たちが可能な限り幸せに生きて過ごしてほしいという思いがある。なので、そのための手ということで色々と行ったわけである。最も、それがどの程度幸福につながるかは謎だが。


「……まあ、竜司たちも、いろいろ大変だったから相応に幸福であってほしいってのはわからなくもないけど」


 直斗もその美空の気持ちはわからなくもない。直斗は特に、神として家族の再構成を切り捨てている。


「それはそれとして。次にやることは?」

「……特に焦ることもないです。今は無理に神様らしくする必要はないみたいです。世界運営状態がどうかにさえ気を払っていることと、あと世界内部だけでなく、外部よりの部分の状態を気にするべし、ということらしいですが……」

「直接聞ければなあ……」


 今、パティと呼ばれた存在はいない。この世界を再構築したのち、美空にその持っている知識と記憶を継承したのち自身の本体となる存在の下へと還っていった。そもそもがスキルメーカーと呼ばれたゲームのブラックボックスに仕込まれた外付けの誘導装置のようなものであったため、ある程度世界が安定し正しい形になり、神も育てばそれ以上は必要ない存在だ。ただ、いないといないで知識的に困ることになりかねないため、もし神一人だけであれば残っていただろう。

 ただ、直斗には美空という従者でパートナー的な相手が存在し、そのこともありそちらに自分の神や世界運営に必要な知識を継承させ去っていったようだ。神に知識を移植しないのか、という疑問もあるが、流石にそれは色々と問題があるようだ。そもそも、美空とパティは相性が良かった点もあるらしい。


「まあ、見回りはしようか」

「そうですね」


 家の戸締りをしてまわり、直斗は自宅を密室にする。直斗の家は神の世界へと通じている。直斗が家にいる間であれば誰かが来てもどうとでも対応できるが、神として仕事中や外に出ている場合は対処できないため、侵入できない密室にして完全隔離する必要がある。なお、核が打ち込まれても家は無事となるくらい密室の時は強固になる。侵入者除けの措置だ。それはそれで問題がありそうな気もするが。

 戸締りを確認し、直斗達は自分たちの姿を変える。スキルメーカーにおける、自分たちの器で会ったブレイブとフィルマの姿に。戦闘する場合、彼らが人として生活している時の姿で戦うよりも、ゲームと異世界で戦っていたときの姿の方が戦闘しやすい。また、その姿の時はデータ的に武器や防具を装備した状態になる。その利便性もある。普段の状態でも戦えなくもないが、やはりシステム的に明確な戦闘スタイルがあったほうが扱いやすい。神としての戦闘スタイルが一種の戦隊や魔法少女とかその手の者に近いのはどうかとも思うが、人としての生活スタイルと分けておいた方が便利である。


「じゃ、行こうか」

「はい」


 神として、まだ世界として利用されていない部分を点検し、利用できるようにしていかなければならない。また、外部からの侵入、および内部からの脱出の容易困難の判別と修正、世界になっていない部分に存在しているゴミや生まれていないのに生まれ落ちた紛い物の存在の還元など、神としてやることは多い。まだまだ神として若く、生まれたばかり、成り立ての存在だが、前の神がいろいろと髪としてやるべきことをやっていなかったこともあり、仕事は多い。

 神として生きるのはそれはそれで大変なのである。

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