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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
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110

 プレイヤーたちは神の力による壁に阻まれた状態でブレイブと神の闘いを見ている。しかし、プレイヤーたちに神の使っている力が視認できるわけではなく、状況的に何かが起きているというのがわかるくらいだ。たまにプレイヤーたちでも見えるような実体化された力や、神の力とは別にスキルをブレイブが使用しそういった力を見ることができているが、状況に思考が追い付かないだろう。


「あれはいったい何が起きてるんだフィルマ」

「……兄さんには見えないんですね」


 他のプレイヤーとは違い、フィルマだけが状況を見ることができる。フィルマの気配探知能力が発展した形で力の気配も感知できるようになったためだ。そういった特殊な力は現在のところ、フィルマ以外ではリュージくらいしか持っておらず、リュージもこの世界にくる以前から持っていた直感程度のものである。ブレイブやフィルマのような、本当に異能じみた力を持ってはいない。


「まー、普通の人に見えないからねー」

「……何か用ですか?」

「フィルマちゃん、そろそろ準備しよ。こっちもやることやんないとねー」


 よっこいしょ、とつぶやいてパティがフィルマの背中につかみかかる。パティ自身で移動できるが、フィルマに移動してもらった方が速い。それはフィルマも理解できるが、勝手に掴みかかられれば不快である。


「せめて先に断りませんか?」

「わっ! おーろーしーてー!」

「このまま行きます……ところで、どうすればいいですか?」

「上から。流石にフィルマちゃんだとあの力の中を抜けるのは無理だし、上はそこそこ死角、ブレイブの力に満ちている範囲から一気に落下してぶった切ればいいよ。あとは私達でやるから。あ、ブレイブが目隠ししたときに一気に上がってね」

「わかりました」


 フィルマがブロックの魔法を唱え、足場をつくる。空へ、空へと駆けていくための足場を。


「フィルマ! 大丈夫なんだよな?」

「……大丈夫です。先輩がいますから」








 そのフィルマに無条件に信頼されているブレイブは神に対しファイアーボールを唱え、いつも通りの飽和弾幕を形成している。現在のブレイブであればわざわざスキルとして使わなくとも可能なのだが、スキルを使用したほうが構築速度や効率が優秀である。ただ、単独威力に関しては神の力で作った力の方が大きく、さらに言えばスキルのレベルによらない攻撃であるため、威力上限の突破が可能だ。神に通用させるためにはスキルでは物足りない。

 最もスキルによる攻撃事態が有効でないわけではない。とくにブレイブのようなスキルレベル九まで到達し、ステータス上でも桁違いの魔力があるゆえにその威力は油断できるものではない。


「小賢しい!」


 全身からエネルギー波を放ち向けられているファイアーボールを落とし、自分を狙ってくるファイアーボールも波を撃ちだして弾き飛ばす。


「潰れろっ!」

「神槍!」


 力の塊をハンマーのようにブレイブに振るう神、その神の攻撃に槍を作り撃ちだし相殺する。ブレイブと神では力の扱い方と認識が違う。同じ威力でも、それに必要なエネルギーが違ってくるが、ブレイブにはそのエネルギーの限度がある。ゆえに、早めに決着をつけなければならない。そのためにも、大きな隙を作り出すほかない状況だ。


「おおおおおおおおおっ!!!」


 神が力を、単なる力の放出をブレイブに撃ちだす。単なる力でもその量を膨大にし、続けて出し続ければ相殺しきるのは厳しい。


「神意の壁!」


 力を壁で受け止め、壁を傾けその力の方向を逸らす。まともに受けるだけでも厳しい力の奔流は受け止めるだけの強度とそれを支える力がなければ腕ごと持ってかれないほどの威力だ。神はその力を出し続けることができ、途中でエネルギー切れで止まるなんてことはない。神の疲労を待つ手はあるが、どの程度の時間で披露してくれるかもわからない以上、攻撃を止めるには別の手段が必要となるだろう。


「ぐっ……!」

「はははははは! このまま吹き飛べええええええっ!!」


 ばりっと電撃がブレイブの力に満ちた空間に生まれる。ばちばちっと音が鳴り無数の雷が発生し、円状に作られ、ブレイブの周りを回り始めた。


「雷の槍!」


 円状に走った雷が神に無数の槍のように向かう。神に当たる前に防御で掻き消されるが、その防御に力が回るせいで撃ちだすエネルギーの量が減る。壁の展開を片手で維持し、自由となった片方の手で魔法スキルをブレイブは撃つ。


「レーザーカノン!」


 指向性のある攻撃は単なるエネルギー攻撃よりも威力が高い。レーザーカノンのような、純粋な高い攻撃威力のスキルであれば力の中を突き進むことができる。


「ぐあっ!?」


 流石に完全な威力で神に当たることはなかったものの、力の中を突き進む攻撃は神の回避を不可能とし防御も放出する力にエネルギーが回るため難しい。ゆえに確実に攻撃を当てることは出来る。


「くそっ! 神に傷をつけるなんてなんて不遜なやつめ! 人間如きが調子に乗るな! いい気になるな! 僕は神だぞ!」


 竜の頭が幾つも空間に生み出されそこから熱線がブレイブに向け吐き出される。ブレイブは熱線の射線上に空間のゆがみを作り、通過する熱線の矛先を逸らす。単なる力とは違い、指向性の持つ攻撃はその指向性に由来する作用をうまく扱えば余裕を持って対処できる。同じようにブレイブは巨大な剣を出し神に撃ちだす。ブレイブと違い神はその攻撃に力をぶつけ撃ち落とす。


「ファイアーランス!」


 先のファイアーボールの弾幕のような飽和弾幕をブレイブが今度はファイアーランスで作り神にぶつける。


「芸の無い!」

「そっちも同じだろ」


 神がファイアーボールと同じような方法で攻撃を防ぎ弾き飛ばす。


「はあっ!」

「カノン!」


 力の打ち合い、純粋エネルギーのぶつかり合い。威力的には両者のエネルギーは相殺し合っているが、消費としてはブレイブの方が少ないがエネルギー総量の問題がある。このままエネルギーの打ち合いを続けることなどできない。


「神雷の槍よ」


 エネルギーの放出を片手で維持し、もう片方の手で天使を消し飛ばした雷の槍を作り出す。流石にこの一撃をまともに喰らえば神と言う存在でもかなりの痛手となるだろう。それを見て神も顔色を変える。


「なんてものをっ!」

「行けっ!」


 ばぢっ、と弾けるような音が空間に響く。神はぎりぎりで雷の槍を防ぐ。単なる力でも、その出力を膨大にすれば超強力な力相手でも拮抗できる。だが、そうするともう片方で維持されているエネルギーに回している力が減り、そちらが紙に届くだろう。神は両方に全力で膨大な力を注ぎこまなければならない。相殺している方はエネルギーの供給を維持しつづけなければならないが、雷の槍は一度相殺しきればいい。全力で力を注ぎ、雷の槍を後方へとはじき逸らした。


「はははははははっ! 防いだぞ……?」


 ブレイブは片手で杖を持ち、構えていた。先の雷の槍、それよりも膨大な力をため込んだ、ブレイブのいつも使っている信頼する友人製の杖を。今まで素手でやっていたのはこういうときのため……ではなくここに来たのが急ぎで急な戦いへの参加だったため忘れていたからだが、それゆえに不意打ち気味のしようとなっただけである。ある意味それが功を奏した形と言える。それまで気づかれず、ブレイブの魔力をため込み、いつでもその力を撃ちだせる状況となっていた。


「信雷の杖よ」


 神は咄嗟に全力で逃げた。逃げようとして、左腕から左肺のあたりまでが吹き飛んだ。それだけの身体喪失をしても、神は死ぬことはない。しかし、その苦痛、また膨大な力による体の喪失はその力の影響が抜けるまで修復は難しい。たとえ神といえども。


「はあっ! はあっ! くそおおおおおおおおっ!! よくも! よくもおおおおおおっ!?」

「ぶべっ!?」


 神とブレイブの少し上方から何かが壁にぶつかって潰れた時に出すような声が聞こえ、それより一拍遅れフィルマが神の右半身を斬り飛ばした。真っ二つとはいかず、右肩から腰ほどまでを。


「ぎゃああああああああああああああああああああああっ!!!」


 酷い叫び声を神はあげる。もはや神としての威厳の見られないありさまだ。


「く、くくくくははははははははは! よくも、よくもよくもよくも! お前たちに散々やられたが……覚えていろ。神は不死身だ。そして、お前たちももはやどうしようもない! 元の世界には帰れず、この世界に残るのであればこの僕が消し去ってやる。覚えていろ! そして死の恐怖におびえるがいい!」

「もう、フィルマちゃん、人を置いてくなー!」

「なに……?」


 空気を読まず上空からブレイブの上にパティが落ちてくる。神の最後の捨て台詞、それの醸し出す不穏な雰囲気、それがパティの言葉によって掻き消される。不遇な立場の神である。


「ふー。全く。些末な神なくせに調子乗っちゃってー」

「些末だとっ!?」

「そ。世界の管理を任されている神のくせに、世界運営を完全に私利私欲に使って……まあ、それはそこまでダメとは言われないけど、それ以上に問題なのは世界のリソースの無駄。できるだけ無駄なスペースを作らず、世界は大きく広げるべきなの。世界の大きさには限度があるだろうけど、それでもこの世界みたいに、小さな大陸一つなんて本当に小さい世界にしちゃってるのは大問題なんだからねっ!」


 神の役割は世界の管理、および運営。究極的には世界を最大限活用した世界を作ること。省スペースな世界は望まれない。この世界の外側、その大枠はどんどん肥大化し世界が生まれる。無駄な世界があればその分新しい世界が生まれなくなる。場合によってはそういう世界を潰し、新たな世界が生まれるのを待つが、管理する神のいるこの世界は別の話だ。そういう世界は神とともに世界を潰すか、神に指導を入れるかだ。

 しかし、この世界は一度全体を管理する神の指導が入っている。入っていてこの状況なのだ。実に不遜で愚かなことだ。ゆえに、今回神殺しを果たせる人材が送り出された。別に彼らのような存在を送り出さなくともいいのだが、世界を潰すのももったいないということで何度か試験的に行っていた。成功例、と言った所か。


「さ、ブレイブ。ブレイブなら見えるでしょ。自分と同じ力の塊、あれを取り出して」

「え? 取り出すってどうやって?」

「今のブレイブなら、ある場所に肉体を破壊すればいいよ」

「……はいはい」


 ブレイブが神に近づき、杖を一突きする。ぱんっ、と神の上半身、頭を残し腰から上が吹き飛んだ。


「は? あああああああっ!?」


 肉体の吹き飛んだその場所、心臓のあったと思われる位置に、光の塊があった。


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