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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
skill maker r
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109

「さて。お前たちに真実を告げた。この意味が分かるかな?」


 神はプレイヤーたちに問う。何故この場でこの世界の真実、プレイヤーたちの現実を突きつけたのか。この世界がどのように進もうとも神に起きた事実は関係なく、そもそもプレイヤーたちにわざわざ告げなければ元々の予定通りに物語は続いた。そもそもわざわざ言わなければよかったことだ。言わなければそのままの流れでプレイヤーたちはこの世界から元の世界へと帰還し消滅した。

 しかし、神はその流れから外れ、プレイヤーたちにこの世界の真実を教えた。それはお話によくある……


「ここでお前たちを殺すってことだよ」


 そう言って神はリュージにその手を向ける。


「っ!」


 咄嗟にリュージは神の攻撃を防御する。魔王の半身に刺さったまま、アルフレッドの破城槌により武器を失ったためそれしかすることがなかったためだが、それがか反ってよかったと言える。攻撃できないからこそ完全に意識が防御に向き、ぎりぎり相手の攻撃を防ぐことができた。


「っあああああああああ!」

「リュージさん!」

「兄さん!」


 それでもリュージは大きな力により後方へと吹き飛ばされる。攻撃は防御できてもその威力を完全に減衰できたわけではない。


「おおおおおっ!」

「っと。こそこそと近づいてきたか」


 神の視界に入っていなかったアルフレッドが一気に神へと近づいていく。そうして神の目線はアルフレッドに向き、その視界から外れたオルハイム、牡丹も攻撃のために神へと近づこうとする。


「破城槌!」

「ふんっ」


 アルフレッドの破城槌のスキル、その攻撃が神へと向かう。神は片手を差し向け力を放出。その動作こそ軽かったが、放たれるエネルギーは膨大なものであり破城槌のスキルとぶつかり合いエネルギーの余波がまき散らされる。一時的にその力は拮抗しほぼ相殺し合ったが、神の放った力が破城槌のスキルをわずかに超えアルフレッドを吹き飛ばす。


「なっ!?」

「それ、魔王にも使っただろう? 一度見た物に対する対処ができないとでも思った?」


 アルフレッドの破城槌のスキルが破られたことに驚きながらも牡丹とオルハイムが同時に神に攻撃を仕掛ける。神は特にそれを気にするそぶりも見せずに指をパチンと鳴らす。そしてその音が衝撃波へと変換され、神へと攻撃を仕掛けた二人を吹き飛ばした。


「やれやれ。その強い技、まだ使えるかな? 僕に届く可能性はあっただろうけど……まあ、結局唯人の技。僕に勝てるはずもない」


 神が手刀を作り、アルフレッドに振るう。手刀から撃ちだされた斬撃がアルフレッドに向かうが、その影からジャックが現れ倒れて起き上がっていないアルフレッドを引っ張り攻撃を回避する。


「くそっ! あいつのところに移動できねえ!」

「できたところでどうしようもなさそうだけどな」


 ジャックのスキルによる移動は影を渡るものだが、神の元へと移動は出来ない。それもそのはず、神には影がない。神とは光であり、光の中心である。影とは光を受け生まれるもの。プレイヤーたちに影はあるが神に影は存在しない。


「しぶといなあ……」


 神が呟いているところに何十と矢が降り注ぐ。降り注ぐ矢は神に触れる前に防壁が張られ防がれている。最後に槍が飛んでくるが、流石にそれは宙に現れた指向性を持ったエネルギーで撃ち落とされる。


「しょぼい攻撃だなあ。死ね」

「っ!」


 神は親指を立て人差し指を延ばし、手を銃のようにしてツキに向け、その指から弾丸を撃ちだす。その速度は通常の銃よりもはるかに速く、狙いは正確に心臓である。ツキに対応は出来ず、避けることは出来ない。

 しかし、その攻撃を予見したリュージが間に入り防ぐ。


「ぐっ!」

「おや……やるねえ? じゃあ、全部防いでみるかな?」


 マシンガンのように撃ちだされる弾丸、先ほどの弾丸よりも威力と速度は落ちているものの、リュージの防御を削り取るかのような間のない連続攻撃。リュージは盾で防御するものの、少しずつ押されながら盾が削られ薄くなる。そして、最後に強力で大きな一撃を撃ちこまれ、盾が破壊されリュージが吹き飛んだ。


「リュージさん、大丈夫ですか!」

「兄さん大丈夫!?」


 吹き飛び倒れたリュージにツキとシャインが駆け寄る。


「ふう……つまらないなあ。せっかく楔を破壊されて遊べる相手が来たかと思ったのにこの程度か……」


 がしゃん、と世界が変形する。それにより神により吹き飛ばされていたオルハイムと牡丹、横に逸れていたジャックとアルフレッド、プレイヤーたちが一か所にまとめられる。世界の幅が狭くなり、それぞれの距離の間隔が狭くなったためだ。それにより、今白い世界の端の方が黒く見える。光なき世界、それは世界として認められていない世界として作られていない外側の部分。


「じゃあ、まとめて消えろ」


 神が手を前に出し、手のひらの前に力の塊が生み出される。膨大な力、アルフレッドのスキル破城槌の何倍もの威力を生み出すエネルギーの塊。プレイヤーたちをまとめて吹き飛ばしてもおつりがくる一撃を神は打ち出した。


「バリア!」

「神意の壁!」


 プレイヤーたちの目の間に百を超える防壁が展開され、エネルギー塊を受け止める。数十の壁はそのエネルギーによりぶち抜かれたが、ある程度減衰したエネルギーを色の違う防壁がエネルギー塊を受け止めた。何枚か貫通されたものの、途中でエネルギー塊が防壁を抜けることができずに消滅する。


「なっ!?」

「遅いぞ? ブレイブ!」


 神により壁は破壊されたものの、部屋そのものは床部分が残っており、階段も残っている。その階段から登ってきたのだ。そもそも、他のプレイヤーたちも階段から外に脱出できたりするのだが……


「あはは、ごめんとだけ言っておくよ」


 ブレイブはプレイヤーたちの前に出て神と相対する。その後ろでフィルマがプレイヤーたちを守るべく防波堤の役割を引き受けている。最も他のプレイヤーはその事実に気づけない。まだブレイブの張った防壁が残っているため守る必要性は薄いが。


「……遅れてくるのもいたのか。いや、むしろ本命はお前たちなのかな? 僕の攻撃を防いだわけだし……ね!」


 神が手をかざしエネルギー波を撃ちだす。その攻撃はブレイブに届く前にその周りに作られた剣弾で相殺される。


「ソードレイ」


 ブレイブがスキルを使う。数重の円状にブレイブの周りに生み出された無数の剣が神に対して撃ちだされる。先のツキの矢と比べて一撃の威力が高く、桁違いの数の連続攻撃だ。同時に攻撃されるだけでも神が張った防壁を突き抜けかねないほどの攻撃力を兼ね備えており、撃ちだされた攻撃を神は壁を作り防ぐ。


「くそっ! 舐めるな……ちっ!」


 スキルとして発動した攻撃はブレイブの本命の目的ではなく、ブレイブの目的は力の放出である。剣を撃ちだすのは目くらましであり、力を世界に満たすための時間稼ぎだ。神が世界を狭めていたおかげでブレイブが世界に満たすべきエネルギーは少なくすんでいる。しかし、神は途中で気づきそのエネルギーに自分のエネルギーで拮抗する。

 今の世界、この空間における世界では半分が神のエネルギーに満たされた空間であり、もう半分がブレイブのエネルギーにより満たされた空間となっている。


「僕の真似事だと? たかが人間如きが!」

「別に真似でもなんでもないけど……こんなの誰だってできるけど?」


 神が満たした力から膨大な力をブレイブへと向ける。それは後ろにいるプレイヤーも巻き込みかねないが、防壁があるので届かない。それ以上に、その程度の力にブレイブが負けることもなく、同様に自分の満たしたエネルギーを使い神のエネルギーに対し撃ちだし力を拮抗させる。


「くそっ! くそっ! くそっ! 人間が舐めるなああああああああああっ!!!」

「神剣!」


 神が拮抗する力を強めるのに対し、ブレイブは力を鋭くする。ただの膨大な力は単なる塊にすぎず、力の指向性を決め、鋭くした力の放出に塊はただ切り裂かれ左右に分割された。そして、鋭く尖った指向性を持つ力は神を貫こうとする。


「おおおおおおおおおおおっ!!!」


 はじける音とともに神の目の前で力が止まる。傍から見ていれば何が起きているかもわからないが、魔力などの力を探知できるものであればその力の流れを見て状況を判断できただろう。少なくともプレイヤーたちに現状の把握は出来ていない。わかっているのは神とブレイブとパティとフィルマのみである。

 神は自身の力を全力で放出し向けられた力を止めている。単なる力の放出であれども、その量が膨大であれば厚みを持ち鋭い力を受け止めることは出来る。必要とする力の量が違ってくるが。

 ブレイブが腕を振るい同じような鋭くした力を弾丸のように撃ちだす。


「竜の尾!」


 かつて戦った土塔の迷宮にいた竜、その竜が持っていたお思われる尾が打ち出した力を受け止める。完全に防ぐことは出来ずに受け止めた尾がはじけ飛ぶが、それにより撃ちだされた力は消耗し神には届かず消える。そして拮抗していた鋭い力もようやく相殺した。


「はあ……はあ……」

「どうした? 息が上がってるみたいだけど」


 疲労している神に対し、余裕を見せるブレイブ。


「くそっ……たかが人間のくせに……いや、その力、もう人間とは言えないか」

「まだただの人間のつもりなんだけどなあ……」


 ブレイブの使う力、それはもはや神の領域に近い。しかし、本来のこの世界の神であるプレイヤーたちの目の前にいる神と、神の如き力を扱えるだけのブレイブでは全くちうがうと言ってもいい。得に違うのはその力の余裕だ。現在の状況から見ると神の方が厳しく、ブレイブの方が余裕があるように見えるが、その真実は大きく違う。

 神はこの世界の神であり、この世界に存在するエネルギーを十全に扱える。それに対しブレイブはパティに保存されている膨大な経験値のエネルギーを利用して力を使っている。前者は限度値がないに等しく、後者は貯蓄の限界が存在する。


「さあ、神殺しと行こうか」


 ブレイブはこの限度に達する前に神を倒さなければならない。

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