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E

竜との闘いも終わり、対に問題となっていた死亡原因を解決した。

そして、それ以後は紆余曲折あったものの、順当に安穏な生活を送ることができた。

まず、竜を退治したことにより、国からの褒章や英雄扱いなど、諸々の面倒ごとがあった。

この点に関しては、貴族位とか領地とか後々絶対に面倒なことになるものはもらわず、金品などをもらって解決した。

あと、王都に住居をもらい、それらに関しては国側でいろいろと保障してくれることになった。

向こうとしてもそれこそ竜を殺すことのできる戦力にちょっかいかけて逆に攻撃されたり、外に放り出して他所にもってかれるのは問題だと思ったのだろう。

そういう点もあり、生活は安泰なものなった。時々解決するのが大変な問題の対処を頼まれることがあったくらいだ。

そして、ギルドに所属しているが、ギルドの仕事は基本受けられなくなった。

なぜそうなったかというと、強さがあまりに高いせいである。適正な仕事というものがなくなったのだ。

かといって後進の育成なんかは逆に強すぎて難しいし、そもそも冒険者としては1年しか経験がない。

なので基本的に所属扱いになっているが、仕事を回すのは国側が請け負うこととなったのでギルド側は相手をしないことになった。


後年は基本的に師匠と魔術開発と研究、セリアと戦闘し修練を積むことを行っていた。

基本的にセリアは戦争時に行っていた通り、本当にそのすべてを捧げてくれているみたいで、いろいろとあった。

ただ、事実婚状態みたいな感じになっていたせいか恋愛事情は基本的によくなかった。

最も、セリアがいるからというだけではなく、強さに対する畏怖や恐怖の類もあったのだろう。

尊敬もないわけではないと思うが、あまりそういう見方をされた記憶はない。

師匠との魔術開発や研究はわりと順調に進んだ。竜に関しての知識、そしてそれに伴う魔術の根源に関する知識があったからだ。

また、前人類の遺産ともいえる鍛冶師のいた施設にも行き、そこで多くの知識を学んだ。

そういった事をしていたので、魔術関連でも色々と功績ができた。惜しむらくは魔術関係は師匠以外との接点がなかった点だろう。

どうしても人とのつながりはうまく作れなかった。

師匠の魔術関連の人間関係の影響もあるが、セリアとの戦闘訓練と魔術研究で空き時間が少ないせいもあっただろう。


師匠が死んだあと、セリアとの戦闘訓練は続けていたが、それ以外のことはあまり手を付けなかった。

のんびり過ごすのは性に合わないので、いろいろと人知未踏の地に歩を進めたくらいだ。

ある程度の年齢はそういった生活をして過ごし、最終的には恐らく50くらいで病床に就くことになった。

健康的な生活を送っていたつもりだが、寿命といったところなのだろう。そのあたりは正確には不明だがそう感じた。

正直順調すぎて特に何も起きない人生になっていたので、ある意味飽いてしまったから自然と死に向かったのかもしれない。

セリアに殺されたあのループの時節ではどうしても死から逃れようと足掻いていたが、その時が一番満ち足りていたのだろう。

最後、死ぬ時までセリアはいっしょにいた。セリアは先祖返りの影響から老化はかなり遅いようで、見かけも精神もまだまだ若い状態だった。

いろいろと病人の世話で苦労を掛けたと思う。ただ、セリアはやはりいつも通りだった。

もし自分が死んだ場合どうするかと聞いたら考え中だと言われた。流石に死後まで束縛したくない。

そして遂に自分は寿命による死を迎えた。








「まさか寿命でもループするとは……」


現在、ループの最初の日まで戻ってきている。まさか寿命と思われる死にすらループが適用されていようとは思わなかった。

もっとも、寿命であるとは限らない。ただの病として死んだからループしたのかもしれない。

だがそうでなかった場合が問題だ。そうでなければ永遠にループし続けることになるのだろう。

死なないことは個人的には嬉しい、ありがたいことだ。だが、同じ時間を繰り返し続けるのは少しつらい。

いくら運命や流れを変えることができると言っても変えられないことは変えられないし、いずれすべての事象に遭遇するだろう。

そうなってしまった世界を巡っても価値はない。すべてが分かっていてはただの作業になってしまう。


『私は死んでなかったけど、一緒に戻っちゃうんだね』

「セリア……変わってないなぁ」


年齢は二つ下だから同じ50ほどだ。だが、先祖返りの影響から精神も肉体も若い状態だった。

その影響か戻ってきた今も精神はループしていた当時と同じだ。


『スィゼは昔に戻ったよね。なんでかな?』

「……セリアが肉体を得る時と同じだからだろうな」


以前から思っていだが、これは正確にはループではないのだと思う。

最初に疑問を感じたのはセリアが肉体を得た時と自分のループで同じ現象が起きることだ。

すなわち、精神が昔の自分と融合することで得られる魔力量の増大。

自分にも起きていた現象で、セリアにも起きた現象だ。

これは自分のループとセリアの自分との融合が一緒であることを意味している。

つまり、自分の精神や魂など、肉体を含まない自分自身が過去に戻り、過去の自分と融合するのがループ現象の実情だ。

見た目状はループに見えるというだけで、実質的には平行世界に近いのだと思う。

まあ、過去を変えた時点で平行世界が生まれるなど諸々の話があるから正確なことはわからないが。


「しかし、どうしたものかな」

『何?』

「いや、このままじゃまた死んでループするだろ?」


最大の問題だ。結局ループして今まで行ってきたことが無駄になるのでは生きる意味が薄い。

人生一度きりだから面白い、ともいう。死にたくないから永遠を生きたいとは思っても、同じ時間を繰り返す形で永遠に生きるのは嫌だろう。


『そうだね。でもどうするの?』

「そうだよなぁ……何をすればいいのか」


結局ループ現象がどういう理屈で起こされているのかがわからない。ループを止めようにも理由が不明ではどうしようもない。

原因はわかっているのだが、その原因に対してどうやって会いに行けばいいのかも不明だ。


「答えは簡単だよー」

「……パティ」


病床に就いたころからはあまり見なくなった、話しかけることも少なくなったパティが実体化した。


「えっとねー。スィゼがこれからすることはいろいろあるけど、目標として達成することは一つなのです。神になればいいんだよ」

「……神?」

『神様?』


とんでもない話である。


「死んだらループをするのであれば、死ななければいいの。そのために神になればいいんだよ」

「その理屈はおかしい」

『別におかしくはないと思うけど……でもやり方わかんないね』


人をやめて永遠を生きればいいなんてのはかなり突飛的だと思う。確かに問題解決にはなるだろうけど。

それに、セリアの言った通り、どうすれば神なれるのかは不明だし、そもそもそんな方法があるのかも疑問だ。

誰でもできるようなことならそれこそ神になった人間の話が合ってもおかしくはない。


「大丈夫! 私が必要なことを全部教えるから!」

「……まさか」


以前言っていた。パティは補助輪だと。それは何のための補助輪なのか。


「パティ、全部知っていたんじゃないよな?」

「私が知っているのは私が知っていることだけだよ」

「答えになってないぞ」

「どっちでもいいじゃない。私は私がするべきことをするだけ。スィゼの助けになることをするだけだよ?」


答えはあいまいだが、否定はしていない。このにんまりした感じのパティの表情からも、絶対こうなることを知っていたに違いない。

だが、言っていることは嘘ではないはずだ。つまり、パティは自分の手助けをするためにいるのだ。


「……まあ、とりあえずやるだけやってもいい。どうせループしつづけるならやれることはやっておくべきだろうし」

『それはいいけど、これからどうするの?』

「そういえば……どうするにしても竜対策は必須か」


一度切り抜けたせいで、それ以後ループで戦う可能性は考慮していなかった。

今なら以前の時よりももっと楽に戦えるし、倒せるだろう。だがそれは相手に通用する武器があればだ。

世界鉱を使った武器や魔術具が泣ければ意味がない。


「はい、武器」

「…………本当に何なんだお前は」

『凄いね』


パティが口から世界鉱を含んだ合金の剣と世界鉱の魔術具を取り出した。

前にも見せたことのある格納、保管の能力だが、サイズ的にいろいろとどうなんだとツッコミをいれたい。


「ありがたいんだけどなぁ……」

「あ、セリアちゃんの武器もあるからね。大鎌」


あれまで持ってきているのか。かといって今あっても仕方がないのだが。

そもそも二つあることになるのだがどうなのだろう。今はパティがしまっておいていれば問題ないか。


「……ま、とりあえずパティの言った通り、神様とやらを目指してみるか」

「頑張ろうね! えいえいおー!」

『おー!』


……セリアとパティは結構気が合うようだ。正直この二人が乗ったときはあまりついていけない。

これからいろいろと大変だろう。神様を目指すなんて普通の人間のやることではない。

だが、ループ現象が付きまとう自分が普通の人間というのも変な話だ。特殊な人間ならばやはり特殊な運命、人生があるのだろう。

やるだけやろう。死ぬことのない、ループで決めたことだ。やってだめなら別の手を考えればいい。

とりあえず神様とやらになる方法をパティに聞くことから始めようか。

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