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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
skill maker r
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99

 炎の雨、一点に集中した弾幕が爆発しその影響によって周囲を見ることができなくなる。


「まさかこれで倒せ」

「てるわけないじゃん! バリア!」


 パティが魔法を何重にもバリアを展開する。それと同時に衝撃波がブレイブたちにに向かって放たれバリアによって遮られる。


「人が話している時に攻撃してくるなんてとっても行儀が悪いねえ! 君たちはボクらのおもちゃなんだから大人しく壊されなよ! 気分悪いなあ!!」


 爆発の晴れた後には無傷のパペットがいた。うっすらとパペットを覆うような層が周囲に見える。恐らくはあの纏っている層が一種の防壁のような役割を担ったのだろう。そして無傷と言えども、攻撃に晒されたパペットはブレイブたちに怒りを見せる。最もそれは自分を殺そうとしたことではなく、自分の思い通りに動かない事に対してだったが。

 風の刃、炎の矢、氷片の爆発、砂の槍、さまざまな攻撃が生き残ったパペットから放たれる。それらの攻撃はパティの張った複数のバリアを何枚か破壊し、ブレイブたちに到達せんと攻撃が続く。しかし、その攻撃を向けられる中ブレイブたちは特に危機意識がないような反応をしている。


「バリア! あの魔法攻撃大したことない?」

「バリア! まあ、あれだけ殺到して全部破壊できてない時点でお察し」


 パティの張るバリアはブレイブの張るバリアよりもレベルが高いものの、ブレイブが張るバリアよりも弱い。そのバリアで相手の攻撃を防ぐことができている。つまり、相手の攻撃でブレイブたちに痛打を与えることができないことが確定している。少なくとも現在見せている攻撃手段では。


「ひぃっ……だ、大丈夫なのか?」

「まあ、なんとか」

「というか、攻撃が通用しないなら後は倒すだけだよね」

「じゃ、とりあえず……ファイアーランス!」


 ブレイブの上方に炎の槍が展開され、パペットに向け撃ちだされる。パペットもブレイブに対しての攻撃のいくらかを炎の槍に向け迎撃するが、数の差は決定的であり、パペットの繰り出す魔法ではブレイブの撃ちだした槍を落としきれずそれらはパペットに到達する。しかし、パペットの纏う層により炎の槍は防がれる。先ほどのファイアーボールも通用しなかったが、単純な魔法ではそうそう通用しないようだ。


「ボクと魔法で勝負しようなんていい度胸だ! でも、君たち程度の使う魔法でボクの守りを突破することは出来ない! ヒハハハハハハハハハハハハ!」

「そっちこそ、こっちのバリアを突破できてないくせに粋がるなっての」


 互いの攻撃は互いの防御により完全に防がれている。最も、幾らかの差は存在する。ブレイブの攻撃はまったく相手の防御を破っていないがパペットの攻撃はブレイブたちの張ったバリアを突破している。貼り直しができるとはいえ、パペットの攻撃はブレイブたちに届く可能性があるということだ。


「あの防御、何かわかる?」

「うーん……魔力の層とかかな? あいつ、魔法使いタイプだから魔力も膨大だろうし。少なくとも低レベルの魔法なら威力にかかわらず防げる可能性は高そう」

「対処法は?」

「ああいうのは、完全に防ぐか補充式かでわかれるかな。補充式なら削りきればいいけど……完全防御だと、突破するしかないね」


 防御の突破方法はその防御方法によって違う。例えばブレイブたちの張るバリアは今パティの言った中では補充式だ。バリアはHP式でその防御を超える攻撃でなければ破壊できないわけではなく継続的な攻撃で破壊可能だ。再度バリアを展開するには新たなバリアの魔法を発動する必要がある。完全防御はこのバリアの例で考えるなら防御力以上の攻撃でなければ破壊できないということである。

 パペットの使う防御が補充式であるならば、飽和攻撃で突破できてもおかしくはない。最も、飽和攻撃と言っても一撃で削れる量次第では纏う魔力の層の補充に対して間に合わない可能性も高いが。完全防御ならば、低レベルの攻撃魔法では突破は無理だと考えていいだろう。ファイアーボールの利点は消費が少なく連続で大量に同時に攻撃できる所であり、一撃の威力はそこまで高くはない。


「じゃあ……サンダーライン!」


 雷の帯がパペットに伸びる。サンダーラインは一種の連続攻撃、継続攻撃であり、狙いをつけた相手に連続して当たり続ける攻撃だ。少なくとも発動し続ける限りは。一度防げばそれで終わりという魔法ではない。

 その雷の魔法がパペットへと向かい、パペットの防御の層に衝突する。しかし、パペットは気にした風でもない。


「ヒハハハハハハハハハハハハハハハ!! 君たちの攻撃は通じないって言っただろ! ただの魔法でボクの防御を突破できるわけがないだろう! さて、こっちもちょっと本気をだそう……かな!」


 パペットが両手を広げる。その手のひらから炎の柱が伸び、それがブレイブたちに向かう。それはブレイブたちの前に展開されたバリアの上方を超えて迂回するかのような攻撃となっていた。


「本気って、バリア抜けてくるだけかよ。ブロック」

「いや、ちょっと危ないねあれ。バリア!」


 ブロックでブレイブが空中に足場を作り、その足場をもとにパティがバリアを展開する。それが炎の柱を食い止めるが、炎の柱は一度の衝突で消えない。先ほどブレイブの放ったサンダーラインのような魔法であり、それによりバリアが破壊され攻撃がブレイブたちへと向かってくる。


「あ、やばい? バリア!」

「一応防げるけど、あれ多分なんとかしないとだめそう。アイシクルケージ!」


 氷の檻が展開され、炎の攻撃を防ぐ。炎の攻撃は氷の檻をすり抜けられず、その攻撃が防ぐ部分の周囲の氷が解けていく。熱量を扱う攻撃限定の防御手段となる魔法で、今パペットの撃ちだしている炎の柱に対してはかなり有効な防御方法だ。最も、継続的な攻撃により消耗が激しくすぐに破壊されそうだが。その間にブレイブはバリアを補填していくが、根本的な問題の解決にはなっていない。


「こういう魔法戦ってあんまりやれないからいいなあ」

「命がけじゃなかったらね」


 ブレイブとしては魔法使いとして魔法戦をやりたいと思ったことはあるものの、スキルメーカーにおいて対人戦みたいなものは基本的に存在していない。一応PKはあるが、それを望んでやりたいわけでもない。魔法使いの本分として全力の魔法の撃ち合いをやりたかっただけである。それが異世界でとはいえ叶ったのだから、うれしいという気持ちが生まれるのはわからなくもない。ただし、それが命がけの殺し合いでなければだが。実に緊張感のないセリフだ。


「……やっぱり、全力でやるしか?」

「だね。あ、全体攻撃系はダメだから」

「はいはい……神雷の槍よ」


 雷でできた槍が生み出される。スキルメーカーにおいて、天使を一度葬った一撃を誇る雷の魔法。以前使った時は天から雷を落とすように扱ったものだが、別に真下にしか落とせないわけではない。真下に落とすのが一番制御が楽なだけであり、真横に飛ばすこともできる。


「行くぞー」

「おー!」


 ブレイブが槍を投げる。パペットに向けて投げられた槍はパペットの魔力層に衝突し、一瞬だけ停止する。それと同時にパペットの魔力層が消失し、同時にパペットが一気に魔力を放出し体を逸らした。魔力の放出により僅かに軌道を曲げられた槍は体を逸らしたパペットに当たらず、その後方の壁を破壊した。


「な、なななな!? なんだよこれは!? 人間の使うような魔法じゃないぞ!?」


 驚愕と恐怖。パペットは自分の防御を突き破った攻撃を見て戦慄している。防御に魔力を放出したことや、体を大きく動かした、意識の方向が変わったことなど、様々な点でパペットの魔法の制御が途切れ炎の柱が消えている。


「避けられた?」

「逸らされたね。なかなか相手ながらやるねー」

「褒めてる場合じゃないって……まあ、一度で駄目なら二度、ってね。神雷の槍よ」


 二度目の槍が投擲されようとする。パペットは慌てた様子でそれに対処しようとしている。


「人間のくせにふざけるな! 君たちがボクより強力な魔法を使えてたまるものか! やってやるぞおおおおお!!!」


 ブレイブに向けパペットが腕を伸ばし手を向ける。その手の先に、光が収束していく。ブレイブの雷の槍とは違い、光線の魔法を撃ちだすつもりのようだ。

 両者の魔法攻撃が打ち出される。パペットの撃ちだした収束された光線にブレイブの投げた雷の槍が飛来する。光線と雷の槍はぶつかり合い拮抗する。しかし拮抗していたのは一瞬だけであり、徐々に雷の槍が光線を押し返す。


「くそおおおおおおおっ!!」


 パペットが光線に魔力を籠め、一時的に出力を増大し、光と雷が弾けた。対消滅という形で魔法の衝突の勝敗は引き分けとなったのだ。


「は、はははははは! ボクの魔法が人間に負けるはずがない!」

「神雷の槍よ」


 パペットは雷の槍を散らしたことに喜んだ。自分の魔法は人間の魔法に負けるものでないと。しかし、そんなことを考えている時間はパペットには残されていなかった。

 ブレイブの使う魔法はサンダーラインのような維持が必要な継続魔法はあまり使われない。単発の物が主である。神雷の槍も同様であり、一度投げた後は槍に意識を払わなくてもよい。つまり、攻撃後にまた次の攻撃準備ができる。その攻撃準備の間、パペットは雷の槍の相殺に力を尽くした。そして、両方の攻撃が対消滅し、それによりようやく魔法の使用が終わったのである。それはすなわち、次の魔法の準備までにわずかな隙間が空く、ということだ。その隙をブレイブが狙わないはずもない。


「ギャ」


 パペットの魔力は膨大だ。一瞬だけ、魔力を用いて雷の槍に対抗するも、本当に少し防ぐことができる程度だ。その時間で、パペットはわずかに叫び声をあげることができた。最も、その後すぐにパペットは雷の槍によって消し飛び、叫び声もパペットごと消え去ったのだが。


「ふう……」

「ふう、じゃないよ? 壁がひどいことになってる……」


 逸らされた雷の槍、パペットを消し飛ばした雷の槍の余波。いくら単発で単体用の攻撃とはいえ、二度の強力な攻撃は彼らのいる広間に多大な崩壊をもたらしていた。今すぐこの広間が崩れ去るということはないかもしれないが、少しずつ崩壊が始まっている。そして、この迷宮の主、楔の一柱を消滅させたのだから、迷宮の維持がされなくなるというのはおかしな話ではない。広間の崩壊の余波が広まっていっている。


「さ、脱出するよ」

「そうだな」

「洞窟から出るからちゃんとついてきてねー」

「あ、ああ……すげえもんみちまった」


 リアルの魔法合戦、強力な魔法使いの実力をその目で見た船主は今後の話のネタには困らないだろう。信用されるかはわからないが。

 崩壊の始まった洞窟をブレイブたちは駆け抜ける。魔物の類はほぼおらず、パペットが死んだことにより仕掛けられていた魔法の罠は消滅している。魔法の罠はパペットが作ったものであり、同時にパペットが維持していたものであるようだ。彼らは安全に迷宮から脱出することができた。

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