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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
skill maker r
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 かつてスキルメーカー内において挑戦し、クリアしたことのある土塔の迷宮。この世界においてもその中身の構造は変化していない。しかし、差異と思わしき部分は見られる。具体的には出現するモンスター、魔物の類に関してだ。かつての土塔の迷宮ではダンジョン内の壁を通じてモンスターが移動し、不意打ちのように襲ってきたが、この世界においてはそんなことはない。


「ファイアーボール!」

「ウィンドハンマー!」

「ギャオオオッ!!」


 火の玉と風による物理的な破壊攻撃、その二つの攻撃を受けても通路をと置てきた魔物はさほどのダメージがない。通路とを通ってきた魔物は一種の亜竜だが、その強さはスキルメーカーに存在していたものよりも大きい。少なくとも防御力はとても高いだろう。しかし、強力になったとはいえ、道を歩いてくるのであれば対処はしやすい。その強さに反して、動作は鈍いため、逃げるのも動きを阻害するのも道をふさぐのも可能であり、対応が容易にできる。


「バリア!」


 何重にもなり通路を塞ぐ防壁を張り、相手の存在が見えるのに移動できなくされ、竜が苛立たし気に叫ぶ。強度もあがっており、攻撃力も高いとはいえ、その攻撃速度は遅く、バリアもそこそこ防御力があり、突破は結構な時間がかかるようだ。


「堅くはなったけど、強くはなさそうだね」

「ゲームみたいにステータス弄れば強くなるわけじゃないし」


 スキルメーカー内であれば、現実的であってもゲームであるため、ステータスの数値を弄ることによる強さの操作が可能だ。しかし、この世界は現実だ。魔物の強さは数値で決まるものではなく、実際のその身で決定する。生物である以上、生物的な限界を超えることは出来ず、弱点のような明らかに有効となる属性を作ることはない。

 出現した亜竜は、その身を鱗に覆われ、鉄壁ともいえる防御力に守られている。その代わり、その鱗の重量、および鱗の強度に寄る動きの阻害により動作が鈍い。それならばその分筋力が着くのでは、ともおおもうが、この場所ではそれらけ肉をつけるのに必要な餌を確保できない。一応この迷宮内では生きるのに必要な餌を確保できるものの、逆に言えばそれを理由に自身を強くする必然性はない。たまに迷宮内に入ってくる魔物相手に対処できればよく、それならば現時点の絶対的と言ってもいい防御力さえあれば十分である。


「ソードレイ!」


 ゲーム内のように、単純な物理攻撃は有効かと思い、ブレイブが物理攻撃魔法を放つが、それも弾かれた。単純に防御能力が高い、というのが亜竜の強さだろう。攻撃能力はバリアに対する攻撃を見る限りでは、鈍重ながらその防御能力による硬度を生かしたものであるらしい。

 攻撃が効かない、というわけではない。彼らの使った三つの魔法の中では、ファイアーボールが一番相手に有効だった。この辺りはゲームとは違う点だ。魔法のスキルレベルの問題……ではなく、攻撃方法によるもの。魔法的であろうとなかろうと、物理攻撃はその身に存在する鎧のような鱗で防がれるが、それ以外は違う。


「だめだなー、もう。エレクトリックミストー!!」


 電撃の塊がふわりと空間に生まれ、その周囲に電撃をまき散らす。電撃と言っても、そこまで強力なものではない物の十分に肉体に変調をきたす程度には強い。その発生は竜の目の前で行われ、竜に影響をもたらす。


「ギャエアアアオオオ!!」

「滅茶苦茶効いてる。電撃弱点?」

「弱点とかゲーム的発想だよ。この世界は現実なんだから」

「……現実、か」


 改めてスキルメーカーを基準にして物を考えていることに気づくブレイブ。一応この世界がスキルメーカーの中ではないことを理解しているものの、それもで一致する多くの物は等号で結んでしまいものを考えてしまう。

 この世界は現実である。亜竜の鱗は物理的な強度が高く、接触するような攻撃ではその頑強な防御力により弾いてしまう。隙間を狙おうにも、体に密に張り巡らされたそれは、槍や剣などでは貫くのは難しい。

 しかし、それならば針はどうだろう。針すら通さないほどに密であるだろうか。ならば、水、水蒸気のような粒子はどうだろう。それすら通さないのか。熱は、電気は、放射線は。竜の鱗は強固であっても、絶対的な防御ではない。鱗を抜けて肉体を攻撃する手段は多様に存在し、鱗を無視して攻撃してもいい。肉体には鱗で守れない部分も多く存在するのだから。


「サンダーライン!」


 雷の帯が竜を貫き、その身を電撃で焼き尽くした。








 亜竜相手に電撃が有効であると分かってからは楽に先に進めるようになった。もともとパティがいるため不意打ちを気にする必要もないが、この土塔の壁を魔物が移動してくるようなことはなく、先や後ろにだけ注意していればいい分楽だ。


「なんで壁を通じて出てこないのかな」

「この土塔に自己修復力があまりないからでしょ。ゲームだと無限に修復できる設定だけど、現実じゃ難しいからね」


 迷宮はこの世界の楔となっている存在により構築されたものだ。その迷宮を直すのはその楔となっている存在であるため、修復すればするほどその存在が持つエネルギーが失われる。よって、この迷宮を破壊して移動するなどという手段をその楔の存在が許すはずもない。


「それに……今まで出てきた魔物からしても、壁を移動できるものじゃないし」


 道中に出てくる魔物はすべて亜竜だ。最初にだったものとほぼ同じ、個体差はあるが種族的に大差はない存在である。この世界が現実であると考えるならば、迷宮内で多様な生態系を作るにはこの迷宮は狭すぎる。一種の魔物の身が住処西徘徊していると考えればおかしなはなしではない。それにしてはあまりにも固定的であると考えるべきだが、そもそも迷宮内の魔物は楔によって作られたものであり、楔の考えでどういう配置になるかが決まる。この迷宮の楔は一種類しか置かないことにしているようだ。


「亜竜ばっかりだし、やっぱり一番上にいるのはあれかなー」

「竜?」

「うん、竜」


 この迷宮のボス、ここの楔となっている存在は恐らく竜であると二人は推測する。その最大の理由はやはりスキルメーカーでこのダンジョンにいたぼすが竜だったからという理由もあるだろうが、やはり出てくる魔物が亜竜だけ、というのも理由だ。ならば亜竜ではなく竜を魔物として出せないのか、と考えるかもしれないが、竜は配置するには問題がある。サイズや必要なエネルギー、また、その強さ故に従いやすさの問題も。迷宮の守りとして配したのに、勝手にでていく可能性があるのではたまらないだろう。それならば、強さは落ちても自分の言うことを聞く亜竜の方がいい。


「っと、一番上ー!」

「あの先か」


 最上階まできて、目の前に扉が鎮座している。明らかにこの先に強い敵がいる、ボス部屋であることを示すかのようながっしりとした扉だ。


「……開けよう」


 若干緊張してきているブレイブ。この世界は現実であり、ゲームのように軽い感覚で戦闘を行うのは本来難しい。ブレイブが今まで気にせず戦えたのは、パティという強力で安心できるパートナーがいたからである。また、本人としても、死ぬときは死ぬしかないという楽観な部分もあるが。

 しかし、ボスが相手となると、無事に済むかというとかなり怪しい所だろう。どれだけ強いのか、そしてどれだけ危険な目に合うのか。今まで感じたことのない、現実味のない死への恐怖。それを初めて実感し始めたのである。それでも、前に進むしかないが。


「大丈夫だよ、ブレイブ。あなたは死なないわ、私が守るもの」

「……うん、頼む」

「……ネタが通じない世代かー」


 どこまでも空気を読まない使い魔である。ブレイブが扉を開き、二人が中に入る。


『うぬら、なにものじゃ』


 塔の最上階、今までの通路のような狭い道ではなく、広間となっている場所、その四分の一を占める肉体を持つ竜、それが扉の中に入ったブレイブたちの目の前に鎮座していた。


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