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18

結局有効な手立てを作ることはできず、また次のループに来た。

流石に一度見た光景であるためか、セリアもおとなしい。五月蠅いのはあれだが、静かなのも寂しいものだと思うのは贅沢だろう。

いつも通りに同じことを繰り返し、今は竜の眠る谷だ。


「スィゼ」

「パティ? なんで実体化してるんだ?」


パティがいつの間にか実体化している。まあ、今までも何度も勝手に実体化していることはあった。

そういう時は大体何かしたいことか用事か何かがあるときだ。しかし、今回は何なのだろう。


「はいこれ」

「……これは」


師匠からもらった石だ。というか、パティはこれを食べていたのだが。あれで体の中にしまっていたとでもいうのだろうか。


「なんでこれを?」

「そのうちわかるよ。じゃね」


そう言って消える。もう使い魔としてはどうなのだろうと思うが、とりあえずおいておこう。

なんだかんだでパティはこっちのことを考えて動いている。何らかの意図があるのは確実だが、悪いことになるとは思わない。







「客人とは珍しいな。ここにわざわざ来るということは何か作ってほしい、ということだな?」

「はい。魔銀の武器を作ってほしいんですけど…」

「ああ。材料はあるのか?」

「ここに……」

「魔銀の量は少ないな。そうなると合金にするか表面を覆うか……おい」

「え?」

「………………これは?」


師匠からもらった石を見て表情を変えている。


「わかりません。貰い物です」

「……これも使うぞ」

「別にいいですけど……それはいったい?」

「世界鉱」

「……え?」

「これは世界鉱だ。今まで見たことないから絶対にそうだという確証はないがな」


開いた口が塞がらない。伝説上、与太話に近いものがここにあると言われても信じられない。

ただ、一つ思うことはある。少なくともパティはこれを知っていたのだろう、ということだ。

だからこそこれをこのループに持ち込んだ。


「……世界鉱というのは構いませんけど。どうするんです?」

「それを使って魔術具を作ってほしいんだけど」

「パティ?」


また唐突に現れる。最近はどうもパティに主導権というか、話の内容を持っていかれている気がする。


「簡素なものでいいよ」

「普通の魔術師に魔術具は必要ない。必要なのは……なるほど。目的は知らんが、作ってやろう」

「よろしくね」

「パティ!」


勝手に現れて勝手な要求をして消えた。もうこの使い魔は何なのだろうかと思ってしまう。


「……パティの要求を聞くのは構いませんけど、先に俺の武器を作ってくれませんか?」

「ああ、わかってるよ。二日待ってろ。すぐに作ってくる」


いつもより圧倒的に早い制作速度だが大丈夫なのだろうか。







その後、いつもの魔銀と鉄の合金の剣を受け取りセリアを倒し、精神を移すまで順調に終えた。

今回はその後魔術具とやらの制作を頼むことになったので、それを取りに行く。

しかし、何のために必要なのだろうか。パティは聞いてもろくに説明してくれないのがあれだ。


「よく来たな」


いつも通り、なぜかこっちが来たのを察知して出迎えてくれる。


「そっちの娘は……神鉄製の武器か。なるほど」


何故かセリアのほうを見て納得している。


「世界鉱で作った魔術具だ。多分これはそっちのためのものだろうな」

「……はあ」


いまいちわからない。なぜセリアに魔術具が必要になるのだろうか。


「そっちの娘、先祖返りだろう。先祖返りの能力は発現が歪になるだろうと書かれていたからな。その能力を最大限扱うためならば魔術具の補助が必要になるんだろう」


確かにセリアが使うのは攻撃的な空間魔術だ。これは先祖返りの能力が偏って出ていることになるらしい。

だが、本来先祖返りによって使える前人類の力はもっといろいろなことができる。

セリアに限った話になるが、恐らく風属性のみしか使えないのは変わらないが、空間切断以外の空間支配系のものも扱えるようになるだろう。

色々と話した結果、大体そういう結論に至った。パティが出てこないし何も言わない。

パティならばもっといろいろ知っている可能性もあるが、こういう時は何もしてこない。


「それとだ。これも渡しておくぞ」


剣を渡される。


「これは?」

「世界鉱と神鉄と魔銀の合金で作った剣だ。前に作ったのとほとんど同じに作ってあるから問題なく使えるぞ」

「…………は?」


意味が分からない。なぜこんなものを作ったのか。ありがたい話ではあるのだが。


「なんでこんなものを?」

「世界鉱を使わせてくれた報酬みたいなものだ。鍛冶をするものにとって伝説、御伽噺に等しいものに触れられたんだからな」

「むしろこっちが報酬を支払う立場なんですけど…」

「世界鉱を使えただけで十分な対価だ。あれは希少とかそういものじゃない。見ることができるだけで末代まで語れるくらいのものだからな」

「はあ……」


世界鉱とはそれほどまでの代物だということなのだろう。それほど凄いものがあっさりとした入手だったために実感がない。

とりあえず、魔術具も手に入れ、新たな武器も手に入れた。竜戦がどうなるかはわからないが、新戦力となるものを手に入れたのだ。

まだ竜の復活までは時間がある。それまでいろいろと新しい力をどう扱うのかを確かめなければならないだろう。

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