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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
skill maker
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 コッチーニの南、湿地帯の方角からモンスターの群れが現れる。その集団は、以前のコッチーニ防衛戦の時よりも数が多く、強さも上昇している。主に湿地帯のモンスターがメインだ。サイが多い。流石に水の中でしか生きられないような、水中の蛇のようなものはいない。飛行モンスターも数多くみられるが、湿地帯の向こうの森に住まうモンスターも見える。

 流石に亜竜の群れはまだ来ていないようだ。このレベルのモンスターが前座、先遣部隊というのは少々以上だが、これは以前コッチーニがモンスターに支配されていた影響である。コッチーニ南の街道に強めのモンスターが配置されたように、モンスターに一時的に奪われたことで湿地帯、およびその向こうのモンスターが活性化したためだ。湿地帯のサイが水の中から出ているのも、その影響だったのである。


「おい……流石にあれ、やばいだろ」

「あいつらはまだ倒せる相手だろ。でも、前よりも数が多い。確かにやばいな」


 ざわざわと、モンスターの群れを見たプレイヤーたちが話している。彼らはモンスターに突っ込んで言ったりはしない。あの群れに揉み苦茶にされれば、まともに戦う前に死亡で戻される。ある程度の距離に使づいてきた時点で、一部の魔法使いや弓矢を扱う遠距離攻撃のプレイヤーが、街のそばまで来た時点で、ある程度のタンク系統のプレイヤーが壁のように押さえ、その脇を抜けて街に入ろうとするモンスターを門付近で倒す。中に入ったのも、相応に相手をする形だ。

 全てのプレイヤーが強者と言うわけではない。スキルメーカーの探索が進み、北側に行けるようになり、新規プレイヤーもそこまで多くはないが、多くのプレイヤーはせいぜい第四、第五くらいの街まで行けているのが現状だ。フマーレストの沖にある島のダンジョンや、北方のダンジョンに侵入できるプレイヤーは実は意外と数が少ないのである。

 サイ相手には負けないプレイヤーも多いが、この後に続く亜竜の群れを考慮すると、八割近いプレイヤーは脱落するだろう。最終的なボス相手を考えると、そうとうきついと言うのが現状だ。


「来るぜ……!」

「いつでも来いよ!」


 ざわざわと、徐々に近づいてくるモンスターの群れを見ているプレイヤーたち。しかし、そんな中、空が曇る。


「え?」

「雲が出てきたな」

「いや、あれどこからでてきたんだよ!?」


 スキルメーカーにおいて、天候は実装されていない。基本的に空は快晴だ。そもそも、昼夜の概念すらないのだが。意外とリアルっぽく設定されているが、ゲーム的であったりリアルとして設定されていないことも少なくない。もう少し何とかしてほしいとプレイヤー側も要望を送っているが、今まで叶えられた案件はほぼない。運営に対する文句を言うスレッドにおいての大体の罵りが『運営仕事しろ』なくらいである。


「雲を呼ぶスキル?」

「あれだ、勇者が雷撃つ奴」


 大昔の漫画やゲームなんかで見たことのある光景を連想したプレイヤーも少なくないだろう。雲自体呼び寄せたところで、意味があるとすれば雨雪雷の天候系の攻撃なのだから、連想するのもおかしくはないだろう。

 そう言った話が出てきた頃合、雲の真下に結構な数のモンスターが集まった時点で、カッと雲が光、雷が落ちる音とともに、巨大な剣が三本落ちてきた。


「うおおおっ!?」

「雷じゃなくて剣が落ちてきた!?」

 

 どごん、と土を抉る、貫く音がする。モンスターもそこそこの数が巻き込まれただろう。しかし、所詮は剣の刀身部分だけしか攻撃手段にはならない。三つはそれぞれ少し離れたところに落ちているが、一割削れているくらいだ。十分とはいえるのだが、とんでもない一撃にしては、大した成果ではないように見える。


「見掛け倒しじゃねえか……」

「全然減ってない」

「いや、一応一割ほど削れてるだろ?」

「あれ、どういうスキル何だろう」

「MP全部使ってないとできないぞ、ああいうの」


 一部、あの手のスキル関係に詳しいプレイヤーが発言する。実際、あの規模、あのサイズの攻撃スキル、魔法スキルであれば、MP消費は半端ないものである。有名な"破城槌"のプレイヤーの使う破城槌スキルですら、ようやく三発使えるくらいだ。剣を落とすスキルは確実にそれ以上のスキルである。しかも三本。


「じゃあ、もうこれ以上使えないのか」

「もったいねえ……」

「竜に使えばよかったのに」


 以前見たことのあるプレイヤーもいるが、ボスであるモンスターに落とせばいいと言う意見の方が多い。数を討つより、強者を打つ方が成果としては大きいだろう。この時点で、多くのプレイヤーは気付いていない。いや、すでに県が落ちてきたから、意識していなかったと言った方がいいだろう。まだ雲が残っていたことに。


「……あれ、まだ音がする」


 一人のプレイヤーが、雷の音を聞き、上を見上げる。つられて何人かのプレイヤーが上を見上げ、そして気付く。まだ雲が残っていること、そして雲の下に光が満ちていることに。

 カッ、と先ほどのように光り、雷が落ちた。避雷針のように、それは剣にめがけて落ちる。雷と言うが、自然現象でない雷は動きが速いが、プレイヤーが目に見える程度の素早さしかない。それが、剣に堕ちる瞬間が多くプレイヤーの目に見え、その雷が爆発するかのように膨れ上がり周囲に拡散するのも同時に見えただろう。


「ぎゃあああっ」

「目があああああああ!」

「いや、眩しいけどそこまでじゃないから!?」


 いわゆるお約束だ。実際目を焼くほどの光量ではない。流石に視覚強化などで近くで見ていたらそんなふうになったかもしれないが、この状況でそんなことをしているプレイヤーはいなかった。

 膨れ上がり、周囲に拡散した雷は、周りにいたモンスターを巻き込み、大規模な破壊を巻き起こす。多くのモンスターは雷に耐え切れず、電気とその熱で死に、生き残ったモンスターもほぼすべて虫の息、かろうじてそうなっていなくても重症だ。巻き込まれていないモンスターはおよそ三割ほど。つまりは、一連のスキルの流れで七割が削られたのである。


「………………」

「……ひええ」


 流石にこの光景を見て、多くのプレイヤーは黙り込む。これほどの規模の破壊攻撃スキルは今まで誰も見たこと見聞いたこともない……いや、ただ一つだけ、前例が存在していた。コッチーニを焦土にした、火の玉落としのスキルである。今回は二回に分けてだが、コッチーニを破壊したスキルと比べてもそん色はないほどの威力と言っていいかもしれないほどだ。いや、こちらの方がレベルは低いものの、これほどのスキルを使える存在が何人もいてたまるか、と言うのが多くのプレイヤーの思いだ。残ったモンスターが近づいてくるまで、プレイヤーの間で誰がやったんだ、という話になってしまうほどの混乱だった。


「……やっぱり、その場で見るとすごいですね」


 ただ一人、ブレイブの側でその光景を見ていたフィルマを除いて。







 ブレイブの大規模攻撃魔法は、消費が馬鹿にならない。経験値と言う別枠での貯蓄とはいえ、無駄遣いをするともったいない。特に取り換えしのつかないものだからこそ、節約しよう、無駄遣いを減らそうと言う意見になる。特にコッチーニを焦土にしたスキルは、消費したように対してのリターンが少ないせいもあった。

 そこで、ブレイブとパティが相談し、最初に補助魔法、次に攻撃魔法で、攻撃魔法を補助魔法で威力を増大させることにした。

 補助魔法は、ゼウスの雷剣という魔法スキルで、雷のように剣を落とすスキルである。この剣は、雷を受けると、それを何倍にも増幅させ、放射するという特性を持ったものだ。それ単体でも高い威力を持つが、剣の部分にしか攻撃判定がない。質量を考慮すると、範囲攻撃としてはあまり悪くないが、代わりに最初に堕ちた時にしか効果を期待できない欠点がある。実は見ていたプレイヤーの言った通り、巨大モンスターを相手にしたときとの攻撃手段としては悪くないのだが、ブレイブとしてはその使い方は思慮外である。

 そして、次に使った魔法スキルはサンダーフォール。ただの魔法スキルで、ただ雷を落とすだけのスキルだ。ただし、今回はそれを数十の束にし、三本の剣それぞれに落とすと言う使い方をしたが。それにより、数十のサンダーフォールが補助効果により増大、拡散、周囲に大破壊をもたらしたのだ。これもまた雷剣と同じように、強大な単体モンスター相手に使った方が本来は効率が良いだろう。二つセットだからこそ、大量のモンスターを相手にするのに向いているのであった。


「リターンは?」

「そこそこ。流石に増加なんてことはありえないけど、消費に対しては悪くないね」


 経験値。モンスターを倒すのに必要な経験値はそのモンスターと同等、そして得られるのは半分であることを考えると、消費の半分返ってこれば十分と言えるほどだ。しかし、今回は七割ほど返ってきたのだから、むしろ大成果と言えるくらいだろう。


「補助とセットだと悪くないか」

「でも、多数相手だからよかったけど……今回みたいな、モンスター密集状態じゃないと無理だよ?」

「それは残念だな……」


 今回のモンスター相手はかなり都合がいい状況だったと言える。そうそう都合がいい状況はありえないため、同じような結果を期待できることは少ないだろう。残念なことに。


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