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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
skill maker
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 衝立を入手し、ついでに鍛えられた鍛冶の腕前で作られた鉄杖を渡され、ブレイブはコッチーニまで戻る。行きはテイルロマジアに関して一度行ってみたい、という思いがあったからそちらを通ったが、帰りはアーテッド側へと戻る。テイルロマジアまたはニアーズレイ道中の敵は強さに変わりはなく、そこから山か隠し道を抜けて戻るだけなのだが、その先の困難に差がある。アーテッド側から戻るほうが、戻る点においては楽なので、そちらの方からブレイブは戻るようだ。荷物もあることだし。

 また、テイルロマジアに見る物がほとんどない、というのもある。テイルロマジアはニアーズレイよりも、鉄などの金属系文化は低い。その分、スキルに関しての知識や、薬草毒草、生物利用の素材に関しての知識、魔道具関連などの知識に造詣が深いのだが、ブレイブにはパティがいるため、利用する価値は低い。もちろん、パティが知りえない知識も多く存在しているが、現状ブレイブの目的はダンジョン攻略であり、余計な時間を費やせない。もし、土塔のダンジョンの攻略を負えれば、テイルロマジアを訪れ知識の入手を頑張る可能性もあるだろう。どちらにせよ、今用事があるわけではない。

 衝立、という荷物を持ったが、そこまで極端に移動効率が下がると言うほどではないが、やはり手間はかかる。コッチーニに戻るまで普段の移動から一日多くなる結果となっている。

 さて、衝立だが、基本金属製である。つまり、本来水に浸かると錆びる危険のある物だ。本来なら、コッチーニの南の湿地帯を抜ける上で持っていくと言うのは難しい。何故なら水の中に浸かるのだから。しかし、ブレイブには水上歩行スキルがあり、また、ブロックの魔法を用いて水上どころか空中を駆け抜けていくこともできる。想定される問題を簡単にクリアしているのである。

 ブレイブは湿地帯を抜け、砂地、砂漠地帯に到達、その後廃墟となった街に良さそうな場所を探し、衝立の効果を確かめる実験を行う。ギリギリまで実験せず、使ったのち効果がない、ということになったら色々な意味で大変だ。


「……素通り?」

「今回は、かも。次に来るのが同じとは限らないし……下手をすれば、匂いとか感知するかも?」


 一回目に巡回で来るモンスターに関しては回避できたようだが、それ以降も同じとは限らない。そもそも、常に同じモンスターが来るとも限らない。以外に実証実験は難しい。また、その確認事態も難しい。幸いなことに、パティの存在が外にいるモンスターの推定に役立っているからこそ、実験できるともいえる。

 その後も、何度かモンスターの来報を待ち、チェックする。匂いに関してはパティの言った通り、感知されると危ないため、スキルによって対処、それ以外にも、気配の隠蔽スキルの作成など、モンスター対策のスキルを作る。特に、アクティブスキルではないパッシブスキルを。パッシブスキルはログアウト中でも作用するスキルだからである。最も、完全に有用なパッシブスキルは作ることができないのだが。


「今まで考えたことなかったなあ、そういうの」

「まあ、皆安全な場所でログアウトして、泊まり込むなんてしないもんね」


 基本的にプレイヤーは宿屋などの肉体が残らない場所でのログアウトが推奨されており、それに従ってログアウトしている。そうしていない場合の問題がいろいろと厄介なためだ。そのため、中々意図的に体を残してのログアウトをしたことのあるプレイヤーはいないだろう。偶然、というよりは、戻るに戻れずにフィールドでログアウトしてしまったプレイヤーはいるかもしれないが。

 なお、仲間のプレイヤーと共同で、時間外のログアウト後に残ったプレイヤーの肉体の確保か、監督を他のプレイヤーに頼み、守ると言うことも不可能ではない。そういった事を考えたプレイヤーもいないではないが、やはりその行動をとってくれるプレイヤーの確保が厄介なため、実行の難しさから現実に行われてはいない。


「……パティはどうなる?」

「え? 私が何?」

「いや、俺がログアウトしている間はパティってどうなんだ?」

「そりゃあ、私はスキルによって具現化しているわけだからね。残るよ」

「そっか……え? 残る?」


 パティの言い方では、スキルで具現化しているのだからプレイヤーがログアウトすれば消える、みたいな言い方に繋がるような言い方だが、実際にパティが言ったのは自身は残る、と言う内容だった。


「え? 残るの?」

「そうだよー。私、これでも独立している存在だからねー。一応使い魔だけど、NPCだし。そもそも、使い魔の召喚にはMP使わないでしょ? 呼ばれている間に消費されるわけでもないし。それは独立した私、と言う存在をここに呼んでいるから。だから、私自身がブレイブという存在があって初めて存在しているわけじゃないから、ここに残ることができるんだよ」

「……もしかして初めからパティに頼んでれば安全だったんじゃあ」


 パティも戦闘能力は高い。それならば、入ってきたモンスターに対しての対処くらいできるのでは、とブレイブは考える。しかし、その意見に対してパティから帰ってくるのは叱責の言葉であった。


「私の戦闘能力を考えなさい! まず、単独でモンスターの戦闘ができるほど私は強くないし、魔法だって、色々と使えるけど、強力な魔法はブレイブ持ちでしょ、基本!」

「……でも」

「でもじゃない! いい、ブレイブ。私が優秀なのは、私自身わかってる、自覚がある、自惚れでなく。でも、それは戦闘において優秀、というわけじゃない。私自身の戦闘能力は、ほぼ魔法、スキルだよりで、能力だけで見れば普通のプレイヤーよりもはるかに格下なの。MPや魔力は高いけど、HPやその他肉体依存の戦闘能力はからっきし。低い、とは言わないけど、初期のプレイヤーに毛が生えた程度。もし、モンスターに対し的確な対処ができなければ? 不意をついて襲われれば? 遠距離から狙撃攻撃されたら? 数の暴力には? 色々と考えられる、様々な問題の可能性はあるの。私を頼りにしてくれるのは嬉しいけど、私にできないことはいっぱいあるよ。だから、きちんとした対策、問題解決の方法は必要なの。わかる?」

「あ、はい、わかります……」


 怒涛の言葉攻めである。行っていることは間違っていないのかもしれないが、実にパティらしい自信に満ち溢れた判断内容だ。殊、自身を含めたステータス系統の分析に関してはパティの能力は極めて高い。


「……流石に頼り過ぎ、か」

「そうそう。私はブレイブの使い魔なんだから、しっかり運用してよね」

「その割にはいろいろと自分勝手すぎやしませんか?」


 視線を逸らすパティ。自覚はあるようである。

 さて、パティとの話し合いも終わり、再び実証実験を行い、自身の安全を何とかブレイブは確保することができた。試しに一度ログアウトするしかないのだが、やはり今までしたことがない試みということで、中々最後まで覚悟は決まらず、本当にここでいいのか、あちらの方がいいかもしれないと女々しく考えていた。最終的にパティに蹴り飛ばされて無理やりログアウトを迫られたが。








 ダンジョンの探索は本来一日で済まされるものではない。何故ならば、地図もなしに入り組んだ道を進み、出てくるモンスターを排除しつつ開拓する必要があるからだ。しかし、実際にブレイブはフマーレストの沖にある島のダンジョンを一日で攻略している。これは、そのダンジョンが水棲の魔物が多く、多くの道が水没し、いける道が限られていたと言うこと、そもそものダンジョンの大きさがそこまででないということ、雷系統の魔法を用いてモンスターに楽に対処できたと言うこと、パティの感知能力の賜物と、色々な好条件が重なったからである。

 しかし、土塔のダンジョンはそうはいかない。モンスターの強さという観点では、現在発見されているダンジョンの中では一番強い。また、周辺にいるモンスターも排除しなければ追ってくるため、ダンジョンに行くことすらも結構大変だ。しかも、ダンジョン内もダンジョン内でまた厳しい戦いになる。

 最初にこの近辺に来た時に判明していることだが、この辺りのモンスターは多くが亜竜である。最初に遭遇した中ボス、フィプリス山の坑道にいた大蜥蜴は、亜竜でこそないものの、近い性質があり、炎に強かった。ここに存在する亜竜もまた、同様である。水棲系の亜竜なら話はまた別なのだが。

 また、この近辺は砂漠地帯でもあり、乾燥、熱に強い。火に強い、とまではいわないが、火の持つ熱の性質に対しても強い。故に、ブレイブの得意とするファイアーボールなどはほぼ通用する相手ではない。仮にレベル九まで上昇していたスキルだとしても。そもそも初期スキルでもあるし。


「炎が効きにくいのはわかるけど、雷もか!」

「そもそも、有効属性少なすぎ!」


 そもそもからして、亜竜は全体的な属性耐性を持つ。ただし、極端に高いと言うわけではない。しかし、全てへの耐性は即ち弱点が存在しないことを意味する。つまり、ブレイブの魔法スキルは有効的な攻撃にはならないのである。それでも、一撃一撃が強力なため、倒すことができないわけではないが、効率という点ではやはり厳しい面がある。

 特に、ダンジョン攻略、先に進むと言う点においては、周囲のモンスターが襲ってくる状態ではおちおち先に進むのも難しい。最悪の場合、挟まれる危険もあるため、できるだけ残存モンスターを出さずに進みたいと考え、殲滅している状態だ。それがやりにくいとなると、やはり厳しい。


「何かいい案ある?」


 一掃後、少し休むブレイブとパティ。探索自体は順調に進んでいるが、ペースがかなり遅い。やはり敵の強さが相応に強いからだ。


「うーん……弱点がないっぽいんだよね、色々試しても」

「弱点がない……かあ」

「それだけならいいけど、耐性もあるっぽい。怯ませるにも、追い返すにも、有効なものがないから、大変だよ」

「追い返すのはちょっと」


 土塔のダンジョンは名前の通り、土でできた塔のダンジョンだ。どういう仕組みかはわからないが、周囲が土の壁でおおわれている。少し掘ってみたところ、塔を支えるのは大きな骨格として存在する支柱であるため、土壁を破壊すると崩れる、と言ったことにはならないだろう。最も、土壁を破壊すれば部分的に崩れる可能性はある。しかし、そんな土の壁、と言うのが意外に厄介で。そういった壁の中にひそんだり、場合によっては移動して壁を突き破って襲ってくるモンスターが少なくないのである。

 また、壁だけでなく床や天井に隠れ潜むモンスターもおり、目の前にいるモンスターだけを注意すればいいと言うわけではない。ブレイブにはパティがいるため、対処に問題がないのだが、普通のプレイヤーだったらさじを投げていたかもしれないレベルである。


「耐性……耐性かあ……耐性を貫通するスキル……」

「そういう、一方的に有利になるスキルはないよ。それなら耐性を気にする必要がない、ってほうがまだ」

「万能系……ああ、無属性とかはどうだろう?」

「無属性かあ……でも、例えばどんな? 無、ってのは難しいでしょ」

「ああ、確かに……属性がないスキル、って作れるかな」


 スキル談義になっている。現在ブレイブたちの持っているスキルで有効だとして使えるスキルがない以上、新しく開発するしかない。


「そうだね……スキルじゃないけど、例えばその鉄の杖で殴るのは、一般的な属性はないね。まあ、打撃とか斬撃の耐性はそれはそれであるけど」


 いわゆる物理攻撃と、魔法などのスキル攻撃は、属性的に違いが存在する。物理攻撃はいわゆる無属性攻撃だ。斬撃、打撃などの耐性は属性体制とは別でカウントされている。つまり、物理攻撃をスキルで発現させることができればそれが無属性攻撃スキルになるのである。


「物理攻撃……」

「スキルなのに物理攻撃って微妙に矛盾だよね」


 最も、作るのは不可能ではないが。と、言うことなのでブレイブとパティは物理攻撃魔法スキルという奇妙なスキルを作成することになった。苦心の末、生み出した仮想の剣を飛ばして突き刺す、みたいな攻撃魔法じみたスキルになったのだが。


「これ、魔法じゃないの?」

「魔法じゃないね。魔法スキルみたいに見えるけど」


 微妙に不安が残る形になったスキルだが、一応の作成は出来たので、それを利用しつつブレイブは先に進むことにした。


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