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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
skill maker
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 スキルメーカーにおいて、基本的に建物や森など、様々なものは破壊が可能である。しかし、同時に自動で修復される仕様でもある。例を挙げるのならば、ブレイブが破壊したボス部屋であったり、コッチーニであったりだ。流石にコッチーニが数分で完全に修復されるのは例外的な処置だが、ボス部屋を崩した時のように、ある程度の時間で修復、復帰されるのは当然のようにある、

 基本的に、物の修復はその物が破壊されるべきものかどうかが主となっており、例えば森の木々は破壊された場合、復活まで数日はかかる。逆に、ボス部屋のようなものは一日もかからない。

 さて、ブレイブたちは自分たちがログアウトしても問題ない拠点を探すのだが、それには壊すか、何かを置くなどで入り口を塞ぐ形で安全な場所を探す必要がある。壊すことで入り口をふさぐ、という手法自体は可能だが、時間で復帰する可能性について問題があるが、これはそもそもそういうことをする前提の場所である場合についてはまた別だ。一応、そういう場所は壊しても、普通に壊された場合と違って回復が遅かったり、自然回復しないケースも多い。壊す前提、壊して扱う物は最初の蜥蜴戦の時の鍾乳石の例もあり、前例としてありえないわけではない。あちらは戦闘で使う目的であるため、蜥蜴戦になると自動で復活する物だったりするが。


「……で、どれが壊して使える物なの?」

「私にわかるわけないでしょー」


 ブレイブたちが廃墟まで訪れ、拠点にできそうな場所を探している。探してはいるものの、そもそも拠点にできそうな場所はあるが、壊して入り口をふさげそうな場所、と言うのがあまりない。仮にあっても、他に侵入口があったりで、あまり意味がないケースも多い。ブレイブがパティに訊ねたのは探してもなかなか見つからないからだ。

 パティは今まで残してきた結果として、万能で何でも分かる、みたいにブレイブは半ば思っている状態だ。実際はそんなことはない。パティは独自の手法で知識こそ豊富にあるが、そういうものを判断できる能力はないのである。ブレイブに多くのスキルを作ってもらい、譲渡されて、それをスキルレベル上げのために無駄に使用しているところはあったりするが。


「本当に?」

「だから無理だって。そういうスキルを……作れないなー。残念ながら」


 スキルでも、そういうものを調べる系統のスキルはない。せいぜいが、壊れやすい場所を発見しやすいスキルとか、そういうものくらいだろう。


「やっぱり、一度戻って何か作ってもらうのが一番じゃない?」

「そうだな……でも、何を作ってもらう?」

「衝立とか? あんまり弱いと突破されちゃうから……金属製じゃないとだめかなー」


 仮に入り口をふさいでも、モンスターが突破してくる可能性は低くない。基本的にモンスターは自分で思考できるほど細かいAIではない。NPCでいうノーマルAIやアクションAIだ。故に、ある程度設定されたルーチンで行動する。巡回場所に物が存在し、移動できない場合はそのものを破壊して先に進む、など。迂回するとか、いけないならあきらめるとか、そういう思考はない。AIが優秀なものでないからこその反応だろう。


「金属……」

「アメリアちゃんに頼もうか」

「そうなるかなー」


 現在アメリアはアイアンロンドで修行中の身だ。ちなみに、ブレイブはまだ分かれて数日である。微妙に気まずい状況ではないだろうか。


「……まあ、連絡くらいはしてみるか」

「その前に、いったん戻ろ? ここでのんびり念話できる程安全じゃないし」


 廃墟は廃墟で拠点のように、安全に会話できる場所ではない。パティがいるため、敵が来ればわかるのだが、会話中に襲われると大変だろう。


「そうだな……また戻るのか」


 時間に余裕がある中で戻るのも、とは思う所があるだろう。最も、ここでのんびりしていても意味はない。戻るのは戻るので時間もかかるし、道中のこともあってなかなか大変だったが、コッチーニまでなんとか戻るブレイブであった。実は死に戻りする手法があったりするのだが。








「"えっと、アメリア、今大丈夫?"」

"……ブレイブさん? 大丈夫……大丈夫ッスけど……いきなり何ッスか?"


 最初にすこしだけ素で会話しそうになるが、すぐにロールプレイのキャラを被るアメリア。NPC相手で、普段プレイヤーのいない場所では素で話すようである。


「"頼みたいことがあるんだけど、いいかな?"」

"全然問題ないッスよ。ブレイブさんにはお世話になったッスから。ただ、今アイアンロンドで修行の身なんで、あたしのところまで来てくれないとどうしようもないッス"

「"じゃあ、先にやることだけでも頼んでいい? 流石に移動に時間がかかるし、今頼んでおけば行くまでに作れそうだし"」

"その様子だと、杖のことじゃないッスね。何作ってほしいッスか? あ、お金なら気にしなくていいッスよ。この鍛冶修行できる場所を教えてくれたお礼ッス。これだけだとまだ全然足りないッスけどね"


 アメリアの感謝の気持ちは大きい。素が出た時に言ったことがそのまま感謝の気持ちに全振りである。それだけ、アイアンロンドでの鍛冶修行を行えたことは彼女にとっては大きいことだ。


「"衝立……建物の、扉をふさいで誰も通れなくするようなもの、かな?"」

"……難しいッスね。だいたい、どの程度の力を想定してるッスか?"

「"……えっと、最初のボスの蜥蜴くらい?"」

"またきつい注文を……いえ、やるッスけど"


 実際はもっと強いほうがいいだろう。あの時、圧倒的な強者であった蜥蜴は今のブレイブならば楽に倒せる相手だ。土塔のダンジョンの側のモンスターも倒すだけなら同じくらいなので分かりづらい話だが。ちなみに、ダンジョンの側のモンスターの方が中ボスをやっていた蜥蜴よりも強い。流石に第四の街に向かう途中の中ボスと比べると、あちらの中ボスの方が強いのだが。


「"じゃあ、お願い"」

"任されたッス……と言っても、修行の合間になるんで、できていないかもッスから、その時はこっちで待つッスよ"」

「"了解"」


 アメリアとの会話はそれで終わり、ブレイブはマッフェロイを目指す。アーテッドからハーティア森林、エメンリア、ニアーズレイを経由していくのでは、と思われるところだが、ブレイブはまだ行っていない場所がある。


「こっちに来るってことは、隠しみち、テイルロマジアに行くつもりー?」

「そうだよ。まだ行ってないし。北方のダンジョンもまだだけど……あっちはリュージ達が攻略中みたいだし、後にする」


 現在、スキルメーカーで発見されているダンジョンは、フマーレストの沖にある島のダンジョン、北方、北エリアの、三つの街に繋がる四辻の道の北の先に存在する最北のダンジョン、そして、ブレイブの到達した土塔のダンジョンである。フマーレスト沖のダンジョンは、最初から行くことができる場所であるため、モンスターの強さ、攻略難度が低く、何人かがすでにクリア済み、ブレイブもクリア済みだ。そして、未だに見つかっていないブレイブの攻略予定である土塔のダンジョンは、最大難易度であることが予想できる。最北のダンジョンは、今リュージも含めた何人かの攻略グループが攻略中だ。

 誰かが攻略中のところを無理に攻略する、というのは別に構わない話ではある。ダンジョン攻略は自由だ。しかし、リュージ達が先に攻略しているのであるならば、一緒に攻略しよう、という気にもなるが、最初から一緒ならばともかく途中からの参加は遠慮がある。リュージは気にしないと思われるが、ブレイブが気にするのである。故に、ブレイブの選択は土塔のダンジョンの攻略である。

 どうでもいい話だが、この三つのダンジョンをつなぐと正三角形になる。明らかに意図的な配置だ。


「……えっと、近道の方でいいかな」

「以前攻略済みでしょ……あ、でも、複数じゃないとだめなんだっけ?」

「まあ、出てきたら殲滅しよう。今更だし」


 流石にエムラント山林に出てくる亜人ごときで躓いたりはしない。ここに出てくる亜人集団は、第五の街の途中の中ボス戦よりも下なのである。ブレイブはその中ボス相手に一方的な殲滅を果たしている。

 哀れなことに、ブレイブの強さを知らない亜人は、たった一人、パティを含めても二人で近道、亜人の集落そばを通ろうとするプレイヤーを発見し、大集団で襲おうとする。そして、ブレイブの魔法で殲滅されるのであった。


「あ、ファイアーボールのレベル最大になった」

「おめでとう! 何度も言うけど、もっと別のスキルも使おうね! 流石に使いすぎだってば!」


 初のレベル九のスキルである。これでいいのか大いに疑問があるところだが。


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