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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
skill maker
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「経験値をエネルギーとするスキル? MPの代わりに?」

「ああ。単純に物とかよりも、経験値はエネルギー寄りだろう? ゲージ的に」


 ステータス上では経験値ゲージのようなものはなく、次のレベルまで必要な経験値は、みたいなスラッシュで区切られて表示されているのだが。しかし、目に見えて存在する物ではなく、モンスターを倒すときに得られる特殊なエネルギーと考えれば確かに経験値はエネルギーと言ってもいいかもしれない。問題は、それが実行可能かどうかだが。


「うーん、確かに考えとしては面白いけど……でも、どうしてその発想に?」

「経験値はレベルを上げる。レベルとは何か、という考えが前から時々あるんだよ」

「レベルって……そのまま、力量でいいじゃないの?」


 ゲームにおいて、良く使われているが、本来は英語で『水準』である。つまり、ゲームにおいて強さを表す水準ということだろう。そう考えれば、パティの言う力量も意味合い的には近いと言っていい。


「そうなんだけど……一般的に、体を鍛えて強くなる、勉強して頭がよくなる、精神鍛錬で精神を上げる。そういう、鍛えて強くなるのが普通だろ? それが経験値を得てレベルが上がることで強くなる、っていうのは変じゃないかな?」

「経験値、はそのまま経験を数値化したものでしょ? 物事を経験して強くなるなら可笑しくはないでしょ」

「でも、経験値によるレベルアップは普遍的。例えば、物理攻撃で戦い続けて経験値を得ているのに、精神や魔力が上がるのは変だと思う。精神はまだしも、魔力なんかは特に」

「確かに変と言えば変かもしれないけど……」

「それで、こう考えた。レベルアップは、一種のバフであると」


 バフとは、主に魔法によるステータスの上昇や良い効果のこと。今回であれば、ステータスの上昇のことだ。


「ちょっとそれは突飛すぎる発想かなー」

「そう? それで、レベルアップはバフだけど、それも永続的なバフ。そう考えると、レベルアップに使う経験値は、永続的なステータス上昇を行うエネルギー、と考えることができるんじゃないか、という発想に至った」


 パティの言う通り、ブレイブの発想はかなり突飛的だろう。そんなことを考える、考えつくプレイヤーはどれだけこの世界にいるだろうか。もしかしたら、ブレイブ一人だけ、と言うくらいかもしれない。少なくとも、スキルメーカーに同じ発想のプレイヤーは他にいない。

 そして、それだからこそ、誰しも思いつかないようなスキルを作成することができる可能性があると言うことでもある。


「……考えとしては、面白いね。だけど、問題は別のところにあるよ。仮に、スキルで経験値を消費するスキルでも作るとしても、ステータスに組み込まれている経験値は変動させることができない。スキルメーカーにはデスペナもないし」

「そこは外部に保管すればいい」

「それは無理。前にも言ったかもしれないけど、外部保管の類はスキルとかじゃ無理。物を作るにしても、経験値なんていうそれこそ本気でシステム側の物に手を出すのは不可能だよ?」


 これがMPとか、HPならば、まだその手の材質の物に溶かし込む、流し込むみたいな手法が使えるが、経験値はそれこそ普通に扱うことのできない完全なシステムよりの数値である。そんなものをどうにかできるはずはない。ただし、それはステータスに組み込まれた経験値に関して、の話だ。


「だからこそ、パティの助けがいる」

「……どういうこと?」

「パティは使い魔だけど、NPCだ。しかし、レベルは存在しない。その特異性を利用する」


 パティが目をぱちくりとさせる。そして、手を口元にあてて考え始める。


「……私はNPC扱い、使い魔になるときにレベルが上昇しなくなる。それにより、経験値を必要としないけど……確かに、NPCとして、経験値を溜めることはできる……」


 そうしてパティは自分の中で答えに行きつく。それがブレイブと全く同じかはともかく、ほぼ似たような結論だろう。


「本来自分にいきわたる経験値を私に分割、そして私にたまった経験値を利用する手法、かな? 確かに、それならレベルの上昇に組み込まれない経験値を、NPCの器である私にため込むことができる。使い魔である私なら、スキルを利用して経験値を引き出すことも不可能じゃない。確かに、それならなんとかできる可能性はある。それにしても…………変なこと考えるねー。スキル作ってみないと分からないけど、やるだけやってみたら? スキル作成はタダだし」

「そうするよ。でも、できた場合、パティに負担がかかったりはしないか?」

「心配してくれるの? 大丈夫だよー。使い魔っていうのは、ある程度そういう負担を背負うものだから。それに、それくらいなら負担にもならないしねー」

「そうか……」


 そういう感じで、スキル作成が行われた。結果、ある程度完璧にできたわけでないものの、経験値をため込み、それを利用するスキル体制がブレイブとパティの間でできあがったのであった。








 経験値を利用したスキル、経験値はモンスターを倒せば制限なく手に入る。ただ、経験値は分割、半分しか入らなくなる。また、ため込むエネルギーとしての経験値も、得られる経験値の半分だ。この経験値の分割は取捨選択できない。良く作れたものだと思うスキルだが、このスキルはユニークスキルに指定されている。当然と言えば当然だろう。先のコッチーニに行ったブレイブの魔法を考えれば、このスキルをすべてのプレイヤーが取得できるようになれば、ゲームバランスが完全に崩壊してしまう。実際のところ、現状のブレイブがスキルを持っている時点で崩壊しかねないのだが。

 この経験値はMPに換算すればどの程度なのか、は具体的には不明である。ただ、このスキルの基準となるのは、やはり同じ経験値である。つまり、ある経験値を持つモンスター相手に、そのモンスターを一撃で倒せる魔法を放つのに必要な経験値は、そのモンスターから得られる経験値度同じ、ということになる。つまり、経験値さえ貯めればどんなボスモンスターでも、イベントボスでも一撃で倒せる可能性がある、と言うことだ。ただし、経験値は半分のみエネルギーとして保管されるため、二体で一体分という微妙な大変さがある。

 それでも、破格と言えるエネルギー効率だろう。例えば、最大の攻撃魔法を五発で倒せるモンスターを二体倒せば使える、となると、最大の攻撃魔法十発分がそのモンスターから得られる経験値で放てると言うことになる。その代わり、プレイヤーレベルが上がるのが半分の効率になるのだが。レベルの上昇を犠牲にする、と考えると、エネルギー効率が良くてもスキルとして優秀なのか、いいものなのかは不明なところだ。


「しっかし……」


 先ほどまで、焼け野原、消し飛んで何もなくなっていたコッチーニ跡地。しかし、それはボス部屋と同じ、自然に回復するものとなっている。VRゲームの中には、一から街を作らなければならないこともあるが、スキルメーカーにおいてはこの手の破損、壊滅状態は自動で回復するようになっている。実にゲーム的だ。しかし、完全に焼け野原の状態から数分で完全に街の状態が戻る、となると微妙な不気味さと自分のしたことの意味に苛まれるブレイブであった。


「それより、ほら、コッチーニ行くよ」

「ああ……」


 ブレイブが今回コッチーニまで来た理由は三つだ。

 まず最初に、経験値のエネルギー使用により使える超攻撃力の魔法の運用実験。それを、コッチーニで試したのが今回行ったことだ。使用自体は、今までもフマーレストの沖のボス部屋や、アルイヌイット東の廃坑道などで使ってはいるものの、本当の意味で超高範囲の長威力の魔法は使っていない。実際に使用し、どれほどのことができるかの調査、と言うのがコッチーニまで来た理由である。よって、コッチーニの奪還自体はこの手法においてはついで、なのだ。

 次に、コッチーニを奪還すること、コッチーニをプレイヤー側の街にすること、が二つ目の理由だ。少し前に奪還自体は次いで、とか書いているのにどういうことだ、と思うかもしれないが、先の魔法でコッチーニを奪還できるかは不明だったため、ついでなのである。あの一撃でどの程度消し飛ぶか、ブレイブとパティには不明だったのだから。もしコッチーニをあの一撃で奪還できなくでも、何度か同じのぶち込むか、残った奴らを始末するつもりではあった。しかし、あの一撃で消し飛んだため、それをする必要がなかったと言うだけである。

 さて、何故コッチーニを奪還する必要があったのか。その理由が、コッチーニで復活できるようにすることである。いつぞやの死に戻りの時のように、コッチーニで復活できないと面倒だから、ということだ。ログアウトの問題もある。

 三つ目の理由。最後の理由は、コッチーニ南の湿地帯に用事があるからだ。サイに対するリベンジではない。その南、コッチーニの湿地帯の先に行くのがブレイブの目的だ。コッチーニ南の湿地帯の先は、まだプレイヤーの到達していないエリアだ。何があるか不明、どんなモンスターがいるかも不明。そんな場所に、挑戦しに行くのが目的だ。

 ちなみに、何故攻略されていないかと言うと、サイによる妨害で先に進めず、西の方を攻略しているうちに防衛戦が起き、コッチーニが奪われたことで南に行くのがかなり難しくなったため、である。ちなみにこの湿地帯の先は、コッチーニ侵攻の時のモンスターが攻めてきた方向でもある。


「……宿屋で一度泊まってすぐ出ないといけないのは微妙だなあ」

「街に入るだけでも別に問題ないはずだけど?」

「いや、なんとなくそれで最終地点扱いはなあ……気分的な問題だよ」


 面倒でも、ロールプレイと言うか、ある種のスタンスは各プレイヤーにはあったりする。


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