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二度目の竜との戦闘、今回はセリアを抱えて飛んでみたが、全然ダメだった。

そもそも、戦闘するセリアの視点と自分の支店は違うし、その行動意識も全く違う。

では自分が地面にいる状態でセリアのみを行かせればよかったかというと、それも恐らく違うだろう。

セリアの行動のタイミング、やりたいことなどがつかめない。まだ抱えて飛んだ場合のほうが、同じ位置にいる分何をすればいいかわかる。

だが、一番の問題はそこではない。


「セリアはループしないのがなぁ」


セリアはループしない。これは当たり前のことではあるが、これが一番の問題だ。

毎回セリアと特訓しなければならない。別にセリアの戦闘技術を磨く必然性はないので、それを無視すればいい話だ。

だが、やるのとやらないのでは相応に戦闘能力が違ってくる。これは大きな影響を与える要素だ。

できればやっておきたいのだが、それをやっているとその分竜との戦闘に割く時間が減る。


「どうしたものかな……パティはどう思う?」


自分では妙案は思いつかないが、パティならば思いつくかもしれない。そう思い尋ねてみる。


『え? なんで私に聞くの?』

「いや、相談できるのはパティだけだろ」

『そういうことじゃなくて……スィゼならもう思いついてると思ったけど、そうじゃないの?』

「え? どういうことだよ」


もう思いついてる。何故パティはそう思うのだろうか。 

そう思っているとパティが実体化する。


「んー、やっぱり思いついてない?」

「思いついてないから聞くんだろ?」

「でも、私を作ったのはスィゼなんだから、発想はあるはずなんだよ」


パティを作った? それがどう関係あるのだろうか。


「私から言うのはフェアじゃないけど……ま、いっか。あのね、セリアちゃんを私と同じにすればいいんだよ」

「……え?」


パティはいったい何を言っているのだろうか。


「人を使い魔化? 流石にそれは……」

「正確には使い魔にするんじゃなくて、精神を拘束するの。ちょっと言い方違う。束縛……いや、契約? まあ、使い魔化と似た感じだからもう使い魔でいいけど」

「いや、そういうことじゃなくて。人の精神をどうこうするのはよくないだろ?」

「あー、一般的な倫理観ってやつ? 別に気にする必要はないと思うよ? セリアちゃんなら何でも受け入れてくれるでしょ?」

「…………」


確かにセリアは何でもしていい、とは言うが。だからと言って実際に何でもできるか、というとそうではないだろう。

パティの案自体は問題を解決するために確かに悪くないとは思う。できるかどうかは別にしてだ。


「でも、精神だけ持ってきても仕方ないだろ?」

「それは行った先でのセリアちゃんの体に移せばいいんだよ。契約はそのままだけど」

「いや、それも問題だろ……」

「何が? こっちのセリアちゃんも、今までと同じで何でもしていい、っていうだろうから問題はないと思うけど」

「…………」


つまり、問題は倫理観。自分がどうしたいか、だ。セリアに対してそうすることを、受け入れられるのか。


「…………契約はどうやる? そもそもできないなら考える意味はないだろ」

「それは私が作るよ。そもそも、私は闇属性の使い魔。精神関連の魔術は専門でしょ」


パティが魔術を作れる、というのはそもそも想定してはいない。そもそも、パティの能力は思考と記憶だ。

だが、思考できるのであれば魔術を作るのは不可能ではないだろう。


「わかった。正直、あまりそういった形でセリアをどうこうはしたくないんだけどな…」

「むしろセリアちゃんはウェルカム、ってかんじだろうけどね」







セリアに勝利し、今までと同じ、自分預かりになった。例の契約について話す。

いや、そもそもこの契約についての話をするのであれば、自身の状況、ループについてから、今までのことを話した。

特に表情を変えることなく聞いている。そしてセリアに対する契約についても話す。


「つまり……どういうこと?」

「私が説明するよー」

「わっ! びっくりした」


流石に何もないところから現れたパティにはセリアも驚く。


「えっとね、ループする際にスィゼは過去に行くの。その際、その精神に属する存在も一緒に引っ張られて過去に行っちゃうんだよ。それで、その精神に属するっていうのは、私みたいに使い魔だったりする存在なわけね。それで、セリアちゃんを過去に連れていきたい場合、セリアちゃんも私と同じようにスィゼと精神か魂に関する結びつきが必要なの。それをするために契約するってこと」

「よくわかんない。もうちょっと簡単に言って」

「スィゼとずっと一緒にいたいなら契約すればいいよ」

「わかった! 契約するね!」


ちょっと待て! それでいいのか! 


「セリア……もう少し悩んだりとかしないのか」

「何を悩むの? 私の全部はスィゼにあげたんだから何も問題ないよ」

「…………」


セリアがそれでいいというのなら別にいいのだが。だが正直腑に落ちない。納得いかない。


「スィゼは悩みすぎなんだよー。あんまり気にしてるとハゲるよ?」


ハゲない。


「でも、過去に戻った後、セリアは精神だけだろ? 精神を入れる器にはそのループでのセリアの体になるけどいいのか?」

「何が問題なの?」

「いや、何がって……」

「私なら……それが私と同じ私なら、自分に勝ったスィゼの言うことなら、たとえ自分が死ぬことでも受け入れるよ」

「ちなみに、別に向こうのセリアちゃんが死んだりしないよ。融合するだけだからね」


それは死んだのと違うのはわかるが、差異はあまりないような気もするが。








「それじゃあ、契約開始するよー」


そう言ってパティが座っているセリアの前に立つ。


「スィゼのためだから抵抗しないでねー」

「うん」


ピタっ、と止まっているセリアにパティが近寄り、頭のあたりに手を触れる。


「よっ!」


すぽん、と音はしなかった。しなかったが、セリアの精神体らしきものがパティの手につかまって体から引っこ抜かれた。


「え……?」

「契約……首輪、鎖、術式、んーっと、あとはがんじがらめにして……」


ぱぱぱ、とパティがセリアの精神にいろいろとする。あまり見た目的によろしくない。


「こっちの鎖を……棘っと。スィゼー」

「……どうした?」

「とお!」

「ぎゃあ!?」


何か刺された! 痛くないけど何か刺された!


「これでしゅーりょー。あとは精神体をセリアちゃんに戻すね」


すぽん、とセリアの精神体を体に収める。今までいろいろ見えていた鎖やらはその瞬間にすべて見えなくなった」


「……これで終わりか?」


セリアの様子を確認しているが、寝ているか気絶しているか、といった感じなようだ。とりあえず休ませておく。


「終わりだよー。でも、成功しているかはまだわかんないけどね」

「次になればわかる……か。次がないほうがいいんだけどな」


だが、それが難しいのはこの契約をすることを選択した時点で分かっている。なんとかしたいものだ。

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