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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
skill maker
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49

「……完全にふさがれてる。退かせるかな」

「無理かなー。これ、封印だよ、封印。普通に退かそうとしても退かせないね」


 ブレイブの目の前にある、道をふさぐ岩のようなもの。坑道いっぱいにぎっちりと収まっているそれは、明らかに普通の鉱物反応とは違う反応を持っているようだ。それをパティが感知した結果、ここまで来れたのである。

 そもそも、この坑道もある程度大きさは一定とはいえ、ここまでぎっちりみっちり、壁に張り付くように収まっている岩を運んでくることは無理だろう。やろうとするのであれば、壁をすり減らしながらでないとここまで持ってくることはできない。加工してこの形にする、と言ってもこの内部での加工でもはめ込めるサイズに加工できるはずもない。魔法などの、特殊な方法を用いたと考えていいだろう。


「じゃあどうやって通る?」

「壊す。破壊すればいいだけだよ。封印である以上、解く方法はあると思うけど、そんなもの探しても仕方ないし」


 暴論だ。しかし、鍵がかかっている扉の前まで来た後、どこにあるかわからない、形も不明な鍵を探すよりは鍵や扉を壊した方が速いのは確かに事実だろう。もしこれが、空間的な異常を用いた方法であったりするのならばともかく、物理的に封じたものであるのならば、破壊という手段で押し通ることができる。


「スキル……うーん、土? それよりはやっぱり、破壊力の高いほうが……」

「壊すと破片が飛ぶし、もうちょっと穏便な……削り取る、穿孔系のものとか……」


 ブレイブはパティと相談し、この封印を突破するのに使う能力を決める。狭い場所である以上、広範囲高威力の爆発系の攻撃は使えないし、岩を破壊する方法では破片により、ブレイブが危険なことになる可能性もある。最終的に、熱量、レーザーを用いて溶解蒸発させる手法をとることに決めたようだ。それはそれで危ないと思うのだが。

 道に直線になるように、封印の岩の中央部に狙いをつけられるようにしながら後ろに移動する。少し距離を開け、壁に背がぶつかる。離れられる距離の限界まで来たようだ。


「まだちょっと不安はあるけど……スキル使った後、こっちで風を使って来ないようにしようかな」

「頼む…………よし、行くぞ」


 レーザー。ゲーム、漫画、多くの作品において存在するものだが、それを出すとなると結構イメージは難しい。光線、熱量の収束、もしくは指向性を持つ火の柱。ブレイブとパティの相談の結果、光と熱量を収束させた光線を撃ちだすもの、という結果だが、ブレイブの得意魔法は火なので、そちらのイメージに傾きかねない。スキルはイメージを反映する。意外にイメージを完全に一致させてスキルを使うのは難しいのである。


「レーザーカノン!」


 多くの創作によるイメージ、それによる光線のイメージもあったからか、上手く使用できたようだ。手から出た光線は封印の岩を貫き、穴を穿つ。触れた部分の溶解、蒸発。そして、蒸発した気体化した岩は光線にのまれ奥の方へと消えていく。一部がブレイブの側に漏れてくるが、それはパティが風の魔法を使い対処する。そして、光線は徐々に太くなり、穴もそれに伴い広がる。そうして、太くなるのが停止し、少ししてから光は消える。


「……これやばくない?」

「消費を考えてみたら? どれくらい使ってるか」

「……あんまり使えないなあ」


 威力だけで見れば、今まで使ってきたスキルの中では一番強い……と言えるかどうかはわからないが、少なくとも最上位ともいえる強さだ。岩を融解蒸発できるような一撃ならば、竜の体すらも焼くことができるだろう。少しの時間、鱗で防がれるだろうが。


「でも、これで先に進めるね!」

「……ま、そうだな。流石に封印されているこの先にモンスターはいない……よな?」

「うん、モンスターは感知できないよ」


 パティの魔力感知の結果、モンスターはいないようである。少なくとも、ブレイブのいた側、アルイヌイット側からは封印されていたのだからモンスターが入る余地はないだろう。


「それじゃあ、先に行こうか」


 流石に融解してすぐにはいけないので、熱量が収まるまで待ってから先へと向かう。そうして、ブレイブはアルイヌイット東に存在する廃坑道を突破した。


「止まれ! 貴様は何者だ!」

「怪しい奴め!」


 行動から出てすぐに、槍を構えた髭の立派な、少々小柄な亜人に囲まれたが。








「敵、いないんじゃなかったの?」

「モンスターはいないっていったと思うけど? そもそも、ここの亜人は敵じゃないはずだけど」


 明確なモンスターとしての亜人、はエムラント山林にいる亜人や、マッフェロイ道中にいる野良亜人、あとは第五の街に行く途中に出てくる中ボスの水棲亜人くらい、と今のところ言われている。北側にあるらしい亜人の街に、モンスターに等しい亜人がいるかどうかは完全には不明だ。

 ちなみに、現状判明している亜人の街は、アーテッドの西にある森、ハーティア森林にいるエルフ、彼らの住む……街というよりは村が一つ目、そこから進んだ先にある犬猫の動物系亜人の住む街が二つ目だ。つまりは、今ブレイブの来たこの場所は三つ目に発見された亜人の街、ということになる。しかも、今まで見られていないドワーフだ。


「お前たちはそのままにしていなさい」


 槍を構えたドワーフはどのドワーフも似たような鎧姿だが、その中で一人だけ少し意匠の違う鎧を来たドワーフが出てきた。他のドワーフは特に返事もせず、槍を構えたままブレイブを囲み、動きを止める。どうやら、声をかけてきたドワーフ以外はNPC……ノーマルAIのようだ。


「……初めまして、人間の客人よ。いや、この場合はプレイヤーと言ったほうがよろしいか?」

「……まあ、どちらでもいいです。いきなり囲まれているんだけど、これはいったい?」

「貴殿が敵か味方か不明だったからだ。坑道から光の柱が我々の施した封印を突き破って現れた、という報告が封印を監視している部下からあったものだからな。封印を突き破ると言う手荒な方法だから、危険な相手である可能性もあったのだ」

「……そりゃそうか」


 手荒な手段で無理やり突破してくる以上、安全とは思えなくても仕方がない。最も、だからと言って囲んで対処できるかは怪しい所だが。それでもやらなければいけないのが彼らの仕事である。


「でも、封印を抜ける以外の手段だと、アーテッド側……ここより東の方からくる以外の手段はないし。無理やり以外にここに来る方法があったなら、聞きたいんだけど」

「……そんな方法はない。しかし、東からも来れるのだから、そちらから来ればいいだろう。人間の住む場所では回り道になるかもしれないが」

「そもそも、コッチーニに行きたいんだよ。えっと、地名はわかる?」

「ああ。アーテッドの南にある街の事だろう。流石に地図上に存在する街の事は理解している。」


 北側に存在する街は、山脈を境界線として明確に別エリアだが、ハーティア森林に住むエルフを通じて情報が回っている。ちなみに、エルフ側の情報はアーテッド側から得ているものだ。もちろん、その中には地理情報もある。

 しかし、情報伝達は行われている者の、時事情報の伝達はほとんど行われていない。また、コッチーニ陥落はかなり最近のことで、以前の情報伝達はその出来事以前のことだ。結構重要な情報だが、そういった情報であっても北側のエリアでは情報伝達速度が遅い。


「コッチーニが陥落したことは? それにより、エムラント山林の亜人がコッチーニ側からのモンスターの進行を防いでいるために、エムラント山林は通行不可能で、行きたくもいけないんだよ」

「む……! そうか、そんなことになっていたのか……全く、エルフどもめ。いつも情報が遅い」


 エルフとドワーフの対立が作品によって存在することもあるが、スキルメーカーにおいては特に存在しない。エルフの情報が遅いのは単にエルフ自身がのんびりとした精神性を持っているからである。それ以外にも、北側は元々各街の連携というものが薄く、活発な連絡を行わないせいでもある。


「それを知っていれば、封印を解いてこちらから話をする可能性も……いや、ないな」


 ドワーフはドワーフで、自分たちの主義、趣味以外の事にはあまり興味がない性質である。それゆえに、人間側からの過干渉を嫌った結果、封印の岩を置いて来れないようにしたのだ。


「ところで、いつまでこのままで?」

「ああ……そうだな。お前たち、もう持ち場に戻ってよい。この者とは私が話をする」


 そうブレイブと話しているドワーフが周りを囲っているドワーフに言うと、全員が同じ方向に戻っていく。動きまで一致していて、見ている側としては少々気味が悪く感じるかもしれない。


「……融通が利かぬのが欠点だな。貴殿もそう思わぬか?」

「いやあ、それをプレイヤーである俺に言われても……」

「彼らはちゃんと命令を順守するんだから、言い方の問題でしょ。せめてアクションAIの部下でも連れてくればよかったのに」

「む? 何ものだ? プレイヤーではないようだが」


 突然の声にドワーフが反応する。ぴょこん、とブレイブの陰に隠れていたパティが顔を出す。


「使い魔のパティ。名前、まだ来てないよ、エクストラAIのドワーフさん」

「ああ、失礼した。私はガルファと言う。貴殿の名も教えてもらいたいのだが」

「俺はブレイブ。えっと、街に行きたいんだけど、案内いいかな」

「構わない。貴殿が本当に安全かどうか、監視がてら案内させてもらおう。どうせすぐにたどり着ける場所にある」


 ガルファを案内役にし、ブレイブは亜人の街、第四番目の街"アイアンロンド"に到達した。ブレイブとしては、ここはあくまで通過点でしかないのだが。それとほぼ同時刻、北のエリアの南側、場所にして、マッフェロイから北北西、具体的に言えば、ペディアに向かう途中の横道にそれた先の山に存在する、妖術による隠し道を抜けた先、そこに存在する第三の亜人の街、妖狐の街"テイルロマジア"にプレイヤー到達の報告が掲示板に上がった。これで北側のエリアに存在する亜人の街はすべて網羅された形になる。ちなみに、最北エリアもあるが、最北エリアはダンジョンが存在するだけだ。


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