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翌日。ログインしてすぐにボス部屋に再直行し、今度は部屋を破壊せずにボスを倒し、ブレイブは迷宮から出る。
「リベンジ完了したー」
「まさかボス部屋壊れるなんて思わなかったよねー」
はふう、と大きく息を吐く二人。最初の時に使った魔法スキルが強力過ぎたせいによる破壊であるため、どの程度であれば部屋を破壊しない威力のスキルか、をある程度確認しつつ行ったため、気苦労の方が大きかったようだ。
そもそも、部屋を破壊するような大規模スキルを使わず、威力が高い、より狭く小さい魔法スキルを作り使えばいいだけなのだが。威力が高いとはつまり広範囲、大規模破壊の魔法という考え方がそもそも間違いだと気づくべきだろう。
最も、普通よりもはるかに強固であるボス部屋が崩れ落ちる程のスキルを使われるとは運営側も予想をしていなかっただろう。フィプリス坑道では鍾乳石を落とすなど、部分的な破壊は出来るが、それはそうい仕組みであったからであり、普通は部屋を破壊するようなことは出来ないのだが。
「……さて、ボスを倒したのはいいけど、どうしよう」
素材も取り、攻略を終えたのだが、そもそもここのダンジョンは根本的に先に進むのに関係のない場所である。実力試しの高難易度の迷宮と行った所だろう。つまり、ここを攻略しても、実力を試す意味合いや、素材回収位の役割しかない。ある種の行き止まりである。
「北に行く? フィルマちゃんに話してたところ」
「うーん……それでもいいと言えばいいんだけど……」
そう言いながら、ブレイブは東の方を見ている。
「……ここ真っ直ぐ言って、コッチーニ方面いけるかな?」
「え? 行けるわけないじゃん。ばかじゃないの?」
「酷い。いや、水上歩行スキルを使ってさあ……」
「もう一度言うよ、ばかじゃないの?」
マッフェロイからコッチーニに行くにはエムラント山林を通らないといけない。しかし、海上を通っていくのであれば、話は違うのではないか、そう思いブレイブは提案するが、パティは真っ向から否定する。
「いい。そもそも、水上歩行スキルで歩けるっていっても、海の上には波もあるし、海流の流れで水の動きもある。湖とか、湿地帯とかそういう所とは違うの。激流の上を水上歩行で歩くにはレベルが全然足りてないよ? それ以前に、海にはたくさんモンスターがいるの。サメとか、鮫とか、シャークとか」
「鮫ばかりじゃないか……」
「だってイメージしやすいじゃん。実際、鮫モンスター多いし。鮪とか、鰯とかモンスターにしても格好つかないでしょ。マンボウとか、鯨ならいるだろうけど。それはいいとして、海は障害物がない以上、モンスターだって海上にいる存在をみたら襲いやすいし、壁のようなものだってないんだよ? 下から襲ってくるからわかりにくいしさ。私の近くがあっても、流石に水の中はきついよ?」
「うーん……だめか……」
「だいたい、どれくらい歩くつもり? まっすぐ行っても、陸地は確実にマッフェロイに行くよりも遠いと思うよ、ここからだと。時間的な問題が出るでしょ」
「確かに……ってことは、やっぱり普通に行けるところを探すしかないのか」
海を進むことをあきらめ、やはり別の道を見つけるしかないと言う結論にブレイブは達する。流石に使い魔に指摘される程度には粗が多い内容だった。
「山越えとかは……」
「それができるのは、本当の意味で荒山を登れる人。山っていうか、崖っていうか。いわゆる登山道じゃないタイプの山登りだね」
登山道、として存在しているのがエムラント山林である。それ以外の部分は険しい山々であり、それこそ、崖だ。そこまで極端でないにしろ、碌に歩いていけるような場所ではない。強力なモンスターも配置されており、普通には登れないようにされているのである。基本的に地図上で山脈地帯とされている部分はそういう風にされている。それにより、山越えで北側に行けないようにされているのだ。
「ふーむ……」
「……いっそ、封鎖されている坑道をどうにかする、ってのもありかもね」
「え? でも、向こう側から封鎖されているのにどうやって通るってのさ」
「ふっ飛ばせばいいんだよ。魔法で」
「……ボス部屋みたいに崩れるのがオチじゃない、それ」
坑道でも同じようなことになれば、ボス部屋のように復活するとは限らない。
「でも、ひとまず一度行ってみない? もしかしたら、もう誰か到達して開いてるかもしれないし」
「流石にまだ早いんじゃないかなあ……」
そうブレイブは言うものの、先日フィルマに教えた手前、そちらに自分も行くのは樹が退けるため、アルイヌイットまで戻り東に行ってみてもいいか、という気にはなる。
「でも、それ言うなら早めに行ってほしかったなあ……」
「戻るの大変だもんね」
南の端の方であるフマーレストと、北西の端であるアルイヌイット。流石に距離が開いており、移動には時間がかかるのであった。
二日かけ、アルイヌイットまで戻る。そして、その次の日に閉鎖されている坑道にブレイブは直行した。
「閉鎖されている、っていてもテープが張られているだけなんだな」
「多分入るのはある程度見こされているのかもね。先に行けないってだけだし」
本当に閉鎖する気があるのであれば、しっかりとした壁などを作って閉鎖していただろう。そもそも先に行くことが不可能だから、みちとして閉鎖しているだけなのでかなりおざなりな感じのようだ。
「じゃ、入るかな……」
「右、モンスター!」
「ファイアーボール!」
咄嗟にいつもの火の魔法を使い、モンスターに対処する。
「もう、そればっかり! って、今はそんなこと言っている場合じゃない! 右モンスター、左にもいるけど、右よりまし! 急いで左逃げて!」
「いきなりモンスターとかどうなってんのこれ!」
「放置してたから住み着いたんでしょ! 坑道なんて洞窟みたいなもんでしょ!」
全然違う。しかし、実際外から入り込み、住み着くモンスターがいてもおかしくはないだろう。そうしたモンスターが、入ってきた獲物相手に襲い掛かってきたということだ。
パティに言われ左に進むブレイブ。もちろん、こちらにもモンスターはいる。
「エレクトリックウェイブ!」
「サンダーライン!」
波状の電撃、麻痺効果もある電撃の魔法と、直線状に走る。先に放たれた波により動きが鈍り、直線の雷により坑道内にいるモンスターは駆逐される。道がまっすぐで狭い範囲、数も多いとなるとかなり有効的に使える魔法である。
「剥ぐのは時間ないし、抜けるよ! モンスターの報告は出来るけど、道案内は無理だからね!」
「ああ、初めての場所だから地図ないし、情報もないし、道分からないんだった!」
逃げるのに精いっぱいで、どこを通っているのか不明である。故に、当然の帰結として、ブレイブたちは坑道内を迷走していた。地図スキルがあるため、戻るだけならば難しくはないが。
「はあ……何か良いスキルない? 思いつかない?」
「道案内スキル? ナビゲート? そんな都合のいいのないよ。風魔法とかで探ればいいんじゃない?」
「……そんなことできるのか?」
「超音波を聞けるならできるかも」
「蝙蝠か」
実際、風の魔法で洞窟内の様相を知るのは不可能ではない。ただ、風を吹かせるだけでは無理で、吹かせた風を感じるスキルも必要となる。魔法を使うだけで地図を作れるほど便利にはならないのである。
「んー……なんか変なのがある」
「変なの?」
「あっちの方かな。行ってみてもいいかも。もしかしたら、塞いでいるなにかが魔法的なものかもしれないし」
「なるほど」
パティの感知は魔力式だ。魔力があれば、生物でなくても探知できる。パティの案内に従い、ブレイブは道を進む。
「……これかな?」
そうして、ブレイブは明らかに坑道内の壁とは違う材質でできた、明らかにふさがれた道であると思われる場所を見つけた。




