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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
skill maker
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43

"ってことがあってさー。いや、負けちまったよ"

「"そうなんだ"」


 現在、ブレイブはリュージからの経過報告というか、戦果報告というか、先日起きたコッチーニ襲撃の防衛戦の結果の報告、及び愚痴語りを受けている。コッチーニ襲撃は最終的に、ずっと待機していた竜が地上に降りて、プレイヤーを一掃すると言う結果に終わった。実質、あの竜一体だけでも十分だったのではないかと思われるほどに強力だった。

 プレイヤーを一掃の後、竜は残った他のモンスターとともに街を襲撃し、半壊状態にした。その後、モンスターたちは街に居座った状態になっている。ちなみに、コッチーニが復活地点となっているプレイヤーはコッチーニに来る前に最後に訪れた街に出るようになっている。今回参加したプレイヤー以外にも、コッチーニが拠点のプレイヤーはいるのである。


"ブレイブがいればなー。もうちょっと何とかなったかもしれないかったけどな"

「"アルイヌイット……第六の街にいたから戻るのは難しかったと思うけど"」


 当時ブレイブは第六の街へ移動していた。それを戻り、第二の街まで戻るとなると、かなりの時間がかかっただろう。そして、恐らくはコッチーニ襲撃には間に合わなかった。

 それ自体もそうだが、ブレイブは自身が参加していたところでどれだけの戦果が出せたか疑問でもあった。確かにブレイブの魔法を使えば、第二陣のような大量のモンスター相手であれば、楽に殲滅することは出来ただろう。生き残りも多数出たが、ただプレイヤーたちが当たるよりは多くを倒せたに違いない。しかし、ブレイブの戦闘力は雑魚の殲滅にしか向いていない。単独で強力なモンスター相手だと、火が有効な相手以外ではなかなか通用しない。ましてや今回の最終的な相手は竜である。ブレイブがいた所で竜に勝つことは不可能だろう。

 もちろん、ブレイブが竜に勝てるとはだれも思わない。ただ、戦力を多く残せることは確実であり、戦力があれば竜に勝てたかも、という希望くらいはあったかもしれない。最も、雑多な戦力が残っていたところで竜には勝てなかっただろうけれど。


「"負けた、みたいだけど、街は? NPCとかは?"」

"NPCは殆ど他の街に移動してる状態だ。街に残ったのは死亡したみたいでもういないらしい"

「死亡かあ……」


 NPCはプレイヤーのように、死んでも復活すると言うことはない。ほとんどのNPCは死んだところで、機械的な性質しか持たないため、感情移入はしにくいかもしれないが、防衛戦にはプレイヤーAIのNPCやエクストラAIのNPCも参加しており、それらが失われたことはそこそこ大きな事態である。AIであっても、生きている者が死ぬ、となると相当残酷な運営である。


"おかげでツキが落ち込んでてな。慰めてるんだけど、なかなかな……フィルマはどうだった?"

「"フィルマもちょっと落ち込んでたみたいだけど"」

"そうか。俺にはあんまりそういう所見せないからな、あいつは"

「"そうなんだ。まあ、会ったら話を聞くくらいはしておくよ"」

"ああ、頼む"

「"ところで……念話で会話してるけど、MP大丈夫?"」

"ちょっとやばい。なんで、そろそろ話し終わるな。こっちから押し付け的に話し聞かせて悪いな"

「"いや、いいよ。でも、こういうのは念話じゃなくてもっと普通に話した方がよかったんじゃ?"」


 二人は一応学校で出会う友人同士である。わざわざスキルメーカーのゲーム内で会話せず、昼にでも会って話せばよかったのでは、とブレイブは思っていた。


"ああ、ちょっと色々とやってたからな。もうMPがマジでやばいんで、話し終わるぞ。じゃあな!"

「"うん、次は会って話そうか。じゃあね"」


 それを最後に、リュージからの念話が途切れる。リュージと比べ、ブレイブのMPはかなり高いが、それでもそこそこMPが消費されている。


「……電話じゃないんだから。ちょっと長話するには向いていないなあ、このスキル」


 念話のようなスキルは本来、チャット的なものとしてシステム側に組み込まれているような機能のスキルだが、スキルメーカーではMPを消費して行わなければならないものである。多くのプレイヤーが運営側に、もっとシステムよりのものにしてほしいという要望は出しているみたいだが、叶えられる様子はない。


「しかし……コッチーニ陥落かあ。湿地帯、一度行きたかったんだけど」


 コッチーニ南の湿地帯、そこに存在するサイ相手にリベンジを果たしたいと持っていたが、それを行う前にコッチーニ襲撃イベントが起き、戻るのが容易ではなくなった。

 現在コッチーニはモンスターが住まう、ダンジョンに近い状態である。多くのプレイヤーが奪還作戦を行っているようだが、結果は芳しくない。

 具体的に奪還できる条件は、街に住まうモンスターの全滅である。ここで重要なのはモンスターの復活ペース、およびモンスターの強さである。基本的にコッチーニ南の湿地帯のサイのレベルの雑魚的が住まい、それ以上のボスが数体存在する状況で、その上倒しても最長でも十分もあればモンスターが復活する。これは、ボスも同条件である。

 つまり、奪還するにはボスを同時に全部倒し、そのうえで雑魚的を一掃するしかない。しかし、それは相手の強さ的に現実的ではない。随分過酷な条件を運営側は施したものである。奪還できる条件があるだけまし、と思うべきだろうか。

 しかし、奪還しない、というわけにいかない事情もある。一つが、コッチーニからモンスターが北や西へと責めてくる点である。強さは湿地帯のサイが群れになっている、というと分かりやすいだろうか。少なくともアーテッドにいるプレイヤーが相手をする、マッフェロイのプレイヤーが相手をする、というレベルの相手ではない。最も、多くのプレイヤーがアーテッド、およびマッフェロイに戻されたため、現時点ではそこまで深刻な事態ではない。

 特に西は安全だ。西はエムラント山林に住む亜人がモンスター相手に防衛戦を行っている。殲滅するのは無理だが、追い返すくらいはできるようだ。


「第六の街から戻るのは流石に大変そうだよなあ」


 距離の遠さゆえに。それ以前に戻ってどうするのか、という点もある。今なら、サイ一匹相手ならばブレイブでも勝ちを拾えるが、その程度ではコッチーニに行っても仕方がない。そもそも、ブレイブには強力な単独モンスター相手に通用する攻撃力が足りていないのである。また、防御力もいまだ足りているとは言えない。直接戦闘のスキルをほぼ育てておらず、魔法スキルばかり使用しているため、普通に戦えば打たれ弱い。それを補う魔法スキルの開発が必要となるだろう。


「特訓だなあ……特訓というか、スキル開発しないと……」


 未だに初期レベルのスキルを使用しているのは流石に問題だろう。利便性と有効範囲の広さ、スキルレベルと魔力のステータスの高さゆえにまだ使えるが、これからは通用しなくなってくるだろう。だからこそ、本当の意味で上位レベルの魔法スキルを作る必要がある。それを、ブレイブは行うことを決めた。








「攻撃スキルは問題ないんだよなあ……」


 魔法スキルの作成、スキルは基本的に本人のイメージで作られる。より強力なイメージを抱き、それに該当する詠唱を作り、必要なMPさえ存在すれば、発動に至る。発動できなくても作ることは出来なくもないが、具体的なMP消費量は不明であるため、どの程度MPがあれば使えるかもわからない以上、仕えないスキルを作ってもそのうち忘れてしまうことになりかねない。

 攻撃スキルは、そのまま上位スキルを作るのは難しくない。今まで火の玉や火の槍だったのを、業火とか、灼熱とか、そういうものにすればいいだけである。極端なことを言えば、火系のスキルは熱量を上げれば強力になるので、それを行うだけでも十分なスキル作成ができる。そういった点で難しいとなると、風土水だろう。単純威力という点で考えると、大規模化が主になる。それでも、攻撃魔法は簡単に作ることができる。

 それに対して、防御魔法は難しい。今まで障壁を作っているが、その障壁の防御力は具体的ではない。そもそも、防御の魔法でバリア、というのが大雑把に過ぎるのだが、逆にそれは応用範囲が広いというものでもある。強度、を具体的に指定していない、防御の壁、ということで単純にイメージしたがゆえに、スキルレベルがそのまま防御力に直結する。最大の防御力、というものが存在しているためか、スキルレベルの上りも悪くはなく、今でも十分使える程に便利なスキルだ。

 そして、それは新しい防御魔法を思いつきにくい、という欠点になっている。はっきり言って、バリア、という以外に障壁、防御の魔法というのは思い描きにくい。シールド、という魔法も考えなくもないが、結局のところ、バリアとどこまで違うのか、ということになる。はっきり言うと、同じ規模で考えると同じ強さになってしまうのである。

 最終的に、バリアの魔法の防御能力を強化した魔法能力の設定でバリアの魔法を作る、という手法で作ることができるということがわかったのだが、それは同時に同じバリアの魔法とのイメージの混在故に、うまく扱えないと言う結果を残している。ならばスキル一本化でまとめてしまえば、と思うかもしれないが、それをすると、弱い方のバリア、スキルレベルの高いほうのバリアが、強いほうのバリアに一本化されるため、スキルレベルの低下により弱体化してしまうのである。スキル一本化は便利だが、上位のスキルは下位のスキル、根本スキルは派生スキルに一本化すると言うことは出来ない。色々と面倒で複雑な設定がされている。


「バリア、バリア、バリア……あー、やっぱり難しいなあ」


 同じ魔法だが、強度が違う、それだけの差しか存在しないがゆえに、扱いが難しい。


「……ここはやっぱり、そろそろ作ったほうがいいか。使い魔」


 同じようなスキルを一つの存在が持つからそうなるのである。片方のスキルを別の存在に分け、そちらに使わせればいい。その発想が、ブレイブに使い魔作成を行わせることを決めた。もともと、魔法使いだし使い魔を作りたいとも思っていたこともあるようだが。


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