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毎日セリアと闘い、様々な技術を伝える。ただ、もともとの武器は違うので、やはり実戦である程度慣れていくしかなかった。
おかげで勝つのが難しくなったのはある意味仕方がない。もともとの地力が違う所に技術を得ていくのだ。
そうしてセリアとの修業期間がしばらくあり、そして竜が復活する。
「っ?」
ある日の昼。セリアが急に北の方向を向く。
「どうした?」
「……何かいる。でっかいの」
「……竜か」
以前もそうだったが、竜が復活したのは昼食前くらいだったはずだ。
正直、復活するのが昼間だったのはよかっただろう。
夜とかだったら寝ている時に襲来してきて成す術なく死んでしまう可能性がある。
「どうする?」
「竜が復活したあと、北の国で暴れてこっちに来る。どれくらい暴れたのかは知らないけど、竜の攻撃力や速度は相当だ。俺たちはこっちに来た竜と戦うことになる」
「うん、わかった」
「ただなぁ……竜は空を飛んでいるんだ」
飛行物に対しての攻撃手段は地上からの対空攻撃くらいだ。
飛行魔術がないわけではないが、それは物を浮かせ飛ばす魔術だ。それを自分を対象にできるが、そのうえで戦闘するなんてものは不可能だ。
一応自分は思考分割ができているような状態なので不可能ではないが、そもそも飛行魔術を維持しながら身体強化をして戦うのが無茶だ。
その上に防御魔術の併用を考慮するなんてことまで考えたらもう無理だ。
「空……」
「流石に飛べないよな?」
「うん。無理」
「とりあえず、セリアは下から対空攻撃を頼む」
「スィゼはどうするの?」
「防壁の魔術を利用して足場を作る。あれは破壊されなければ暫くは残るから、可能ならセリアも使用して竜まで来るのもありだ」
「前にやってたあれ? 一応頑張ってはみるよ」
何度か空中戦の練習はした。セリアは今の魔術師の使う魔術は使えない。
その前人類の魔力でできるのは空間切断などの攻撃的な空間干渉だ。
なので自分で防壁を張って途中で着地なんてできないので、どうしても下に落ちると着地まで碌な行動ができなくなる。
そういう点でセリアの空中戦闘は難しい。
「とりあえず、やれるだけやるしかない。セリアの能力で倒せれば楽なんだけど」
そんな簡単に倒せる相手ならいいだろう。いくら弱体化したと言っても、前人類が滅びかけたくらいの相手だ。
いくら先祖返りでも、その時の人類と同じくらいの強さを持っているとはいえない。どれくらい通用するだろう。
竜が来た。竜は空を飛び、この街の上空に存在している。
以前の戦闘で竜について把握したことは、竜の持つブレスから光属性か闇属性の竜だろうということだ。
竜は六匹存在し、それぞれが属性をつかさどる。そうであるなら、その竜の攻撃から属性を見極めることができるだろう。
竜の攻撃は火、水、風、土どの属性も、根源的性質も持たない。そうであるなら、攻撃的には光や闇の属性のはずだ。
まあ、色からして白い竜でそのブレス攻撃も白色。光属性の竜とみていいだろう。
あのブレスは自分も直撃を受けたのだが、あれで死んだらしい。もしかしたら、精神に何らかの影響を与えていたのかもしれない。
死んでもそのあとがあるからこそ起きてしまう異常現象があってもおかしくない。
「行くぞ、セリア! 下から攻撃を頼む!」
「うんっ!」
足元にある程度の大きさの防壁を横向きに展開し、足場にする。それを繰り返し竜に近づいていく。
「やあっ!」
セリアが大鎌を竜に向けて振るう。その振るった先が、空間ごと切断される。そしてそれは竜まで到達した。
「っ! 落とせないのか!」
竜まで到達した空間切断は竜に傷を与えることはできたが、それだけだ。
相手を切断しきるまではいかない。その攻撃をしてきたセリアの存在を竜が確認し、大きく吠える。
ビリビリと空気が震え、その振動がこちらにまで伝わってくる。
「セリア! ブレスは避けろ!」
もうかなりの高さにいる。大きな声で言ったが聞こえているかどうかはわからない。
身体能力の高さ的に聞こえているかと思うが、聞こえていなければそれは仕方ないだろう。
竜が再びブレスを吐く。長時間吐き続けることができないようで、何度か連続で吐く。
何とかセリアは逃げているようだ。ブレスの合間に斬撃が飛んで行っているのが確認できる。
その間に竜の背の高さまで来る。
「どうやって飛んでるんだか」
生物の飛翔方法はいろいろあるが、竜はそれに当てはまらない。
もしかしたら、魔術的何かにあたる能力か、それとも竜としての特性か何かなのか。
「とりあえず、まずは翼から!」
翼の付け根を狙い攻撃する。傷を入れることができるが、明らかに浅い。
どう考えても威力が足りない。そして、こちらの攻撃に反応してか、翼が動き、こちらに迫る。
「ぐっ!」
何とか剣を構え、防いだが空中に弾き飛ばされる。
そのまま自由落下を始めるが、途中で防壁を張り着地する。
「どうしようもなくないか?」
攻撃してもダメージがほとんどない以上、自分が倒すのは不可能だ。セリアに任せるしかない。
しかし、セリアも竜に狙われているのもあるが、こちらが作った足場もあまり長時間持つものではない。
一緒に来たのではない以上、上まで登ってくるのはもう難しいだろう。
「……穴がありすぎか」
結局作戦が悪い。仕方ないのでそのまま攻撃を続けるが、何度も弾かれる。
そうしているうちにブレスがいつの間にかやんでいた。
「……っ!」
目の前に竜の顔がある。その口が開き、ブレスがこちらに放たれた。
「はあ……どうすればいいのやら」
最初の日に戻ってきて、街に行く道中。やはり考えるのは竜対策だ。
どうやって竜にダメージを与えるか。セリアが最大の攻撃手段である以上、セリアを有効的に使うしかない。
問題は、空を飛ぶことができないセリアをどうやって竜と直接戦わせるかだ。
「……いろいろ試すしかないよなぁ」
とりあえず、今度は抱えて飛行することを試してみよう。飛行するだけならまだ制御は難しくない。




