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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
doll fantasica
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4

勝率が低い。基本的に極端に連戦連勝、というわけにはいかないのはわかるが、低い。

幾度かの戦闘で判明したこちらの弱点、防御力と攻撃力の決定的な不足だ。

防御力はともかく、攻撃力は魔力強化による強化した攻撃が攻撃力を持っているが、もともとの肉体が弱いせいもあり、最大の威力をだしても相手によっては確実にダメージを与えられるわけではない。

初戦のようなケースでも相手が術式でドールの強化を行っていれば、その分ダメージは減る。

常に高い威力を保ち続けることはできないので要所で強化した攻撃をするが、敵も回避する以上当たらない、当たっても直撃に至らないことが多い。

一番厄介なのは速くて攻撃能力の高い相手だ。強くても動きが鈍重か大振りの動作であればある程度の対処はできる。

速い相手だけはどうしても対処が難しい。攻撃も防御もだ。

そういった弱点があるのは仕方ないが、対処しなくていいわけでもない。

とりあえず、目につくすぐに対処できる部分から対処するしかない。


「これは……剣ですか?」

「ああ。今まで殴る蹴るの攻撃手段だからどうしても攻撃能力が低かった。強化しても強化できる限界がある以上、大本の攻撃力をあげないとだめだからな」


武器を使う。人型でなくとも装着する形でドールに武器を持たせることはできる。

向こうが武器を使える以上、こちらもそれに対抗できるだけのものが必要だ。


「術式は刻まないから、とりあえずここで練習だな」

「それはいいですけど……マスターは武器を扱えるんですか?」

「できないな。だから参考にはならない」


経験記憶は見て覚えることも可能だ。もし武道を習っていればある程度の動作を教えることはできただろう。

しかし、体育で見かける程度、実際には行ってすらいない状態の自分ではだめだろう。

だめならだめで我流でやるしかない。だから実践するのみ、というわけだ。


「ダメージはなしにしてあるから、やるだけやってみよう」

「はい」


実は自分がこういった実戦をやってみたいなんて思ってはいない。








勝率は特に大きな変化はない。やり始めは勝率が下がったが、その後ある程度から回復はした。

しかし、結局我流でやるのには限度があるのか、ある程度まで回復した後はそれ以上には伸びなかった。

攻撃力が高まったのはいいが、その分攻撃や武器に割く意識が増えたため、防御がおろそかになり始めた。

その分大きなダメージを受けて戦闘不能になるケースが増えた。


「攻撃能力が高まった分、防御能力がおろそかになった、ということか…」


もちろん簡単に防御能力を補うことは可能だ。武器と同じく防具を持たせればいい。

しかし、武器や防具などの装備には一つの問題がある。装備は術式に近い立ち位置にある、ということだ。

装備を持たせればその分魔力の量が減る。術式との違いは外してもドールに影響しない点と戦闘中の消費につながらないという点だ。

そういう意味では術式よりも利が大きいが、戦闘中に破損すればその戦闘中に役に立たなくなる。

そして能力の高いものを装備すればその分魔力量の減少は大きくなる。術式で補助するか装備で補助するか、どちらを選ぶかは人の好み次第、といったところだろう。


「防具を持たせても中途半端な防具だと人型では受けきれない、能力の使用での防御は反応性と攻撃能力の低下の問題、強い防具を持たせるとその分魔力量の減少が厳しくなってくる」


何かを得るには何かを捨てなければならない。防御能力をとるか、攻撃能力をとるかということになる。


「おやー珍しいね。君が残ってるなんて」

「!? ああ……朝井先輩」

「美弥でいいのにー。みんな他人行儀だよね」


基本的に特別仲のいい女子でもなければ呼び捨てはないだろう。ましてや先輩なのだから。

また考え事に集中していたせいか部室に入ってきていたことに気づかなかった。


「何考えてたの? お姉さんに話してみなさい」

「いえ、ゲームのことですし……」


あまり相談するというようなことでもない。というか相談しにくいというか、相談するべきじゃないというか。


「別にゲームでもなんでもいいじゃない。私だってゲームするよ? 相談したらいいアイデアがでるかもしれないし、ほらほら言いなさい」


近い。こういう押しが強い人だというのは普段の姿を見て知っているが自分がやられると正直あれだ。

女性慣れしてない男児としては離れていて欲しい。


「近いです。少し離れてください」

「じゃあ、教えなさい。先輩の言うことは聞くものだよ」


多分話さなければこのままだろう。というかもっといろいろきつくなるだろう。

おとなしく考えていたことを話す。


「ふーん……つまり戦闘における攻めと守りの取捨選択に迫られてるってことだね」

「まあ、大体そうですね」

「両方とることもできるけど、両方をとると別の部分で問題が出る、今のところ防御を捨てている、と」

「捨てている……といえばそうです。まだそちらの対策をとっていない、という現状です」

「攻撃手段を防御手段に使う、っていうのは?」


攻撃手段を防御に使う…今回の場合は剣を防御に使う、ということか。

仮に剣を防御に使うとする場合、現在の攻撃用の剣のままというわけにはいかにだろう。

少なくとも防御に使っても問題ない剣、または双剣のスタイルにすることになる。


「少し厳しいとおもいますけど、何とかなるかもしれませんね」

「前はどうしてたの?」

「拳と蹴りで戦ってました。攻撃力が不足したので剣を持たせたのが現状ですね」

「…………それって剣を持たせる前に強化できたんじゃない?」

「え?」

「腕と拳を覆う鎧みたいな装備なら、そのまま拳で攻撃の強化、腕での防御の強化みたいにできたんじゃない?」


それは考えつかなかった。確かにメリケンサックのような武器もある。

武器といえば剣、という考え方だったせいだろう。


「思いつかなかったみたいです」

「やっぱり人に話して思いつくこともあるよね? これからは何かあったらお姉さんに相談しなさい」


朝井先輩が得意げに言い放つ。これがドヤ顔というやつだろうか。


「そうですね、何かあったらまた相談しますよ」


そういって立ち上がる。とりあえず思いついたならやってみるべきだろう。


「もう行くの?」

「はい。今日は相談に乗ってくれてありがとうございました」

「別にいいんだよー。私も特にやることがあるわけじゃないしね」


じゃあねー、と帰るこちらに手を振っている。特に手を振り返すわけでもなく部室を出る。

そのまま家に帰り、先輩と話した腕全体を覆う装備を用意する。

若干の調整は必要になるだろうが、剣のように一から始める、ということにはならないから難しいことではない。

同時に双剣を使うことも視野に入れて訓練することにした。戦闘手段を増やすことはデメリットにならないだろう。

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