表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
skill maker
399/485

41

 ブレイブは一度のクラーケン討伐の後、他にすることもないので、防具が完成するまで毎日クラーケン討伐に参加する。毎日とはいうものの滞在期間は僅か数日だったが。防具は完成し、それを受け取り第四の街へと戻る。いくつか入手した足を携えて。

 第四の街の偉い人に足を献上し、北西の道の先、第六への街へとブレイブは歩を進める。烏賊の足を複数献上したと言うことで余計に褒賞を貰えていたりもするが、そのあたりは金銭での褒章であったため、大した内容でもない。

 第六の街への道中はこれといった敵の出現もなく、第四や第五の街の道中のようなボス戦もない。特に苦も無く、ブレイブは第六の街へとたどり着くのであった。







 ブレイブが第六の街へと向かっている頃。運営側の通知や、掲示板での情報共有などを通し、ある内容が発されていた。ブレイブは攻略情報は比較的調べる方だが、基本的に必要になった場合に調べるのが主だ。そして、掲示板も気になるもの以外はあまりチェックしない。上の方に会ったり、進行が速いとかそういう理由であまり確認することはない。また、攻略情報も掲示板ではなく、攻略サイトやまとめサイトなどの情報が主で、基本的に遅い情報がメインとなる。第六の街に行くので、その間の情報を一度調べており、これ以上調べる必要はないということでしばらく放置しているのもある。そういった諸々が重なり、ブレイブはあるイベントを逃すこととなった。最も、第六の街から戻ると相応に時間がかかるため、かなり厳しいことになっただろう。

 イベントが開かれるのは第二の街、コッチーニ。どのようなイベントかというと、街へのモンスターの襲撃、いわゆる防衛イベントというやつである。運営側はそれ以上の情報を公開せず、襲撃場所がコッチーニであるということくらいしか公開していない。どのようなモンスターが出るか、どうすればイベント終了なのか、そういった情報がまるでない。最初のチュートリアルからもわかることだが、実に不親切だ。

 現在、イベントが始まる前のコッチーニはかなりのプレイヤーが集まっていた。もともとスキルメーカーの総プレイヤー人口は多いとは言えないが、少なくもない。そのため、結構な数のプレイヤーで埋まっている。そんな中、リュージはがやがやとした雰囲気に巻き込まれないよう、人の少ない所に逃げ込んでいた。


「はー、意外とまだ人は残ってたんだな」


 スキルメーカーのプレイヤーが意外と多く残っていることを知ってはいたものの、実際にそれを実感したのは初めてだろう。


「ツキにフィルマには道具購入頼んでるけど、こりゃ大変そうだな」


 現状、まだ道具類の購入を行っていないプレイヤーが道具屋に殺到していることだろう。幸いなことに、このゲームでは店においてあるアイテム量に限りがあると言うことはない。そのあたり、現実感を重視するプレイヤーにとっては不満のある内容だが、こういう時は地味にありがたい部分である。スキルメーカーが現実的に見えてゲーム的であるという、プレイヤーとしてはもう少しどちらかに偏らせてほしいと思う微妙な部分が功を奏した形だ。最も、購入自体に手間がかかるため、人が込み合ってることに変わりはないのだが。


「こっちはあんまり人がいないし、ちょっと離れた所で待ってるか……おっ?」


 町のマップ情報自体は多くのプレイヤーが地図を確認し持っている。リュージもまた、地図のスキルで持っており、その中にこの辺りにある店舗の類はない。しかし、珍しいことに、露店が存在していた。


「おー……珍しい」


 思わずそう呟くリュージ。スキルメーカーにおいての生産職は、まだ店として売り出せるほどの製品はできていない。ギリギリ店売りレベルが作れる、程度のプレイヤーが出てきた程度だ。そういうプレイヤーも、売るよりは自分たちで使う機会の方が多く、露店を出すようなこともない。

 だからこそ、露店というものは珍しい。しかも、その露店は武器を売っているのである。


「あんまりいいのはないな」


 ざっとおかれている商品を見てのリュージの感想だ。実際、店売りの商品よりいい品物というものはないだろう。プレイヤーメイドの製品だと、店売りとは違う特殊性がなければ売れるようなことはない。少なくとも現状は。


「悪かったッスね。どうせ店売りにも劣る品物ッスよ」

「あ、悪い……」


 店員、露店を開いているプレイヤーが笑いながらリュージに言う。本人もリュージの発言の内容に自覚はあるのだろう。ただ、はっきり言われると流石にむっとするようだ。


「でも、珍しい物があるし、悪くはないんじゃないか?」

「売れないッスけどね。使う人がいないじゃ、置いてても仕方ないッスよ」


 リュージが店においてある杖を指さし言う。金属製の杖だ。普通の店では売っていないようなもので、物珍しさはあるだろう。しかし、それを使うプレイヤーはいない。いや、一人いるにはいるが、それ以外のプレイヤーがいない。


「そうだな……俺も、一人くらいしか使ってるの知らないしな」

「ま、別にいいッス。露店は趣味ッスから。今日は物珍しさに見に来た、あなたみたいなプレイヤーが時々買ってくれてるッスよ」

「あー……それは俺も買えってことかな?」

「好きにするッス。必要ない物を買っても仕方ないッスから」


 くすくす笑いながら店員は言う。別に買っても買わなくても、そのあたりはどうでもいいようだ。


「んー……」


 リュージはざっと見た中で、小さめの槍に視線を向ける。槍、というには細く短く、持ってみるとかなり軽い。


「これ、どういう物なんだ?」


 普通に槍として使う分には確実に使いにくい槍だ。どういうコンセプトで作ったのかがリュージは気になるようである。


「基本、投げて使う物っすね。投げ槍ってやつッスか?」

「投げ槍ってこんなのだったか?」


 通常、投げる物は相応に重くないといけないし、投げ槍も基本長めである。流石にちょっと短すぎるように思えるものだ。


「さあ。あたしは知らないッス。ただ、クナイとか、そういうものから考えて作っただけッスから」


 つまりは、投げ槍と言っても肩から投げるようなものではないものであるようだ。実際の所、そんなものがあるかどうか作った本人ですら知らないようだ。


「…………実際使えるのか、これ?」

「あたし戦闘向きじゃないッスから、全然わからないッスね。実際使ってみたッスけど」


 本人の能力の関係で実際に使用しても使用感が全く分からない、とのことである。そもそも、本来の投げ槍のように投げるのならともかく、区内のように投げるのであれば投げ慣れていないと真っ直ぐ投げられないものだと思うのだが、そのあたり使う側のことを考えて作っているのだろうか。


「…………」


 リュージはじっと槍を見ている。何か思いついたのか、思考に没頭している。


「兄さん、こんなところにいたんですか」

「道具買ってきたよー」

「おお、ツキにフィルマ。ごくろうさん」


 道具の購入を行っていたツキとフィルマがリュージと合流する。かなり大変だったようで、そこそこくたびれているようだ。


「……露店ですか」

「何持ってるのー?」


 フィルマが店の方に視線を移し、ツキがリュージの持っている物を見に来る。


「投げ槍……らしいんだけど、ツキ、これ使えるか?」

「槍は使ったことないけど?」


 むー、と、一緒にゲームをプレイしているのに仲間の状況を把握していないのかとツキが少し怒ったような表情で言う。実際、ツキやフィルマがプレイする場合はほぼリュージが一緒である。たまにフィルマは一人で何処かにブラッとしていることはあるが、少なくともツキは常にリュージと一緒にプレイしている。そうである以上、ツキのスキルもリュージは把握しているはずである。


「いや、そういうのじゃなくてな……矢の代わりに使えるかってことだ」

「えっ……槍を矢に使うの?」

「できないならできないでいいんだけどな。ちょうど、矢っぽい感じだろ、これ」


 長さ的には確かに矢のように感じられなくもないが、その発想はかなり突飛的だ。最も、剣や槍を矢に用いる発想はそこまで珍しくもない発想である。大抵は普通の弓で扱うことはないが。


「うーん……やってみないとわかんないけど……」

「それもそうだな。えっと、店員さん、試し撃ちって駄目かな?」

「無くさない、壊さないさえ守ってくれればいいッスよ」

「兄さん、どこで試すんです? ここ街中ですよ?」

「あー、それもそうか……」


 これから防衛戦を行う戦場の舞台とはいえ、まだ戦いの行われていない街中で武器を振るうわけにもいかないだろう。つまりは、試すには人のいない場所か、先頭可能な場所か、街の外化まで行かないといけない。


「槍は五本あるッスし、一本ただで四本半額で買ってみる気ないッスか?」

「……どうする?」

「聞かないでください。兄さんとツキで決めればいいと思います」


 フィルマは店の品物に視線を向けており、リュージの方に目を向けることなく言い放つ。実に冷たい。フィルマに突き放されたため、リュージとツキは話し合い、どうするか決めるようだ。


「……いいんですか、あんな使い方でも」

「想定外の使い方ッスけど、武器は使われてこそッスよ」

「そうですか」


 フィルマの視線は杖の方に向いている。


「珍しいものですが、自分で作った……いえ、言い方が微妙に変ですね。誰かに頼まれて作ったりしたものですか、これ?」

「そうッス。知り合いに頼まれて作ったものッス。まあ、他に使い手もいないッスけど、誰か欲しい人がいれば、ってことでおいているッスよ」

「……そうですか」


 杖から視線を外す。そうしてずらした視線の先にあったものに、思わずフィルマが驚く。


「これは?」

「ああ、それは刀ッスね」

「……店ではまだ売られていない物ですね。よく作りましたね」

「まあ、NPCの人とかかわる機会があったッスから」


 坑道内に登場するディーロッドの事である。フィルマ達も、攻略の時に出会っている。


「……いくらですか?」

「安いッスよ。普通の剣よりも脆いッスし、攻撃力もあまりないッス。全然ダメダメな品物ッスけど、買うッスか?」

「買います。それと、これからも刀を作ってほしいんですけど、いいですか? その杖みたいに」

「まあ、いいッスけど……」


 刀、ということで実にフィルマの食いつきが良い。フィルマが刀の購入を決めたぐらいに、リュージ達も槍の購入を決めたようだ。


「いやー、ありがたいッスね。今日は人が多いし、記念というか、面白半分に買ってくプレイヤーも多くて助かるッス」

「所で、この後の防衛戦だけど……」

「あ、あたしは参加しないッス。というか、そろそろここをお暇するッスよ」

「えー? 参加しに来たんじゃないの?」


 ここにいるプレイヤーのほとんどは防衛戦の参加プレイヤーである。そう考えると、店員はかなり奇妙な行動をとっているプレイヤーだろう。


「人が集まるってことで売れるかなって思ってきただけッスよ。まあ、あたし戦闘能力ないッスから」

「そうですか……それでは、私達もそろそろ戻りましょう、兄さん」

「そうだな……いつ始まるかはわからないけど、あまり外れた場所にいても仕方ないしな」

「それでは、また会いましょうアメリアさん」


 そう言ってリュージ達は街の喧噪賑やかな方へと戻っていく。


「さて、あたしも街を出るッスかね」


 そう言ってアメリアはリュージ達とは逆方向、街の外へと向かっていった。

 それからしばらくして防衛戦が開始する。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ