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ループを繰り返すうちに、ある程度慣れたせいもあるのか、死神とある程度戦闘と呼べる程度に戦えるようになった。

もちろん、魔力も増え身体強化が強くなったせいもあるだろう。

だが、ここである程度戦えるようになったからこその問題が発生した。

あの死神の攻撃を受けるだけの武器が存在しないことである。

今まで使っていた武器は死神の攻撃を受けることができていたが、その後武器より先にこちらが攻撃され死んでいたため、その問題は発覚しなかった。

しかし、ある程度戦闘になるからこそ、その問題が起きてしまった。

前回、死神と戦っている間に武器が折れたのである。流石にあれだけの一撃を何度も受けることはできないようだ。


ここで問題なのが、どうやって死神と打ち合えるだけの武器を確保するのか、という点になる。

まず、魔銀になるが、剣を作れるほどの量を確保することはできない。

これは迷宮攻略上の問題になるが、仮に一人で攻略できれば確保できるがまず一人では無理だ。

仲間がいるとなると、分け前などの都合上や、ギルドへの連絡の関係で魔銀の量は十分な量を確保できない。

そのため、魔銀はそこまでの量を確保できる状態ではない、ということだ。

そして仮に魔銀を必要量確保できたとしても、それを武器に鍛えあげるほどの鍛冶師が存在しない、という問題がある。

今までであった鍛冶師に聞いてみたことはあるが、彼らは魔銀を取り扱ったことはないらしい。

そのため、現状では八方塞がりな状況である。






「はあ……どうしたものか」


ギルドの休憩所で溜息を吐く。冒険者ギルド内にはいろいろな設備がある。

そのうちの一つが休憩所だ。仕事を受けていない他の冒険者も宿の部屋みたいな場所にいたくないのかここにいることが多い。


「おう、坊主。ため息なんてついてどうした?」


気の良さそうなスキンヘッドの冒険者が前の椅子に座る。

冒険者をやってる回でよく見かける、人に話しかけてはその悩みを聞く面倒な冒険者だ。

悪い人ではないのだが、何もしていない時にも話しかけてくるのでかなり鬱陶しい。


「いえ、どこかに魔銀を取り合え使えるような鍛冶屋はないか、と思ってまして……」


どうせ相談する相手もいないのだからこの人に相談してみることにした。


「魔銀か。あの手の珍しい特殊な金属を扱える鍛冶屋は少ないからな」

「ええ。魔銀そのものは今はありませんが、量は少ないけど入手しようと思えばできます。でも鍛冶屋の当てがないので……」

「場所が場所だが、魔銀を扱える鍛冶屋は知ってるぞ」

「本当ですか!?」

「ああ。別に教えてやってもいい。ま、坊主がいけるかは知らないがな」


行幸だ。場所さえ分かっていれば何とか頼み込むなりいろいろやれる。

そう考えていたのだが、教えられた場所がかなりの問題だった。







「竜の眠る谷……ねえ」


昔話である。かなりの大昔、かつてこの世界が生まれた時代。その時代には世界に六匹の竜がいた。

世界の始まりの時代には今の世界のように人間は存在せず、天使や鬼など、特殊な力を持った強大な人に近い種族がいたらしい。

それらが世界を飛び回り暴れていた六匹の竜を退治した、というお話だ。

だが、それらの存在は不死に近い存在であり、倒したが殺すことはできなかった。

しかしそのままにしておくことはできない。そのため、倒した竜を各地に封印したという。

そのうちの一つが今行く鍛冶屋がいると言う竜の眠る谷だ。


「本当に竜が眠ってるかどうかは知らないけど、なんでこんな場所に……」


竜の眠る谷はその谷を形成する山脈がそのまま竜の体の一部だと言われている。

もしそうなら竜はあまりにも巨大な存在だ。それらを人間よりは強いとはいえ、大きさが変わらなかったらしいと師匠が言っていた前人類が倒せたとは思えない。

流石にそれはホラだろう。眠っているかどうかも本当かどうかは怪しいところだ。


「でも魔物は見かけないらしいんだよな」


竜の眠る場所と言われている場所では魔物を見かけることはない。

といっても、多くの竜の眠る場所はその自然があまりにも険しいせいで他の動物も少ない。

わざわざ餌の少ない地域に動物が集まることもない。


「しかしなんでこんなところに…」


足場の危険、自然環境の厳しさ、得られる食糧、そして鍛冶屋なら燃料の問題もあるだろう。

なぜこんな所に居を構えているのかが謎すぎる。


「きつい……」


言われたところまでたどり着くだけでも相当厳しい。

魔銀を取り扱える鍛冶屋に会うためにこれだけ労力が必要ならもっと別の手段を見つけるべきか?







「客人とは珍しいな」


目的地に到達した。そこにあったのはかなり広い石造りの建物だ。

恐らく今の技術で建てられたものではない。前人類が作ったものと思われる。

今の人類でない、始まりの時代の人類は今より高い技術を持っていたという。

その前人類の立てただろう建物の前に、まだ若いだろう男性がいた。


「ここにわざわざ来るということは何か作ってほしい、ということだな?」

「……はい、そうです。今は素材がありませんけど」

「悪いがうちは素材は持ち込みだ。そういうことなら素材を手に入れてからくるんだな」


わかっている。鍛冶屋によってはその鍛冶屋の持っている素材で作ってくれるが、多くの鍛冶屋は自分で必要な金属を持ち込む場合が多い。

特に個人向けの武器はそういう傾向が多い。


「それはわかってます。ここでは魔銀を取り扱えると聞きましたけど、本当ですか?」

「ああ。ここの施設を見れば理由はわかるだろう?」

「前人類時代の遺産……ですね」

「そうだ。魔銀が普通の鍛冶屋で扱っていないのは加工の難しさ故だからな」


魔銀は普通取り扱う金属よりもかなり高い融点であるらしい。


「魔銀を持って来れば、剣を作れますか? あまり金属量はありませんけど」

「量が少ないのか……全てを魔銀で作ることができないかもしれないが、外側を魔銀で覆う形で魔銀で作ったものと同様にはできるかもしれん。合金の手もある。足りないかもしれないのなら普通の鉄も持ってこい。できる限り何とかしてやろう」

「そうですか。代金の支払いとかは?」

「ここで過ごす俺に金はいらん。金属を打つのが俺にとっての報酬だ。それでも払いたいというなら日持ちのする食糧でももってこい。ここでは獲物をとるのもなかなか大変だからな」

「わかりました」


どこで獲物を狩っているのだろうか。ここにくるまで動物は山を登ってきたらしい羊や山羊が数匹と空を飛んでいる鳥くらいだ。

野菜の類は畑を作っているようなので一応あるみたいだが。

もしかした山を下りて買い物をしているのだろうか。

そんなことを思いつつ山を下りる。まず魔銀を入手するために迷宮攻略の人員を募集しよう。

今回クルドさんたちのチームに入らなかったので行動は自由だが仲間がいない。大変だ。

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