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「意外に勘の鋭い……」


 姉の後を追っているけど、何か追ってきていることに気づかれているのか、妙にきょろきょろと周囲を気にしてる。やっぱり直接はダメかな。


「水……うーん、あんまりよくないんだけど」


 もっといい水なら、もっといろいろできるんだけど……まあ、しかたないか。お姉ちゃんも条件は一緒。風だってここはよくないし。それでも、外よりはまだ結構マシ、なんだけど。外はもっと酷いから。


「よし、これでお姉ちゃんの後をつけさせよう」


 普通に追ってたら多分バレちゃう。もっと別の……隠れやすくて見やすい場所を……


「ちょっと高い所は……っと」


 この街は普通の街だ。あんまり高い所なんてない。流石に物見の建物に行くのはどうかと思うし、その辺の家の屋根に上るしかないか。お姉ちゃんはそういうの得意なんだけど、私はどうしても苦手だからなぁ。


「よっと……精霊は基本的に誰かに見られることがないからよかった」


 流石に不審者すぎるもんね。同じ精霊なら見えるし、精霊を見る道具をつけてれば人間とか、他の色々な存在でも見れるけど。まあ、わざわざ精霊に手を出そうなんてするのは人間くらいだけど。


「水…………お姉ちゃんの風があるから、バレないようにしないと……」


 空気中の水を支配下に置いて、それから情報を伝わせる方法は疲れる。本来の意味で水なら操りやすいんだけど……空気内だから本来は風の精霊の管轄なんだよね。無理を通して何とか操ってるけど、お姉ちゃんの操ってる風に紛れれば最悪バレる。そうでなくても制御から外れるんだけど。

 だから、できるだけ影響を受けないように、送り出した追跡する水以外の水は遠距離からの監視に留める。


「ん……止まった?」


 お姉ちゃんが止まった。特に何もない場所……だと思う。何か色々やってるけど、何をやってるんだろう。






「……あれー?」


 結局、何もやらずにお姉ちゃんは帰っていった。いや、それはちょっと正確じゃないかな。何かやってるのはわかったんだけど、何かやってるようには見えなかった。風だから見えないかなーとは思ったけど、それでもなんとなく私にはわかるはず。


「んー?」


 もし何かやってたなら何かあるのかもしれない。屋根から降りて、お姉ちゃんのいた所に行ってみる。


「…………何もないなあ」


 何かあるようには見えない。でも、何かあるならここのはずだけど。


「んー……んー? ちょっとだけ、何かいいものが……」


 水、かな? 正確に水じゃないけど、水分、空気中の水……ここのとは違うもの。それを感じる。


「ここ……かな?」


 探ってみると、何かある。空気中の水分が頼りだから、私じゃあまり良くわからない感じがするけど……お姉ちゃんは風だから、発見しやすいだろうね。


「これ、かなあ?」


 そこに何かあるのはわかる。水……空気が漏れ出ている。つまり、穴みたいな何かがあるってこと。あんまり私も詳しくはないけど、そういう場所もあるっていうのは聞いたことがある。


「……ここの向こうにお姉ちゃんが?」


 私だって行けないからお姉ちゃんだって行けないだろうけど……あ、でももしかしたら。


「意識を分けて……水をっ!」







『よっ、とうっ!』


 向こうの私から、こっちに送られてきた。お姉ちゃんも似たようなことができるから、多分これでこっちに来てるのかな? 私の方は完全に分離できるから、こっちでお姉ちゃんが何かやってるかもしれないし、私が探索して私に伝えることにしよう。

 ここは水がきれい。完全にキレイじゃないけど、あっちとは雲泥の差だね。お姉ちゃんも、最近元気出てたのはこういう理由かな?


「そっちはよろしくね。お姉ちゃんが来た時に鉢合うと困るから、それまでの記憶を共有してる分身を作って、それをこっちが回収する形にするよ」

『はいはい。ついでに、水も送っておくよ。こっちの水そっちよりきれいだから』

「えっ! 何それ羨ましい! 私もそっち行きたい!」

『無理でしょ。諦めてよ私』


 それができるなら最初から私を送るなんてしていないだろう。お姉ちゃんだって、あっちであんなふうに自分だけ残ってたし。私は残らなくてもいいけど、お姉ちゃんは風だから断絶しちゃうと消えちゃうからね。連続してないといけない。


『それにしても……』


 あっちじゃ全く見ない光景。穴、からどこか適当な場所に移動した物だと思ってたけど、あの穴は意図して作ろうとしたものじゃないだろうと思う。なら、ここは意図した場所じゃない……あっちとは全く違う場所。

 お姉ちゃんはこういうことにはあまり詳しくないんだよね。まあ、私があまり情報渡らないように注意してるんだけど。あのどこか抜けてる、何も知らない所がかわいいから。我ながら歪んでるね。


『人が多い……』


 精霊を捕まえに来る人間とは全く違う印象を受ける。でも、人間は人間だからやっぱり嫌いだけど。でも、こっちは水が全然悪くない。溝にある水も、そこまで汚れてない。


『んー……でも、どうしよう』


 良い水ばかりだから、こっちで過ごす分には困らない。むしろ、向こうに持ち帰りたいくらいだけど。こっちでやることがない。いや、向こうでもなかった気がする。ただ無為に過ごしていただけだった気がする。

 私達精霊は、ただ自然のありようとして存在しているだけ。ある意味、お姉ちゃんのようにその辺をふわふわしているのが一番正しい過ごし方なんだろう。私は人間の対策を色々頑張ってたけど、それはやっぱり精霊としてはちょっと違うかもね。


『ひとまず、こっちのことを調べて、水も回収。それくらいかな。どうせ私は見えないし、大丈夫でしょ』


 精霊は他の生物に見えないから。人間は本当によく頑張るよね。

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