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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
dungeon
300/485

38

 単純に海を進むのには時間がかかる。水の中を進むのは地上を歩むのとはわけが違う。泳ぐわけではないとはいえ、やはり水中を進むのは厄介だ。


「ここ深いわね」

「ですが、ここ以外は行ける道がないですね……」

「腰までの深さか……」


 海に存在する、水中を伸びている地続きの道を進む。この地続きの道は深さが各所で違い、場所によっては装備が海に使って厄介なことになる。ただでさえ、潮風で金属製のものはダメになりやすいというのに、海につかるようになればもっと傷みが早いだろう。


「……結構遠くまで続いているな」

「でも、行くしかねーぜ……」

「幸いにも、ここまでの道よりも幅が広いのでまだマシですけど……」

「魚除け大丈夫?」

「……まだ足りるが、渡り切るには量が足りないな」


 水の中を進むうえで、重要なのは魔物が寄ってこないようにすることだ。水中とはいえ、かなりの浅瀬になるからかあまり普通の魚は近寄ってこないのだが、魔物の類は平気で寄ってくる。最も、近寄って来る分にはそこまで脅威にはなりにくい。クラーケンや、大蟹のような魚でない類の魔物はそこそこ厄介だが。

 一番厄介なのは、突撃してくる魚や、水中から勢いよく水面に飛び出してくる魚、飛び魚のような魚だ。こういう魚は倒せなければそのまま抜けて行き、また戻ってくる。そういう部分がかなり厄介になる。

 最も、少しでも傷つければそっちに寄ってくれるので対処そのものは難しくない。魚除けもそういうものだ。魚をそちらに引き寄せる特殊な溶液である。


「また戻るのー? もう戻ってくるのやだよー」

「いや、一度途中にある島に行こう。こちらから見る限りいろいろと不明な点は多いが、小規模とはいえ立派な島だ。食料が存在する可能性もある」

「もし食料があれば上の階に食料の確保に戻る必要がない……ということですね」

「ああ、そうだ」


 食料、特に野菜の類を確保できれば大分マシになる。水の類があるかどうか不明なのが難点だが、最悪水は海の水をどうにかして確保すると言う手法もある。釣り道具も持ってきている。


「魚除け投げるよー!」

「あ、次俺が投げる気だったのに!」

「……誰が投げても一緒」

「いや、一緒じゃなかっただろう」


 先ほどアリムラが投げた時はあまり遠くに着水せず近場だったため、急いでその場から離れる必要があったので苦労した。それを指摘すると少しむくれて顔をそむける。最も、アリムラの言う通り、誰が投げてもいい。ただ、単純に遠くに投げるというだけのちょっとした競い合いでも十分ここでは娯楽にはなる。そういったもので迷宮にいることで感じられる不満や苛立ちを少しでも解消できるのならばやったほうがいいだろう。








「ようやくついたー!」

「……やっぱり水の中はきついな」

「そうですね……」


 レッツェが元気に到着した喜びを叫ぶ。対称的に、こちらはかなり疲れた感じの会話になってしまった。


「ひとまず、ここで休むことに……したいが、どうする?」

「どうするってということだよ?」

「魔物の存在、水や食料の有無、安全な場所が存在するかどうか。色々と確かめる必要がありますね」


 島に着いた地続きの道、そこから海岸に繋がって砂浜が存在している。その側には森が存在しており、その向こうには小さな山が存在している。山と言っても半ば崖のようになっている。頂上は多くの山のように頭がへこんで穴のようになっているのか、何が存在するかは確認できていない。

 遠目で見る分には何かがいることは核にできていないが、森の奥、山に存在する崖にどんな生物がいるのかがわからない。もし危険な生物がいるのであれば、そういった生物に対処しやすい場所で休む必要があるし、いないのであればそちらを拠点にして休める。


「二手に分けて、島の周りの確認と森の中の探索だな」

「私は地図描くから全景の確認したいし、周りの探索ね」

「じゃ、俺は森の中だな。色々探るのは得意だし」

「レッツェ、レイズ、アリムラが島の周り、俺とジェリコが森の中の探索だな」

「……わかった」

「ええ、いいですよそれで」


 あっさりと二手に分かれる。島の周りはそこまで極端に危ないと言うことはないだろう。基本的にここの周りに存在するのは海、魔物も地上にはおらず、海ばかりだ。海岸には砂の中に何かが潜んでいる可能性もあるが、そこまでの脅威とは思えない。レッツェだけだと少々不安があるが、レイズ、アリムラと一緒ならば安全だ。

 森の方は魔物がいるかは不明だが、探索の上でジェリコがいれば、そうそう危険に陥ることはないだろう。罠の探知や気配の察知はジェリコの得意な分野だ。


「はー……森は広いぜ」

「魔物はいるか?」

「今のところはいない感じだな……お、茸に野草に、木の実もあるぜ。これなら戻って食料を確保する必要はないんじゃねーか?」

「食べられるとは限らないだろう。安全を確かめるまでは手を出すのは危険だ」


 特に茸は不安が大きい。野草はまだ食べられる種類を把握している上で言っているから大丈夫だとは思うし、木の実でも食べれば即死する毒を含む木の実は少ない。だが、茸だけはどうしても死亡の危険から麻痺や混乱、さまざまな異常を引き起こす危険が大きい。そのうえ、見た目ではわかりにくいものも少なくなく、食べられる茸かと思ったら毒を持っているものだったということもある。厄介なことにすぐに影響が出ないものも多い。こんな迷宮の中で食べるには不安が大きすぎる。


「それもそーだな…………おっと、何かいるぜ」

「……あれだな」


 ジェリコが気配を感じ、気配を感じた方向を指す。そちらに目を向けると、兎がいた。


「魔物か、それともただの動物か」

「どちらにせよ、食料の確保が必要だ……レッツェがいればよかったんだが」

「魔物なら確保は楽そうだな。動物の場合はあまりあてにすんなよ」


 足音を殺して、ジェリコがじりじりと兎に迫る。ぴくり、と兎が気配か音か何かを感じて耳を立てて警戒を始める。


「………………ふっ!」


 ジェリコが気配を殺してからの不意打ちを仕掛けたが、寸でのところで逃げられる。


「あー、くそっ!」

「恐らくあれは動物だろうな……魔物がいない可能性があり得るか?」


 最も、期待しすぎても仕方がない。探索を続け、その上で判断するしかない。しばらくそのまま探索を続け、おおよそ森の全様を確認した後、二手に分かれた場所に戻った。既にレッツェ達は戻ってきており、互いに自分たちが確認したことの報告を始める。


「島の周り確認したけど、特にこれと言って危険なところはないかなー。山の裏側、来た方向から見えなかった部分も、同じ感じで森だったわ」

「森の中は基本的に小さめな動物だけだ。危険もほぼないし、野草や茸、木の実が豊富に存在する。毒に注意する必要があるが、肉も植物類も食べ物は豊富とみていいだろうな」

「…………水場はあった?」

「いや、なかったぜ。そっちは?」

「ないですね……最悪、海の水をなんとかすれば問題ないですが……」


 そう言った手立てもあるだろうが、まだ探索していない場所もある。


「山……というよりは崖か。あそこも探してなければ、最終手段として考えよう。反対側の森の中にある可能性もある」

「そうですね……結論を急ぐのはよくないでしょう」

「ひとまず、ここで休もー! 海渡ってくるの疲れたー!」

「……テント?」

「置いてこなくてよかったと言うべきだな」

「とっとと設営するぜ!」


 すぐさま全員でテントを設置する。道中での休憩用として持ってきていたが、ここでもまた活用されることになるとは。海の上を渡る時に置いてこなくてよかった。

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