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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
dungeon
296/485

34

「ここ作ったの誰か知らないけどマジでクソすぎ!」

「同感ですが、言葉悪いですよ! うわっ!?」

「ひゃあああっ!?」


 レッツェとレイズが大玉に巻き込まれ下へと転がっていく。今俺たちは坂道を上っている。単純な坂道ではなく、水が流れ滑りやすくなっている坂道だ。その上、上から大玉が転がってきて、転がってくる直線上にいれば大玉に巻き込まれ下へと落ちる。幸いなことに、大玉自体はそれほど危険ではなく、下に転がっても下は柔らかい素材でできた何かで敷き詰められているし、水もあって衝撃は殆ど大丈夫だ。

 ただ、結構な高さまで苦労して登ってきたのに、大玉に引っかかって下まで落ちるのは精神的につらい。誰か一人でも一番上まで登れればいいのだが、そうそう簡単に登り切れるわけではない。


「リーダー、横に抜けられる!」

「そっちは休んでろ!」

「ロズエル!」

「ちっ!」


 上から大玉が転がってくる。上へ登れば上るほど、大玉が発生してから転がってくるまでの時間が短い。登っているとつい大玉の存在を失念し、巻き込まれやすい。現在は二人が落ちたが、アリムラとジェリコ、俺の三人で道を分けて進み、各自大玉が誰かの上にあれば警告するようにしている。

 また、ここの坂には足場が存在し、途中で休むことができる。これがまた地味にいやらしいのだが、


「……ふう」


 足場まで到達し、休む。足場で休むと坂道から離れるせいか微妙に戻るときが大変になる。しかし、休まないとそれはそれで体力の消費がやばい。


「リーダー、大丈夫かー?」

「大丈夫だー」


 結構距離が開いているので話すときは大声になる。そのためか、先ほどのように警告以外でアリムラの言葉を聞いていない。アリムラは話すこと自体微妙に得意でないようだし、大声もあまり得意ではないみたいだ。結構長い間一緒にいるが、やはりまだ付き合いは短いということだろう。


「……さて、再開するか」


 何故迷宮に来てまでこんなところを登らなければならないのか。誰が迷宮を作ったかわからないが、先ほどのレッツェのような言葉では言わないが、本当にどういう性格をしたらこんなものを作れるんだ。危険は低いが、これを攻略しなければ先に進めない、となるとあれ過ぎる。

 事の始まりは、七階の前半、ゾンビの巣を攻略した後だ。









「これを使えばゾンビの臭いに悩まされずに済むんじゃねーか?」

「……犬除けか」


 一度迷宮の外まで脱出し、再び七階まで戻ってくる。今回は五階ではなく、三階で休んでからここまで一気に降りてきた。

 迷宮の外まで戻り、情報提供と収集を行い、わかったことだが、既に多くの迷宮探索者は最終階層まで攻略する意欲を失っているようだ。まず、七階のゾンビの出現するエリア、多くの探索者はゾンビという存在になれていない。そのため、ゾンビの臭い、腐臭に精神的にやられて駄目になってしまう可能性が大きいこと、そして慣れている、経験している探索者はわざわざゾンビを相手にする気になれない、ということだ。

 単に臭いと言うだけならある程度対処できるが、ゾンビはその肉、腐肉を攻撃で撒き散らしてしまう。それが付着すれば、武器や防具、服など、すべてのものが臭くなる。しかも、臭くなるだけならまだしも、腐肉が着いた部分は汚れ、なかなか落ちない。七階の手前には犬除けのようなにおい除けがあったり、清流があったりするが、それでもやはり攻略に参加する気になれないと言う探索者の方が多いだろうとのことだ。

 特に、その手前、六階の前半に鉱床竜や、鉱床竜が餌場とする鉱脈の類があることが分かっている。頑張ってそちらを攻略すれば稼ぎは大きいのだ。ある意味迷宮探索者としての本分から外れてしまうのだが、そもそも迷宮攻略を目的にしている探索者の方が現状では少ないと言うのが実情である。

 単純に攻略の難しさだけではなく、どこまで深いか分からないと言うもまた問題となっている。既に七階まできているが、さらに先があるとなると、本当にどこまであるか、底なしということはないだろうけど、わからないというのがまた攻略の意思を挫くことになっている。


「これ、どれだけ効果あるの?」

「ちょっとわかんねーな。でも、戻ってきたとき服とかに染み付いた臭いをちょっと近づけるだけで消せたからなー」


 前、最初に戻ってきたときは途中にある吸気口が匂いを吸い取り、その上で犬除けで匂いを完全に取り除くことができた。迷宮の配置には意味があることが分かるが、ここまで侵入者を意識したものだと少し怖いものがある。

 この犬除けの花が群生しているのも、先を進むためのものということだろう。


「しかし……ゾンビを倒していきますか? そうすると、付着する肉などで臭いが……」

「ゾンビから得られるものはない。動きも鈍いし、無視していってもいい……と思うが。他の魔物がいることも考えるとな」

「…………放置していくと後ろから襲われる」


 アリムラの言う通り、無視していくと途中で足止めされた時に危険だ。


「……アリムラ、魔力は大丈夫か?」

「問題ない……何をすればいい?」

「別にゾンビを完全に倒す必然性はない。要は追ってこられないようにすればいい」


 具体的に説明すると、足を折ればいい。這って追ってくるだろうが、早さは歩く時に比べれば段違いに遅いだろう。


「……効果はありますね。後ろにゾンビが貯まるのが怖いですが」

「問題はスケルトンやゴーストを相手にどの程度時間がかかるかだな」

「あんまり時間かけると追いつかれるしね」

「あー……俺やレッツェはスケルトンだめだよな」

「私も少し厳しいですね……」

「私とロズエル?」

「……魔術を使うとなると厳しい所だな」


 一応アリムラの魔術は途中の使用を控えていることと、七階での休憩で回復はしているはずだ。しかし、やはりこの先を攻略するのであれば魔術の使用は控えたいところだ。


「……ゾンビと同じ、限定的に使えばいい」

「スケルトンにか……頭部を破壊することだけを行えれば確かに有効ではあるが」


 スケルトンは頭部を完全に破壊すればいい。首を斬りおとす形でも行けるが、その場合はすぐに崩壊せず、スケルトンが崩れる前に頭を回収するとくっ付けて復活する。ゴーストはその布の体をある程度切り裂けば勝手にばらけて消えるのだが。


「流石にリーダーだけをスケルトンの相手にさせるのは問題です。多少魔力の消費はあるかもしれませんが、アリムラさんを頼りましょう」

「……頑張る!」


 珍しく張り切っている。別にアリムラが無理に頑張る必然性はないと思うし、普段からなんだかんだで魔術を使って活躍している。


「……わかった。頼むぞ、アリムラ」


 こくり、とアリムラが頷く。そうして、俺たちの七階攻略が始まった。やり方が決まれば行動は早い。七階手前の広場で犬除けを大量に刈り取り、持っていく。そして臭い対策をしてゾンビのいる七階に突入する。ゾンビの足を折り、切り裂き、駆け抜ける。ゴーストやスケルトンはなるべく早く倒し、ゾンビは足だけなんとかして潜り抜けていった。

 七階……前半の、不死系の魔物のいるエリアの攻略は容易だった。まずその数、ゾンビやスケルトン、ゴーストは大量にいたが、それ以外は全くいない。つまり、そこまで魔物の対策としては難しいものではない。前もって決めていた通りに行動し、途中手間取ったところはあったが、ゾンビに追いつかれることなく駆け抜けることができた。

 そして到達したのが、七階の……恐らく後半のエリアである。


「……でかい扉があるな」

「あー、なんか書いてあるぜ?」

「なになにー……七つの鍵を探せ……って書いてあるけど」

「七つの鍵……?」


 七回の後半、そこにあったのは身体を張って迷宮内に存在する設備を攻略させられる、鬼のようなエリアだった。

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