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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
dungeon
277/485

15

 迷宮の攻略は毎日というわけではない。一日から二日かけて攻略と帰還を行い、数日の休息をとることは珍しくもない。その休息期間に次回の迷宮攻略の準備や、情報収集を行う。迷宮の攻略において、探索者が情報を持ち寄る迷宮関連の情報を集め、提供する組織があるが、これは各国で連携をとって運営されている国際機関である。迷宮は他の大陸にも存在しており、それによる困難の解決は重要な案件だ。

 迷宮について分かった様々な物事はここに集められるが、もちろん特定の迷宮、今回においてはここの迷宮についての情報に関しても収集されている。迷宮の情報は探索者にとっては自分が他の迷宮探索者から一歩先を行くために重要なものだが、それがどの程度役に立つかわからないし、先に行ってしまった探索者が出れば意味がなくなる情報も少なくない。必然的に、迷宮の情報をこの機関に提供した方が儲かることもある。情報には報酬がでるから。

 しかし、今回の三階……いや、三層、三階と四階の合わせたエリアに関しての情報はない。迷宮側の意図は不明だが、今回の三層に関しては、迷宮側で三階と四階を合わせて作ったエリアだろう、という推測がなされているらしい。通常、迷宮は同じ階層でも違う様相をもっていることはあるが、縦に連なりそうなっているケースは少ない。縦に大穴のあいた吹き抜けのある迷宮というのは今まででも存在していたが、明確にエリアがつながっている例は珍しいそうだ。しかし、何故三階と四階をつなげている、とされているという推測になったかは、三階と四階の気候の差だ。

 三階の柱の上はたいそう難しく大変な足場ではあるが、全く攻略されていないわけではないらしい。最も、ほとんど先に進めてはいないらしいが。それで分かったことが、三階と四階、上と下で明らかに気候が違う点だ。吹き抜けのような繋がっている階層において、気候が違う例は今まで見られていない。これは吹き抜けの階層が複数の階で成り立つものではなく、一つの箱に突き出た足場が作られた形で成り立っているからと思われている。

 要は、個々の階層は足場のほとんどない三階の下に、森の四階が存在する大きな連結されたエリアだと言うことだ。このあたり、どうやって調査しているのかいろいろ気になるが、そういうは話は俺たちにとっては関係のない内容である。俺たちは迷宮をただ攻略するだけだ。

 そういった迷宮についての話を聞きつつ、本来の目的である三階……森と川についての情報を集める。今のところ、川まで到達した探索者は何人かいる者の、川を抜けた探索者の話は存在しない。一応先に進んだという話自体はあるものの、数人のメンバーを犠牲にしたうえで先に進んだという話であり、恐らくはその先で死亡している可能性が高いということだ。川を抜ける時点で数人失えば、戻ってくるときも同様である上に、人数が減ったうえで探索を行うのは難しい。

 結局役に立った情報はなく、自分体で川を捜索・調査するしかないだろう。川の調査、探索準備を行い迷宮へと向かい、三階へと降りる。


「ごめんなさい、少しいい?」

「……何の用だ?」


 森へ向かおうと思っていると、その前に立っていた女性の探索者に話しかけられる。見た目は若い、軽装の女性……恐らくだが、服装などの印象的に魔術師だろう。


「あなたたちは森の途中にある川まで、攻略できている?」

「できているが……」

「それなら、五日後、余裕があればでいい。手伝ってほしいことがある」


 手伝ってほしいこと、と言われても困る。まず内容が不明な点だ。とりあえず内容を聞かなければ頷くこともできない。


「内容による、としか言えないな」

「川を渡るのは難しい。だから、川を渡るための橋を現在作っている……らしい」

「らしい?」

「そう。実際に見たわけじゃないからわからない。ただ、魔物の嫌う物を建材に橋を作っている、とだけ聞いている」


 実に怪しい話だ。だが、仮にそういう嘘をつくとして、何の意図やメリットがあるだろうか。


「……それで、橋を作っているから何だっていうんだ?」

「川の大きさを考えると、橋の大きさは推して知るべし。運搬の大変さ、橋を向こう岸に渡す手間、そういったことを考えると手伝いが欲しい。そう考えるのは変な話じゃない」


 なるほど、確かに大きな橋を持ち運び、川にかけるとなれば手間と時間、人員が必要になる。そのため、川まで行ける探索者に声掛けをしているということか。


「仮にそれが本当だとして、その橋を架けることの手伝いをするメリットは?」

「……ない。たとえ手伝いがなくても、橋を渡すのは必要だから、確実に行われる。ただ、途中に邪魔が入ったりして橋を渡すのに必要な手間がかかる可能性は高い。そうなれば、向こう岸までの道が通じるまでかかる期間は大きくなる。すぐに向こう岸に行きたいのはみんな同じ」


 手伝いが増えれば、向こう岸までの道がつながる可能性は高くなる、早くなると言いたいのか。迷宮内に置かれたものは公共物みたいな扱いになるが、私兵を置いて使用の制限は出来る。最も、ものがものだから恐らくそういうことは難しくなる。例え橋をかけた人物の物であったとしても、先に行くことができるものであれば探索者がこぞって集まることになる。そうなれば、その騒動を聞いて迷宮について情報を集める機関側でむりやりにでも買い上げるだろう。結局のところ、頑張って橋をかけても一時的な先行にしかならない。それならば、使用制限などするつもりはないから他の迷宮探索者に手伝ってもらって早くは橋を架けたほうがいいと言うことだ。


「少し待ってくれ」


 レッツェ、レイズ、ジェリコと魔術師の女性から離れたところで話をする。


「どう思う?」

「……別にあり得ない話ではないですね。あの川の攻略はかなり大変です。もし、そういった道を作るなら大掛かりなものになるのはおかしくありません」

「でも、信用できる? 罠ってことはないだろうけど」

「嘘は感じられねーけどなあ……」


 疑念はあるものの、話に対しては否定的ではない。


「……なら参加するか?」

「そうですね……損は少なそうですし、すぐに渡れる可能性があるならいいかもしれません」

「今のところ、こっちも調査段階だし」

「報酬がないのがなー」


 返答は悪いものではない。概ね、積極的ではないが賛成、参加と行った所か。


「参加する、ということでいいな?」


 三人が頷く。女性の魔術師の側に行き、参加の意思を告げる。


「わかった。五日後、よろしく」

「ああ」

「……あ、名前。私はアリムラ」

「ロズエルだ」


 先に進む目途は一応たったというところだが、こちらはこちらで川の調査を行うとしよう。橋渡しが確実に成功するとは限らないし、参加者が多くなるとは限らない。そもそも、橋を渡すことが成功しても橋を壊される可能性はありうる。色々な手段、対策を考えておくに越したことはないだろう。

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