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迷宮の先行探索を終え、迷宮の内容について報告する。迷宮の大きさにもよるが、今回は明らかに侵入してきた人間を意識している迷宮だった。攻略には時間がかかるのが予測されるだろう。故に国側で迷宮の周囲に村を作ることが決定した。
迷宮が存在していると周辺の魔物が活発する厄介さがあるが、それに対する対策として、周辺に存在する魔物を排除し、魔物の生活圏を奪うと言う手段がある。同時に、人間の生活圏を作ることで迷宮への侵入と迷宮からの帰還を容易くすることもできる。村を作るのは魔鳥の卵取りなのだ。
最も、普通はわざわざ村を作ることはない。村を作るのにどれだけのコストがかかるかを考えると、簡単に村を作るなどと決めることは難しい。故に、先行して迷宮探索者を送り、そこから得られた情報から総合的な判断を下し、村を作るかどうかを決定する。その判断基準は様々だが、まず最初に門番として復活するオーガが采配されていること、その先に存在するのが迷路の迷宮であることだろう。普段見られるような迷宮の大半は魔物の住みかが巨大化しただけの迷宮だ。そういった特徴がある迷宮は危険度が少ないため、村を作る必要はないが、今回のように人間に近い、高度な思考のできる種族が迷宮を作ったと考えられるものは侵入する人間を意識し、対策していることがほとんどだ。故に難易度は高く、攻略に時間かかるものになる。
先行して探索をしてきたが、それぞれ自分の所属する探索者チームに戻った。これ以後は、迷宮の情報が迷宮探索者たちに伝えられ、各自で攻略を任される。現在迷宮攻略を行っているものはその迷宮の攻略が終わるまで新しい迷宮には来ないと思うが、他の攻略する迷宮がなくて暇をしている奴らは確実に攻略に乗り出すだろう。俺のチームも、今は結構暇をしていたので、今回できた迷宮の探索に繰り出すことにした。
改めて、迷宮に挑戦する。入り口で門番のような役目をしているオーガだが、この復活にかかる時間は一日草の花が次に移るまでの間に五回……正確には六回ほどになるタイミングで復活する。復活してから倒すまでの時間が次への復活する時間までのカウントに含まれていないことによる誤差が存在し、その誤差を考慮して次の花になるまでの間に六回ということになるらしい。何度倒しても、いつ倒しても、適切に復活するようで、初心者の迷宮探索者を奥に送るのが難しくなるため、オーガを倒せる迷宮探索者を募集し、常に迷宮探索初心者の行き来を止められる、広間での待機する冒険者を募集しているらしい。倒した後に初心者冒険者を先に行かせても問題ないが、戻ってきたときに復活していた場合の問題や、オーガとの戦闘中に入ってこられた場合の対処の問題などがあるからだ。
面倒な仕事だが、一定の収入にはなるようで、あまり迷宮探索に熱心ではないが、迷宮探索者としてい生きていて実力はそこそこある探索者が受けるだろう。
そんな話は置いておくとして、今俺のチームは二階の迷路を攻略している。事前探索をしていたとはいえ、やはり広い。さらに言えば、普通の迷路であれば行き止まりなんかを作るものかと思うが、行き止まりが全くないのもなかなか面倒だ。各通路がつながっているので行き来そのものは地図ができれば楽になるが、それまではあちらこちらに道があって、正解のルートが分かりづらい。うちのスカウトも、正確に地図を書けるわけじゃない。ある程度感覚的に迷宮の大きさ、距離を判断して地図を書くので、通路が本当に通った場所なのか、似たような場所なのかもわかりにくくなっている。
「ここ、作った奴は絶対陰湿な奴よ……近い位置に同じ作りの十字路を配置するんじゃないわよ!!」
「…………落ち着け。ここの広間はまだ見つけてなかったが、地図上ではどのあたりだ?」
「ここよ。ちょうどすっぽりとはまる位置だからいいわね。この空いている所って何かあった?」
「そこは何もなかったと思いますが……地図上では完全な空きの位置ですね」
「何か気持ちわりーな、それ。他の場所は全部つながってるのに、そこだけ変に空いてるなんてよ」
地図を見ると、明らかに一か所だけ、まるでそこに部屋があるかのような空がある。最も、そのまわりは一度行ったはずだが、扉のようなものはなかったはずだ。可能性だけで言えば、その周りに何らかの仕掛けがあり、その空いている場所に隠し部屋がある……という可能性もある。
「怪しいけど……怪しいけどねえ……」
「リーダー、どうします?」
「帰りに調べればいい。今は探索して地図を埋めるのを優先する」
「だとよ、レッツェ。気になるのはわかるが、置いとけ」
「わかったわよ……」
迷路を進んでいると、何もない広間や宝箱のある広間などがある。宝箱は開けられていたものもあったが、次に来た時には閉じて中身が存在していた。迷宮にはたまにこういうものはあるのだが、一体どういう意図で配置されているかが不明だ。
魔物も迷路を進んでいると遭遇する。宝箱の存在する広間なんかにも、宝箱を守るように配置されていたりしたが、この迷路内に配置されている魔物は以前確認したとおりだ。不思議なことに、それぞれで群れをつくらず、何故か複数の種類の魔物で群れを作っていたり、単体で徘徊していたりとかなり謎が多い。魔物の生態はわかっていても、やはり迷宮外に存在する魔物と迷宮内に存在する魔物はまったく違う。
「おっと……行き止まりだぜ?」
「何?」
「ジェリコ、ほんと?」
「ああ……でも、多分ここは端じゃねえかなぁ」
「地図上ではどうですか?」
「北にかなり進んできたところだな……ああ、ここは多分端だろう」
地図で核にする限りは北方向に進んで東よりの地点。真横に進んで真っ直ぐ壁沿いだ。ここの手前の分岐は十字の道ではなく、丁字の道だった。恐らくだが、北端の壁沿いになるのだろう。
「リーダー、壁沿いに進む? 迷宮の階段って壁側にあったっけ?」
「その迷宮によってまちまちだな。だがレッツェ、お前が迷宮を作る側に立って、入り口の階段が壁側にある場合、下に降りる階段はどう置く?」
「そりゃあ、壁側に作るかな……でも、ここ作ったのって陰湿だし……」
「でも、ある一定の主義はあるようですし……壁沿いに調べていきましょう」
「まあ、探索は明日に回そうぜ? 日入草が咲いてきたぜ」
日の入り草が咲く、ということはもう日没になるということだ。地図は作ってあるので迷うことはない…………と思うが、結構な距離もある。
「そうだな、ジェリコの言う通り今日は戻ろう」
「りょーかい」
「明日はどうしますか?」
「次は三日後だ。それまでは休んでろ」
「まだできたばっかで村に遊ぶとこねえんだよなぁ……」
ジェリコが愚痴る。気持ちはわかるが。
「確かにお金はあってもねー」
「一緒に行くようなところもないですし、部屋でゆっくり休むくらいしかできませんね」
レッツェとレイズは夫婦……にはまだなっていないが、そうなる前提の交際相手だ。チーム内の恋愛は場合によっては危険だが、最初からそういう状態だったのでそのあたりは安全だ。
「ちっ」
ジェリコが分かるように舌打ちして、不満を示す。本気で不快に思っているとかそういうことではないが、目のまでいちゃいちゃされると流石にこちらとしても対応に困る。せめて俺やジェリコにも相手がいればな……




