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何故ループが起きたかわからない。いや、推測はできる。この世界に自分は神によって転生させられた。

その神様が何らかの力を付与した、という可能性がある。あの神はお前の願いを叶えてやろうと言っていた。

それは転生のことではなくこのループ現象のことではないかと考えることができる。

もっとも、できるのは結局推測だけなのだ。事実は不明だ。そしてそれを考えることに意味はない。

ループの原因を考えるのではなく、ループしてしまった、これから先のことをどうするべきか、と考えるべきだ。


まずループしてしまった理由に関しては、自分が死んでしまったことが原因だろう。

つまりこれから先何らかの理由で死んでしまえば今日に戻ってくるのかもしれないということだ。

このループが1回のみなのか、それともあの戦場を超えない限りはループし続けるのか、あのとき以外の何かで死んでしまってもループするのか、そういう諸々への疑問は残る。

あの戦場さえ経験しなければ死なない、のであれば答えは単純で冒険者にならなければいい、ということになる。

もっともその答えにたどり着いても、だから冒険者にならないと簡単に言えるわけではないのだが。

他に仕事に就ける職業がないという問題だ。街の人間ならば商家にコネを持っていてまだ商人への道を選べるが、農家では無理だ。

売り込んでなれるのではと思うかもしれないが、意外とそういった冒険をする商人はいない。探すのも大変だし、支度金を考えるとあまり長く無職でいられるものでもない。

結局今回も冒険者の道を選ぶしかないのだ。

あの戦場に出なければいい、と言われるだろうが、あの時の招集は国が行ったものだからまず無理だ。

それに自分だってなんだかんだで16年も過ごした国を捨てるほど薄情ではない。

一番できることはあの戦場であの死神に遭遇しないことだ。そうすれば何とか生き残ることができる可能性はある。

それが一番可能性のある突破条件だ。


そんなふうに冒険者ギルドのある街に向かう道中、ずっと考えていた。






冒険者ギルドには前の時に来た時よりも2日も早く着いた。前回での冒険者としての経験があり、そのせいで道をスムーズに移動できたからだ。

やっぱりここに来るんだな、となんとなく可笑しく思いながら受付で登録をした。

登録して掲示板にかかっているクエストを確認する。そうしていると声をかけられた。


「ちょっとちょっと、あなた冒険者になったばかりでしょ?」


女性だ。後ろに二人、男性がいる。男性の一人は熟練の冒険者の様相だ。今話しかけてきた女性ともう一人の男性は大体自分と同じくらい。


「そうだけど……」

「まだチームには入っていないのよね? よかったら私の入ってるチームに入らない?」


チームの勧誘でメンバーの女性冒険者に勧誘を任せる手法はよくあるらしい。女性相手だと男はどうしても甘くなるし、印象もいい。

いきなり男が肩を抱いてきて俺のチームに入れとか言われても怖いだけだろう。

さて、どうするか。実はこのチームのメンバーに全く記憶がない。自分がこの街に来たときはこのような勧誘はしていなかった。

それ以後も見た記憶がない。つまりこのメンバーは前回ではこの街にいたが自分が来た時にはいなくなっていたということだ。


「いいよ」

「ありがとう! クルドさん、参加してくれるって!」


女性が熟練の冒険者と思わしき男性に話しかける。恐らく彼がパーティーリーダーなのだろう。


「勧誘を受けてくれて感謝する。実は私たちが住んでいた村の出身者で組むことにしたのだが、私の冒険者としての実績のせいで教導依頼しか受けられなくてな」


冒険者の一人、または複数でもあり得るが、強い冒険者の仲間になることでその冒険者の実力に合わない実績を身に着けることが可能となってしまう。

そういったことを回避するためにチームの中で実績の高い冒険者がいる場合、その冒険者を指導役として依頼を行う教導依頼を数回受けなければならない。

今回その教導依頼を受けざるを得ないが、教導依頼は最低人数が設定されており、その人数以上のチームを組まなければならない。

これは多くの対象を指導させるためだと思われる。


「クルドさーん! 二人来てくれるってー!」

「うむ、これで六人。規定人数以上だ。ようやく教導依頼を受けられるな」


どうやら規定人数は超えられたらしい。しかし、五人での教導依頼、おそらく前回は自分以外の五人で参加したのだろう。

そしてその冒険者たちはその後ギルドで見なかった。事前の準備はしっかりしておこう。考えられる危険はなるべく対処できるように。







自己紹介することになり、名前と出身を教えた。

熟練の男性冒険者はクルド、最初から一緒にいた男性と女性はロックとハンナ、後から来た男性二人、短髪のほうがカイザ、長髪のほうがクーゲルらしい。

依頼を受け、明日の朝の鐘が鳴った時に集合と言われ今日は解散した。実は前回教導依頼を受けている冒険者を何度か見たことがある。

単純に時間厳守の要項でもあるが、ここで解散するのは自分で冒険者として活動するの何が必要かを理解させるためでもあるらしい。

とりあえず、ギルドの受付に提出された依頼の内容を確認する。依頼の遂行にかかる時間次第では保存食や簡易的な寝床みたいなものも必要になる。

そして依頼内容、今回は魔物の討伐だがこの討伐対象についても重要だ。何をしてくるのか、何の武器が有効か。それによって必要とするものも変わってくる。

教導依頼だからそこまで大変なものではなく、本当に初歩ともいえる相手だ。自分の初心者時代にも何度も相手にした。最初は苦労した記憶がある。

依頼を確認し買い物をする。依頼に必要なものは買った。あとは基本の武器と防具だ。

だが、ほかにも色々と買っておく必要がある。何が起こるかわからないのだから。

依頼対象の魔物は初心者でも討伐できる魔物だ。熟練の冒険者がいてなぜこのチームが返ってこなかったのか。それは今回の依頼とは別の要因があるからだ。

何が来るかはわからない。何が来てもいいようにしておくべきだ。

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