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自分は今戦場にいる。


話をしよう。今から16年ほど前、自分はこの世界に転生した。

そこそこ転生ものの小説は見てきたが、この転生は俗にいう神様転生というやつだ。

ただ、そうであると分かっているだけだ。転生して何の意味があるのか、どういう意図で行われたのか、そんなことは分かっていない。

いきなり自分が死んだと言われ、説明もなしに「お前の願いを叶えてやろう」と言われ、この世界に放り込まれた。

別に転生願望があったわけでもないのだが、よくわからないまま転生させられたようだ。

そうして自分は16年前にこの世界に生まれた。


15年間、普通に生きた。いや、普通と言ってもこの世界の田舎の農家の普通、といったところだ。

15歳、雪の降る季節が終わり、雪解けが始まった風の季節、成人したということで家を出ることになった。

他の農家の家々でもそうだが、家の畑は長男が継ぐことが決まっている。運が良ければ次男が手伝いとして残ることもあるが、三男以降は家を出ることになる。

この世界では医療の発達度合がそこまで高くなく、子供が死ぬことも珍しくないので多産だ。自分は四男だった。

幸いなことに、家を出る際に支度金をもらうことができた。貧乏な農家では支度金なんてもらえないことも少なくないらしい。

自分は前の世界で学生としていろいろ学んでいたこともあり、ほかの子供よりも頭がいい、ということで安心して送り出された。

家を出て自分は冒険者ギルドに加入した。この世界では魔物と呼ばれる動物以上に危険な生物や迷宮と呼ばれるような色々な物資や遺物の眠る建造物がある。

そういったものの討伐や探索を行う冒険者はいつでも人手不足だ。誰でもなれるが、死の危険がある大変な職業だ。

何故冒険者ギルドに入ったかというと、それは憧れだろう。異世界で冒険者として過ごし、大成する。英雄譚だ。

冒険者になる人間の多くはそんな馬鹿だ。そして自分もそんな馬鹿だった。


初心者冒険者は多くの場合、先達がいなければその半数が死ぬと言われている。

自分はなんだかんだで冒険者としてどうすればいいのか、正しい知識ではないが参考になるさまざまなケースを小説で読んだ。

その全てがそのまま使えるわけではないが、ある程度役には立った。そうして初心者ながら生き延びていくことができた。

仲間は少なかった。いなかったわけじゃない。ただ、積極的に仲間を作ることはせず、同時期に冒険者になった同期ともいえる相手は殆どが死んでいた。

冒険者のパーティーを転々とする形だったが、何とかやっていった。

そうして1年と少し、冒険者として活動した。そしてある日、冒険者すべてに対しての強制に近い招集があった。


冒険者の本分はその名の通り冒険だ。その活動は魔物の討伐や迷宮の探索、薬草や鉱脈の調査など、冒険や探索などが主だ。

だが、冒険者ギルドの役割の一つとして、国に存在する冒険者という戦力を管理するということがある。

何故戦力の管理という役割があるのか。それは他国との戦争において冒険者を戦力として使うためだ。

もちろん兵士や騎士といった存在も国には存在する。だが、国を守るために戦力になる存在を使わないわけもない。

そうして冒険者も戦場へと参加することになった。もちろん、冒険者である自分もだ。

人と人の殺し合いは冒険者として活動している中でも小規模ながらあった。人殺しをする覚悟そのものはできていた。


ただ、その戦場に死神がいることは知らなかった。




前のほうにいる冒険者が半分に切断されるのがここからでも見える。

かろうじて見えるが、その振るわれている武器は大鎌だ。それが一振りで何人もの冒険者を切り裂く。

冒険者の上半身が飛び交い、腕や頭が上から降り注ぎ、両断された身体が後ろに倒れこむ。

腕を失い、足を失い倒れた息のある冒険者も一振りで地面ごと切り裂かれその命を絶やす。

その死神と言える存在に多くの勇気ある冒険者が立ち向かい、恐怖にかられた冒険者たちが逃げる。

血で染まる舞台とまだその舞台になっていないこちらの冒険者たちとの間には一種の空白地帯ができており、鎌の閃きがよく見える。

周りの冒険者はそのあまりの惨状にまごつき、何人かは逃げたりその場で腰を抜かしたりしている。

向かっていく冒険者はいない。あまりにもその大鎌を扱う存在が恐ろしかったからだ。

誰かが「化け物だ!」と叫んだ。冒険者たちにその恐怖が広がり、逃げ始める冒険者が増える。

だがその行動も遅かった。既にその惨劇を引き起こしたものの周囲に生きている者はいなかったからだ。

死神がこちらへ駆ける。なんとか動きこそ追えたが、それだけだ。

その鎌の閃きが自分を上下に分断してからそれを理解した。

自分が死ぬ前に見たのは二つの尻尾のように見えた。それが、自分の生きていた最後の記憶。

その時、確かに自分は死んだのだ。











「はっ!」


意識が覚醒する。わずかに眠気があるが、そんなことは気にならなかった。


「ここは……」


今さっきまで自分は戦場にいたはずだ。そこで確かに殺された。感じた痛みはごく短い時間だが、確かに痛みを感じたことは覚えている。

しかし、今自分は寝床で寝ていた。


「……家?」


自分が寝ていたそこは自分の家だ。この世界においての自分の家。

朝日が差し込んでいる。少し肌寒い。今は風の季節の半ばだから朝でもここまで寒くなることはない。


「いったい何なんだ……?」

「おや、おきてるのかい」

「母さん……おはよう」

「おはよう。早く着替えな。着替えたら居間にきなさい」


こくり、とうなずく。母はすぐに部屋から出て行った。

夢だったのだろうか。それにしては、現実的だった。


「まあ、とりあえず着替えよう」


今はとりあえず日常を始めよう。そう思い着替えを始める。

その日常はすぐに終わってしまうのだが。




自分が家を出た日のことを鮮明に覚えている。支度金をもらうことからその時に家にいた家族、朝に起きてきた兄弟の順番、朝食。

それは色々だが、その時のことはとても印象に残っていたのだろう。

今日、自分は成人した。自分はすでに一年以上前に成人していたはずだ、と思ったがそれは夢の中の話だ。

夢、夢というには現実的だった。いや、あれは現実だった。

自分がいまここにいるのは、自分が戻ってきたからだ。


「ループ……ってやつか」


巻き戻り、繰り返し。そういった現象が、自分に起きたことだった。

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