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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
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58

「不老不死なんてなっていいものかしら? 長く生きるのってつらいわよ?」

「……そういう存在から言われると、実感がこもってるって思うけど、知ってる。わかってる」

「本当かしら。経験もしていないのに分かるわけがないわ」


 確かにそうだと自分でも思っている。だが、これは俺の目的、願い、悲願というほどではないが、求めていたものだ。


「まあ、そういうものだってのはわかってる…………それでも、これは譲れない。でも、まあ、一応いざというときのために、完全な不老不死じゃないけどさ」

「そう…………」


 不老不死の魔法とは言っても、不老不死とは言っても様々だ。例えば、一定の時間を繰り返す形での不老不死、魂を転生させる形での不老不死、肉体が死んでも、本来の姿のまま復活する不老不死、これは老化や肉体の劣化を回避し、年齢の経過による死や病気による死を失くすもの、癌に関しても対応しているなかなか便利な魔法だ。ようは、物理的に殺されなければ死なない不老不死ということだ。寿命が無限の不老長寿、といってもいいのだろうか。


「……まあ、そういう人の事情に関してあれこれ言うのも変よね」

「そう言ってくれると助かる」

「でも、大丈夫? あなたにはあの獣人の子もいるでしょう? おいていかれることになるわ」

「それくらいの覚悟くらいしてるさ。だから、残すものは考えてる」

「……あの場であれだけ大きなことを言ったのって、あの子のためなの? とんでもないわね、本当に」


 エリテのために、獣人の集まる国を作り残す、確かにとんでもない話だ。そもそも、こんなものを作って残していくのもエリテにとっては重い話になるだろう。


「国を作るとは言ったけど、本当に作れるのかしら?」

「建物とかは余裕でできるし、土地の開墾とか、植生を弄るのとか、魔法を使えば全く問題はない」

「…………あなたの場合、本当にできるから困りものよね。どうやってそれだけの魔力を得たのか謎に思うわ」


 それに関しては秘密にしたいところではある。ただ、セディアは色々魔法に関しての話をしているせいか、こちらに対して色々と疑念を持っている。少しは話した方がいいかも、と思いつつ、本当に話していいかとも思ってしまう。本音を言えば、全部話してしまいたいところでもある。


「……言ってもいいかなあ」

「言いたければどうぞ。私からは無理に聞いたりはしないわ」

「……まあ、いいか」


 色々と、この件に関しての気持ちはある。だから、ある種同じ話を、同じ知識、共有できるものがある、セディアに、すべてを話す。







 セディアにこの世界に来る前の話、自身の死の話、神と会った話、神から魔力と知識を貰った話、そしてこの世界に来てからの話をした。こういった話は、今まで自分の中でのみ抱えていたことであり、この世界で一番長い間一緒にいたエリテにすら話していない内容だ。セディアのことを信用している、信頼しているかというと少し違う気がするが、セディアはこの自分、本当の自分と、今この時間、人形という壁を作ったあとに本当の自分と話している。だから、ある意味本音でぶつかれると言うか、自分自身でぶつかれる相手、といった感じなのだろう。


「………………本音で言えば、荒唐無稽、信じられるような話ではないんだけど」

「だけど?」

「信じる以外にないでしょうね。全部そのまま受け入れれば、確かに知識と魔力に関して納得は行くわ」

「そっか」


 まあ、信じてもらえなくてもいいと言えばいい。ただ、こう、話したかったから話しただけだ。そんな舞台、環境、タイミングが合っていたとか、そんな感じだったからというだけだ。


「でも…………それだけの知識、魔力が本来自分自身の能力でない、与えられたものっていうなら、少し心配ね」

「……まあ、そうかもな」

「そういう所が一番心配なんだけど……」


 心配と言われても困る話だ。確かに、もともと魔力や知識に関しての不安は自分自身でもある。暴走の危険、特に神様が言っていた限りでは世界を滅ぼすことができると言うだけのものらしいし。


「はあ。なんというか、言わせてもらうけど……性格面でも、なんというか……なんというか……いえ、いいわ」

「いや、はっきり言ってほしいんだけど……」

「言わない。自分で自覚があるのかは知らないけど。とりあえず、私が死ぬまで、あなたが暴走しないように付き合うわ」

「……え?」

「はっきり言って、あなたがどういう存在なのか、不安というか……怖いと言うか……だから、私が安心するためでもあるわ。私が死ぬまで、あなたの行く末を見届ける」

「……えっと、愛の告白?」

「ちっ、ちがうわよっ!? そういうのじゃないわ……別にあなたのことは嫌いじゃないけど、そういうのじゃないわ」


 なんというか、そうはっきり断られると困る。いや、でも……


「死ぬまで、か」

「何? 問題あるかしら?」

「ずっと、一緒にいてくれたりはしないのか?」

「……はい?」

「俺と一緒に、永遠を生きてくれたりはしない?」

「……何、さっきのお返し?」

「いや、本音かな。俺は、セディアのことを……恋愛的な意味合いとは少し遠いけど、好きだから」

「……な、な、何言ってるのよ!?」

「返事は魔王を倒した後でいいよ。それじゃあ、送り返すから」

「な、ちょっと待ちなさい!?」


 無理やり魔法でセディアを元の場所に送り返す。流石に、今の精神状態でまたいきなり来ると言うことはないだろう。自分の発言に対する返しと、こちらの唐突な発言で若干混乱しているだろうし。


「はあ。永遠を生きる、誰かと一緒なら、って思う所はあるかな」


 ただ、それがセディアでならなければならないと言うわけではない。ただ、セディアならいいな、とは思うかもしれない。短い時間だけど、魔法に関しての話はしていて楽しかったし。恋愛感情かと言われるとちょっと困る話になるが。

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