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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
wizard
234/485

37

 迷宮への挑戦は何度も行っている。初日は四階層まで行ったが、そこまで速いのは初日だけだ。次の日は六階層には入れたが、その次の日は七階層の最後まで行くのがやっとになった。そして、今は九階層を攻略している。八階層はすでに攻略したが、魔物の強さもあって時間がかかった。七階層目からはマップが複雑化して、点対称の形態は同じだが、下へ移動する階段ではなく、隣のエリアへの道へとなっていたからである。七階層からはエリアが四つあり、降りてくるエリアはそのうちの一つ、そして下への階段はどこかのエリアの端にある。最低でも二エリア攻略、最大で四エリア攻略するのが必要になるため、どうしても攻略には時間がかかる。

 俺たちはどうしても夕方には迷宮を出て宿屋で食事をしているのもあり、帰りの時間も考慮しなければいけないので攻略には時間がかかる。迷宮内に残る選択をとるのであればいいのだが、それはそれで大変だ。結界でも張れば安全だが、迷宮内だと魔物は一定時間で出現する。実は一度試したが、一度出た魔物がいても再出現は変わらず行われるので、迷宮内に残ると魔物が増えすぎて危険すぎるのである。

 あれから迷宮攻略者と少し会話することがあり、迷宮内の攻略についての話を聞いたが、どうやら迷宮はゆっくりと一階層ずつ地図を作り攻略していくようだ。複数チームで攻略することはないわけではないようだが、それでも最後の階層、魔王の力の入手は一組の冒険者たちの特権に等しい。山分けしないのかとも思ったが、そのあたりは複雑だ。人による部分が大きく、山分けしてもいい人間同士は組んで攻略しているという話だ。


「ねえ、ジュンヤー」

「なんだ、エリテ?」


 現れた魔物を倒し終えたエリテが疲れた様子で声をかけてきた。奇数階層の魔物は一つ上の階層の強化された魔物よりは弱い。なので、奇数階層の攻略は偶数階層よりも楽なのである。それでも、ここまで深い階層まで来ると流石に戦闘も大変になっている。エリテにとっては自身を鍛えるのに都合がいい状況だろう。


「もう戦うのつらいよー。ここまで潜るのも時間かかるしさー。迷宮攻略やめない?」

「…………」


 確かに修行に都合がいい状況である。だが、エリテも流石にずっと戦い続けるのはつらい。特に深い階層での強い相手との連戦はつらいものとなってきているようだ。めきめきと実力が上がっているのは傍目でわかるのだが。


「攻略は続けたいが……やっぱりきついか?」

「毎日戦ってたらきついに決まってるよ」

「それもそうか」


 やはりたまには息抜きも必要かもしれない。それか、急いで迷宮攻略するかだ。


「……一つ、提案をする」

「え?」

「迷宮の外に出て、息抜き期間を得て、また迷宮に入る今のような生活をするか。それとも、迷宮を出ずにここから隠れ家の方に戻り、次の日には戻る急ぎの迷宮攻略をするか」

「……何か違うの?」

「前者は休憩を挟むが、今までと同じ。また同じ風に迷宮に潜る。後者は、迷宮内にいるが、戻らずそのまま全部時間を先に進むのにあてる。今は戻るのにかかる時間も考慮してちまちまとした攻略になっているだろう? それを全部攻略にあてる。寝るときは隠れ家の方に移動する」

「ここから隠れ家に行けるんだね」


 そう言ってエリテは何か考え始めた。どうするかを決めるつもりだろう。だが、ここで悠長に考えていると魔物が出現するので早く決めたほうがいい。


「ねえ、ジュンヤ」

「なんだ?」

「いつも隠れ家に移動してるけど、隠れ家から街には戻れないの? そもそも、街に直接戻れないの?」


 少し考えてみる。つまり、いつもは隠れ家への移動の魔法を使っているが、それをここでやる。それを隠れ家ではなく、街への移動にする、問題は、迷宮への入出を記録されていることだ。それもあって街に直接戻ることは出来ない。


「いや、入り口を通らないとどうやって戻った、ということになる。だから、隠れ家に行くのは問題ないが、街に直接行くのはダメだ」

「そっか。ジュンヤ、迷宮攻略ってやらなきゃダメなの?」

「個々の自由……だけど、途中で放棄したらもったいないだろう。せっかくここまで来たのに」

「うーん……そうだけど……」


 エリテと俺の考え方の違いはある。そもそも、迷宮攻略そのものは俺が望んだことで、エリテが望んだことではない。エリテの糧になっても、エリテの目的ではない。そういう意味合いでは、エリテは迷宮攻略に参加する必然性はない。


「……うん、ジュンヤ。早く終わらせよう」

「つまり、隠れ家に戻って全部の時間を攻略に充てる、ということでいいか?」

「うん。あんまり長い間やってると嫌になってくるから」

「……わかった」


 エリテがそうする、と決めたのならば、俺も少々急ぐとしよう。エリテに負担をかけすぎるのはよくないだろう。


「なら、俺も戦闘に参加する。最も、エリテの戦う相手をなくすようなことはしないつもりだ」

「え、いや、ジュンヤが全部相手をしてくれるならそうしてくれていいよ?」

「エリテが強くならないだろ、それじゃあ」

「うー……確かに強くはなりたいけどさあ……」


 それからは急ぎで迷宮を攻略する。魔物の半分は俺が瞬殺し、残りの相手をエリテがする形だ。数も減れば戦う時間が半分になるか、というと、むしろ半分以下になる。複数と相手をする場合、数が多いほど厄介になるからだ。四人と戦う時間の半分が二人と戦う時間と同一になるわけではないだろう。

 また、道案内の魔法も使う。道案内と言っても、明確に道を案内するのではなく、探し物の方角を示す魔法だ。この場合、下への階層への階段となる。どの位置に階段があるかは決まっているが、四つのエリアのどこにあるかがわからないので厄介だが、これでかなり楽になる。エリテには言っていないが。言ったら怒られそうなので。

 そういった形で二日間攻略を続け、十二階層を攻略した。流石に十階層からは、三体をこちらが始末する形となっていた。ここまで来ると、魔物の強さも相当なものとなっている。エリテの成長が著しい状態だ。


「……ジュンヤ、ここ変じゃない?」

「そうだな、だいぶ今までの階層と様相が違うな」


 今までの階層は煉瓦を積んだような壁になっていた。しかし、ここは違う。適度に溝の入った真っ白な壁。煉瓦と同じように、均一、傷一つなく、ムラ一つない異常に綺麗な壁だ。そして、降りてすぐに真っ直ぐな道が続いている。この階層には今までの階層のような魔力石も見られない。十二階層まではしっかりと魔力石があったのだが。

 どうでもいい話だが、他の人間の手による迷宮攻略は九階層までのようだ。最も、九階層入り口付近まで、みたいだが。魔力石が折られているかどうかで判別できる。特に入り口付近の魔力石は判断基準としてはわかりやすい。


「扉……」

「ねえ、なんか怖いよ……」


 嫌な予感、というやつだが、俺も感覚的にその予感がある。階層的に明らかに違う階層、一直線の通路に、嫌な予感のする扉。確実にこの先がボス部屋、最終階層の最終エリア、つまり魔王の力のある場所だ。


「エリテ、身を守ることを最優先に。戦闘には絶対に参加しなければならない、ということはないからな」

「……この先に行くの?」

「むしろ、ここの先に行かなきゃだめだな。この先にあるものが目的なんだから」


 魔力石も素材としては悪くない。魔王の力そのものは素材にする気はないが、教会にもっていく必要はあるだろう。魔王に復活されると困ったことになりそうだし。扉の前に立ち、手をかける。両開き、外側に開く扉だ。


「開くぞ。いきなり襲い掛かられるかもしれないから準備だけはしておけ」

「うん」


 エリテが戦闘の準備をし、それが終わるのを確認して扉を開けた。

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