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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
wizard
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35

「やあっ!」


 ガリッと耳障りな音をさせてエリテが迷宮内に出没する魔物を切り裂いた。迷宮内の魔物は最初は一体、次に二体、最終的に同じ魔物は四体まで増えて襲ってくるようだ。四体時点でそれ以上は増えないが、同じ階層にその魔物よりも強い魔物がいる場合、その魔物が襲ってくるようになる。こちらもまた四体で、最終的に階層で一番強い魔物が四体襲ってくることになる。

 しかも、この襲ってくる時間が定期なのだ。一応時間を計ったうえで調べたが、本当に定期に来る。魔物の増え方、強さ上げた魔物になったうえで数がリセットされる、定期に襲ってくる魔物、魔物の合流もない。どうも迷宮というのは奇妙に見える。

 何より、一番の奇妙さは魔物だろう。教会で地上の魔物とは違う、という話は聞いたが、本当に地上の魔物とは違う。

 まず、見た目だ。見た目は主に動物や虫の見た目に見える。ただし、それは形、形態的にだ。何がおかしいかというと、機械な点である。これは動きが機械的、というわけではない。本当に機械の見た目をしている、という点だ。最も、機械的な見た目と言っても金属質ではないようだが。明らかに生物ではないことは一目瞭然にわかるが、素材は不明だ。エリテの剣は一応切れ味を上げたが、耐久力が高くても切れ味は元々の切れ味も会って低い。その切れ味の剣でもある程度簡単に切り裂ける程の魔物だ。耐久力は低い。

 そして、魔物が死ぬと溶けることだ。溶ける、というのは呼び方的には正しくないだろう。ばさりとばらけて塵に帰るような感じだ。空気中に溶けるとかそんな表現が近いのかもしれないが。生物ではない、機械的であるのに死体が残らない、塵へと還るのはもともとの異常さを考えてもさらに異常、奇妙に感じられる。


「ふう……終わったよー」

「ああ、よくやったな」


 エリテが魔物を倒し終えた。この階層の魔物はすでにエリテの敵ではない。四体出てきたところで楽に倒せる。今のところ最も強い魔物になっており、四体以上には増えていない。恐らくだがこれ以上この階層に残っていても仕方ないだろう。

 マップもそこそこ埋まっている。迷宮の構造はランダムではないようで、既にと追った道のりなんかを考えても、恐らくは左右か上下に対象か、点対称かの形になると思われる。入り口部分は中央ではなく左下の位置づけなので、対象位置と考えるならばマップ上右上の位置だろう。マップの構造的に位置が分かりやすいのはありがたいが、推測が当たっているとも限らないので不安はある。


「それじゃあ、先に行くぞ。この階層だともうエリテの相手にはならなさそうだしな」

「そうだね。もう倒すのに苦労しないし。でも、あの切ったときの音がなんかやだなー」


 確かに切ったときの音は鈍い削るような嫌な感じの音がする。ガラスをひっかいたときの音なんかよりは不快感はましだが、それでもあまり好んで聞きたい音ではないだろう。最も、魔法で倒したりすれば鈍い削るような音はしないし、必要ならば鈍器を使えば破砕音しかしないと思う。ただ、持っている武器が剣だけなのであれだが。こういう時やいざというときのために鈍器なんかの武器も持っていたほうがいいかもしれない。


「確かにな。ただ、その剣で殴ったりはするなよ。頑丈だけど、流石に殴るのに使用したらいろいろと問題が出そうだからな」

「うん、それは当たり前だよ」


 当たり前か。普通は剣を鈍器に使うことはないだろうし、当然と言えば当然だろうか。俺ならば横にして鈍器に使いそうだ。

 新しいマップを埋め、トラップを回避しながら先を行く。やはり点対称の構造であるらしく、一度埋めたマップの部分を参考に簡単に行くことができる。罠も同じ位置なので余程のことがない限りは大丈夫そうだ。


「あ、階段だ」

「この先は次の階層だな。魔力石はこの階層にはなかったが……この先にはあるのかな」


 ギルドで言われていた魔力石はこの階層で見ることはなかった。もしかしたらまだ埋めていないマップの場所にあるのかもしれないが、流石にそこまでないものかとも思う。


「とりあえず行こうよ」

「そうだな」


 階段を下り、下の階層に行く。階層を下りたところでばったりと別の組の冒険者と出会った。軽く会話をしたが、特に情報は得られなかった。最も、情報は重要な資源だから簡単には漏らさないだろう。

 この階層の魔物はどうやら最初の階層と同じ魔物のようだ。ただし、強さは上がっていた。最初エリテが油断して苦戦になりかけたことからわかったのだが。


「見た目同じなのに……」

「動きが速かったな。避けるのも上の奴よりも達者だったし。力はどうだ?」

「同じ姿だったけど強かったよ。しかも結構堅いし」


 全体的にステータスが向上している、とみていいのだろうか。エリテだけでは少し不安が残るが、かといって俺が参加するのもどうだろう。変わらずマップの作成と罠の探知は行うが、戦闘には参加しない。


「エリテ、魔法かけるから止まって」

「え、うん」

「力と身の守りを強化せよ。"パワーアップ"」


 普段から自分にかけている身体強化の魔法である。ずっと使っていて分かったのだが、この魔法、身体能力を高めるということで力だけでなく防御力も上げるようなのである。もともとのイメージは力を上げるだけの魔法だったはずなのだが。


「うわあ、なんかすごい。力が湧いてくると言うか……でも、なんか剣が軽く感じて使いにくいような……」

「そのあたりは慣れが必要かもな。でも、力や防御力は上がるから、少しは戦いが楽になるぞ」

「うん、ありがとう!」


 最もエリテには防御力は必要なさそうなのだが。今まで回避を優先していたためか、ほとんど攻撃は受けていない。受けても防具で守った部分がほとんどだ。さっきの不意打ちは少々危なかったが、それでも防具で受けられている。

 そのまま二階層目の探索を進める。時々壁に突き出た水晶があるのが見える。だが、その多くが途中で折られていたり、残っていてもかなり短い長さだったりする。恐らくだが、この水晶のようなものが魔力石なのだろう。


「魔力石そのものは幾らか見かけるが、ほとんど折られてるな」


 実に困る話である。魔力石は攻略階層の証明になるものだ。恐らくはギルドに売るために折られているのだとは思うが、あまり取られすぎていると攻略階層証明用の魔力石が回収できない。


「どうするの?」

「……見かけたら回収するが、場合によってはもっと下に行って回収するしかないな」


 低階層だからたくさん持っていかれているのだろう。下へ行けば行くほど折られている魔力石は少なくなるだろう。最も、攻略階層を示す必要はない。依頼に必要だから攻略階層を示さなければならないのかもしれないが、俺たちは無理に依頼を受ける必然性もない。優先すべきは攻略だろう。


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