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その日は武器を購入し隠れ家に戻る。何をやるわけでもないが、今まであまり活動していなかったのもあり、エリテの睡眠は早かった。
「子供は寝るのが早いとは言うが、そんな年齢でもないよな。こっちでは寝るのは早めなわけだけど」
この世界では元々いた世界とは違い明かりなんてものはほとんどない。夜は暗くなったら起きているままということはなく早く睡眠につく。俺もその生活には慣れてきていたが、今日は少々起きている理由がある。
昼間、魔法にて回収したイノシシを出す。十体もいるが、大きさはさほどでもない。実際にどの程度実験できるかは難しいところだ。
「ま、駄目なら駄目でもいいんだけど」
魔法を用いてイノシシの肉とそれ以外を分離させる。必要な主な部分は肉だ。それ以外の部分は別の用途で再利用できそうなら再利用することにする。肉を加工し、形成する。魔法はこの手の加工が自由にできるのがありがたい。
いったい生物の肉を何に利用するのか。それは人形の作成である。今俺の作成した人形は木から作ったものだが、その人形では色々と不都合が多い。単純に使うのであるならばそこまで不便でもないが、個人的に使いたい目的がある。それゆえにより生物的な人形が欲しい。
「ゴーレム作成は楽なんだけどな」
いわゆるフレッシュゴーレムというやつだろうか。死体なんかの生物の肉から作るゴーレムなのにフレッシュというのは疑問だが。いや、新鮮という意味合いではないのだろうか。あれならば、単純に肉を素材にゴーレム作成の魔法を駆ければいいだけなので簡単である。しかし、生まれるのはただ肉が人型をとって動いているだけのものだ。まともな人間並みの動作は不可能であり、身体の強度も大したことはない。故に、作るのであればしっかりとした骨子をもつ人形である。
「……骨も再利用するか。肉だけだとだめだよな。別に木の人形をベースにして、肉をつける形でも悪くはないが」
でも、どうせならばより人間に近い形にする方がいいだろう。そのほうが使いやすいはずだ。
いくら魔法を用いていても、使用する魔法、必要とする工程、確認するのにかかる時間、今日中には恐らく無理だろう。時間を延ばしたり止める魔法もあるが、そういうものを使うのはよくない。フェアではない、というとあれだがなんとなくそういう感じに思ってしまう。使えるのだから使えばいいだろうけれど。
そうやって作業をしているうちに眠気が来る。体力回復、睡眠を代行する魔法などもある。しかし、やはりそういうものは使わない。加工に魔法を使うのに、そういう魔法を使わないのは奇妙に感じるかもしれないが、人間的な部分は維持するべきではないかと俺は思っている。そうでなければ良くないことになる可能性が高まるからだ。
「ふう。作業はまだまだ終わらないな。全ての物の時よ止まれ。"エターナルフリーズ"」
素材が素材であるがゆえに、防腐処理や生命的な状態維持を行っていない状態であるとだめになってしまう。なので魔法で時間を止めて新鮮さ、状態維持を行う。この場所においておかずとも、魔法で時の止まった異次元にしまってもいいが、持っていても意味がないのでここに置いておくのがいいだろう。
少し夜が遅くなったが、明日に影響がでない程度に眠る。睡眠補助とかそういう魔法は使わないが、目覚ましの魔法は使っておこう。流石に普通に起きるのは難しそうだし。
翌日、目覚ましの魔法により目覚める。朝の準備はいつも俺だ。料理をするうえで魔法がないと不便でろくに作れないせいもある。せめてこの隠れ家の環境をもっとよくできればまだ話は違うだろう。エリテが料理ができるかというと正直疑問なので俺が作るのはある意味仕方がないことと思っておく。いずれはエリテに料理を覚えてもらうのもありだが。
エリテが起きてきて、食事をとる。その後、宿の部屋に戻り、部屋においてあるギルドでつけた宝玉を再度つける。
「ねえ、それって何で外したり付けたりするの?」
「ああ、外すのはほら、俺たちは隠れ家に移動しているのがあるだろう? それにあれがあると問題があるからだよ」
「じゃあ付け直すのは?」
「外してたらギルドの依頼を受けられないだろ」
ギルドでつけられたこの宝玉は確実に依頼遂行だけのものではないはずだ。便利さはあるが、他の意図は恐らく追跡が主だろう。もしかしたら、他にも戸籍管理、実績の把握なんかもこの宝玉、その系列の何かを用いて行われていると思う。推測に過ぎないが、ただ利便性があるからというだけでこの宝玉をつけるものだろうか。絶対にお金がかかっているだろう物のはずなのに、登録するだけでただでつけられるなんておかしい。
エリテは一応俺の返答で納得したようだが、この手のことを疑問に思うには疑問に思える程度に色々と知識が必要になるだろう。俺もこの手の小説やら何やらでそういうった事例を知っているからこそ、そういったことに注意してやっているに過ぎない。もしかしたら思い込みという可能性もなくはないだろう。ただ、こういうのは本当にそうであったら厄介だからこそ、事前対策しておくべきである。遮断でも問題はなさそうだが、それで死亡判定されたりしたら困るし、置いていくという選択にしている。外せる魔法がなかったら流石に危険があっても遮断にしていただろうけど。
「それでだ、エリテ。今日は外に……いや、街を出るぞ」
「依頼は受けないの?」
「そういう意味で出る、ってわけじゃないからな。街を出る、次の街に行くってことだ」
ずっとこの街にいても仕方がない。そもそも、この街で働くことが本来の目的ではない。
「……もう別のところに行くんだ」
「ああ。もともとここにあまり長居するつもりじゃなかったからな。そもそも、色々なところに行きたいってのもある。エリテはどうしたい?」
「………………」
エリテは俯く。俺が知っている限りでエリテのやりたいことと言えば、剣士になりたい、くらいだ。ある意味、俺と同じであまり明確な目標がないということになる。
「エリテ、ここで何かをしたいとか、そういう目的がないなら、ついてこい」
「……うん」
エリテは剣を振るいたい、という目的はあっても、何故そうしたいかはまだないだろう。あくまで憧れの感情から剣をとっているにすぎない。いずれは見つけてほしいと思う。自分が剣を振る、その理由、目的を。




