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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
wizard
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7

 森の見回りを初めて二週間程たつ。最初は鳥を数羽狩り、何もいない森を見回りながら人形の素材となるような素材を集めながらの作業だった。一週間ほどたって、数匹の小動物が見かけられるようになった。基本的に戻ってきたのは草食動物のようだ。動物がほとんどいない森だったので肉食動物は食べる獲物がいないわけだが、逆に草食動物は自分を襲う生物がいない上に長い間動物がいないため増えた食物がある。当然草食動物が先に戻ってくるはずだ。脅威がいなくなったからと言って簡単に動物が戻ってくるものとは思えないが、実際戻ってきている以上そういうものなのだろう。

 草食動物を見かけたことを報告したが、狩る対象には加わらなかった。今までいなかったのが戻ってきた状況だ。まだまだ数も少ないし、下手に狩るとまたいなくなる可能性もある。必要ならば狩人が狩りをするらしい。俺が無駄に狩る必要はないとのことだ。


「今日も変わらないな」


 森を探索しても変わったことが起きる様子はない。起きないほうがいいのは当たり前だが、変化がないのはそれはそれで退屈だ。

 現在俺は森の中を人形の騎士を携えた状態で探索している。人形の騎士は魔法によりかなり人間に近い動作を行えるようになっている。それでも大本は切り倒した木から作られているのでやはり人間とは違う部分も多い。騎士には俺についてくることと、俺に危害を及ぼす生物がいた場合は俺を庇い防ぐこと、攻撃の命令があれば相手を襲い倒す事を命令として与えている。

 ゴーレムの魔法と人形の魔法の違いは、その作成難度と命令内容の実行の柔軟さにあるようだ。ゴーレムはどこでも簡単な素材を用いて即席に作ることができるが、耐久性に難がある。そして難しい命令は聞きにくく、仮に命令通りに動いてもその命令を実行する上での障害の存在を捉えない。歩けと言えば障害物があっても歩こうとするし、手や足が壊れて不可能になっても壊れた部分があるときのように行動しようとする。人形は事前に肉体となる部分を作る必要があるが、命令に忠実で内容を柔軟に受け入れて行動する。時間がない場合や数が欲しいのであるならばゴーレム、性能が高いものが欲しいのであれば人形ということだ。なお、二つを複合するのも手法としてはありなようだ。


「使い魔がいればな」


 本当は使い魔が欲しいのだが、悪魔を相手にするのはやはり怖い。いくら魔力が高くあらゆる魔法を使えるとはいえ、悪魔との契約となると危険だ。契約の魔法に関して知識を引き出したが、どうも契約は行ってしまえばその約束事は絶対の束縛になる。下手に悪魔と契約しようとしたらどうなるかわからない。


「動物の類だと……ちょっと難しいんだよな」


 動物の場合はある程度の動物との間に絆というものが必要であるらしい。魔力を受け、契約による束縛を許容しなければ使い魔にはならない。野生動物を捕まえてきて無理やり使い魔にするということは出来ない。生物を飼うにも村は大蛇のこともあって家畜の類はいなくなっており、いきなり村の新参者が動物を飼うと言うのも難しいだろう。狩りに動物を買えても自分がどのような生物を使い魔としたいか、というのもある。定番の動物ならばやはり猫だが、狐なんかを使い魔にしたいとも思ってしまう。もちろんその生物を飼った経験などない。あくまで憧れである。

 そういうことなので今は人形を扱うことで我慢するしかない。人形は他の事にも使う予定がある。そういう点ではたとえ使い魔ができても損はない。


「うわああああああっ!」


 いつも通り森を探索して終わりと思っていると、遠くの方から悲鳴が聞こえた。何事か、と思いその声のした方向へと駆けだす。後ろを歩きついてきた人形も俺の動きに合わせついてくる。

 普段見回る森の範囲から出て、声のした方向に向かっているとぼろぼろの外套を纏った小さな人影が見える。恐らく見た目通りと考えるならば子供だろう。その子供と同じくらいの大きさの鳥が襲いかかっている。鷲か鷹か、種類はわからない。その猛禽が子供を襲っている。倒れている子供の頭に攻撃を仕掛けている。恐らくは目を潰すためだろう。


「子供を守りに入れ!」


 人形に命令する。こういう時命も意思もない人形は利便性が高い。自分の身の安全というものを考えずに行動できるからだ。人形が子供の盾となり猛禽の攻撃を受ける。反撃も行っているが、持たせているのは簡単に作った木剣だ。相手を無力化するには難しいだろう。子供は少し頭を上げて人形の姿を確認した後、ふらっと頭を地につける。死んでしまったのか、それとも意識を失っただけか。どちらにせよ、あの襲っている猛禽を排除する必要がある。

 ここで問題になるのが魔法の選択である。周囲への被害を考えなくてもいいのならば空間ごと爆破するような魔法でも使えばいいのだが、ほかに人がいる状況であれば周囲に被害を与えるような魔法は使えない。ならば誘導性のある単体攻撃魔法を選択するべきだ。


「炎よ彼のものを追い焼き尽くせ! "フレイムスフィア"!」


 炎の玉を生み出し、猛禽へと飛ばす。猛禽はそれを感知したのか、攻撃を加えていた人形から離れようとするが、その回避の動きも追尾して炎が猛禽へと迫る。空へ飛び立とうとしたところに炎を受け、その身を焦がす。そのまま地面に落ち、炎に焼かれながら悶えている。


「大きな穴を作れ! "ピットホール"!」


 猛禽の落ちた地面に穴を作り、その中に落とす。人形に命令してその猛禽の落ちた穴の中に入り、足で潰させた。木でできた人形はそこまで重量はない。何度か穴の中で足踏みをさせるようにして踏みつぶさせることになった。少々格好がつかない倒し方となってしまったが、何とか猛禽を退治することは出来た。


「そうだ、子供!」


 子供の様子を見る。外套を纏っているせいで怪我あるかどうかがわからない。外套を脱がせる。


「耳? 獣耳? 獣人?」


 外套を脱がせ、その頭に獣の耳がある。人間の耳がある部分にも耳があるが、耳が四つあるというのは獣人の普通なのだろうか。そもそも、どちらの耳も機能しているのだろうか。

 四つの耳という疑問、獣人という亜人種の存在についての戸惑い、諸々の感情は置いておくとしよう。まずは生死の確認、怪我の容態を調べるのが先決だ。


「怪我は……酷くはないな。呼吸もあるし生きてはいるか。じゃあなんで気絶したんだろう」


 いくら猛禽に襲われたからと言って気絶するほどのショックはないと考えられるはずだ。しかし実際獣人の子供は今気絶している。よく体を見ると、結構痩せている。格好もボロボロだ。もしかしたら奴隷制度でもあるのかと体に何かあるのかいろいろ見てみるが、そういうものはない。よくわからないが、貧しい家庭だったか、ファンタジーでよくあるように亜人の立場が低いのかもしれない。


「どうするか……」


 同じようにここに来た獣人がいるのか、そもそも子供一人でここまできたのか。色々不明な点は多い。このまま連れて帰ってもいいものか、と考えてしまう。結局以前と同じ、記憶を読む魔法を使うことにした。 


「この者の近い記憶を伝えよ。"リーディング"」


 魔法の記憶の読み取り範囲を制限して使う。流石に以前のようにかなりの期間の記憶を読んでしまうとこちらも大変だ。ここ一週間の子供の記憶を読む。どうやらこの子供は獣人の一家の子供のようで、その一家が北の国から山を越えて逃げてきたようだ。ただ、その過程で親の片方が魔物に襲われ命を落とし、残りも散り散りになったようだ。誰がどこに行ったのかもわからない以上、探すのは難しいだろう。そしてどうやら獣人の扱いは奴隷とまではいかないが酷いようだ。

 このままここで見捨てていくべきか。そう一瞬考えるが、自分の答えは決まっていた。


「連れて行こう。この子を運んでくれ」


 人形が以前エルマさんを運んだように子供を抱えあげる。ここで見捨てるくらいならば助けることなどしていない。仮に獣人だからと言って、何だと言うのだろう。俺にとってはまったく関係のない話だ。

 その日の森の見回りはそれで終わらせ、子供を連れて村に帰った。

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