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妄想設定作品集  作者: 蒼和考雪
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6

 基本的に開拓作業は木を切り倒し、残った切り株を地面から引き抜き、残った穴を元に戻す作業が主である。畑などを作るにはある程度森を切り拓いて余裕のある空間ができてからになる。

 村人だけでは木を切り倒すのも、切り倒した木を運搬するのも、切り株を地面から引き抜くのも大変な作業になるのだが、魔法使いである俺が作業に加わると話は全く変わってくる。どの作業も、簡単に魔法一つで行えるのだ。本来ならばある程度魔法を使うと魔力の使い過ぎでどうしても魔法の使用が難しくなってくるが、俺の場合は魔力量の高さもあり全く問題なく作業が続けられる。そのためかなりの範囲を開拓することができた。


「今日はここまでだ!」


 ある程度森を切り拓くと、開拓作業のリーダーが作業終了を告げる。まだ太陽が昇りきらない時間だ。


「作業を終わるのには早すぎないか?」


 普通は午前中だけで作業を終わることはないはずだ。その早すぎる終わりに疑問を呈した。作業のリーダーを務めている村人はこちらをじろりと見てくる。少し怒りを含んだ視線だ。


「普段はこんなに早くは終わらない。お前がいたからかなり森を切り拓くことができた。だから終わりなんだ。あまりに一度にやりすぎると問題が起きるからな」


 開拓作業における殆どの作業で自分がかなりの仕事をやっていた。有り余るほどの魔力とあらゆる魔法を使えば数分、数十分はかかる作業をものの数秒、数十秒で終わらせることができる。半ば他の人間が行うべき仕事を奪っていたように思う。能力があるからと言ってやりすぎはよくない。


「切った木を運べ。ああ、お前はやらなくていい」


 自分ならば切った木を全部一人で持っていくこともできる。それは向こうもわかっているだろう。だからわざわざやらなくていいと言ってきた。他の人間がするべき仕事を奪うな、と。

 村人が木を運ぶ姿を見ているしかできないのは少し苦しい。他者が仕事をしているのに自分だけしていない、というのはどうも心苦しいものがある。だが、これは俺が仕事を奪っていた村人も思っていたことだろうか。仕事を行った量だけを見れば俺のしていた仕事量は村人の何倍もの量だ。俺自身が感じている苦労は殆ど無いくらいだが、他の人がどう思うかは別だ。仕事を押し付けている、もしくは奪われていると感じたのだろうか。

 心を読めばわかるだろうが、そういう問題でもないだろう。自分で考えなければいけないことだ。この村の人間として、彼らの仲間となるのならば。







 村長からしばらく開拓作業を行うことはなくなったと告げられる。かなりの広範囲を開拓し、今開拓する範囲を広げてもこれ以上の開拓は開拓した場所の管理ができなくなる、ということであるらしい。つまり開拓作業に従事していた人員は職を失うことになる。別に仕事がない、というわけではないが、各仕事に振り分けられる村民にも上限がある。その一つを失うのは大きなことだろう。自分のやりすぎが問題である。

 他の人はすでに別の仕事に回ることが決まっており、俺の仕事も何をするのか話し合って決まったらしい。俺が新しく行う仕事は森の見回りだ。基本的に狩人が行うものだが、村の狩人が見回る範囲よりも外側を見回ってほしい、ということらしい。誰かと一緒というわけではなく、一人だけだ。

 この仕事を頼まれる理由の一つは恐らく厄介払いに近いだろう。他の人間と仕事を行うと俺の方が魔法で何でもできるので仕事を奪ってしまう形になる。仕事をしたくない、さぼりたいと思う人間がいればその人間がなるのでは、とも思ったがたった一人でも仕事をしなくなる村人が出るのは問題だろう。もう一つの理由は、大蛇が死んだことで森に戻ってきた魔物や野生動物の確認だ。どの範囲でどのような生物が山に戻ってきたのかを確認したい、ということだ。この生物の帰還がどのようになるかわからないので、魔法使いという戦力になる俺を回したのだろう。

 翌日、森の見回りを行う。先日は開拓の時にどうも木を切り倒しすぎたためか、森の中に入っての食物の採取は行わなかった。今日の見回りで食物になりそうなものを採取してきてほしい、と見回りのついでに頼まれた。俺はどれが食べられるのか、毒を持っているのかなどがわからない。なので採取は知っている人間無しでは難しい、といったのだが、それならば鳥類を取ってほしいと頼まれる。動物の類でも鳥は大蛇がいても結構残っているらしい。時々森に出て狩ることはあったらしい。大蛇がいるのであまり遠くまで行くことは難しいので近場で狩るのが多く、村に近い場所に棲む鳥は減ったそうだ。

 ただし、俺の魔法が強力であるため、狩りすぎないようにと注意された。狩りすぎると数が減り、絶滅の危険もある。いなくなれば生態系にも影響が出る。小さいものは狩らず、大きいものを二羽まで狩ってもいい、と言われた。理由はよく理解できるので、その内容を承諾した。別に絶対に狩らなくてはならないというわけでもない。狩る機会があれば、ということだ。


「探してみても全然いないな」


 森を見回る仕事を与えられたのは良いが、全くと言っていいほど野生動物の類はいない。鳥は時々いるのを見かけるが、虫の類ですら少ないように感じられる。地上の生物は大小問わずすべて大蛇の餌だったのだろう。最も虫の多くは空を飛べるし、木の上や土の中や石の下に逃げたり隠れることだってあるだろう。細々と生き残っているはずだ。


「どうせなら魔法をいろいろ使ってみるか」


 どんな魔法が使えるか、日常生活や開拓のなかでも使ったが、圧倒的に使わない魔法の方が多い。あらゆる魔法を使えるのに使わないのは持ったいない。

 最も、こんな場所で攻撃魔法を使ったりはできないだろう。魔力消費の少ない小さなものならば使っても問題ないとは思うが、知識にある魔法の多くは強大な魔法が多い。弱い魔法でもうっかり魔力を籠めすぎれば強大な威力を持つだろう。俺自身どの程度まで魔法を扱えるかはわからない。知識は与えられたが圧倒的に経験が足りていない。だからこそ、練習が必要なのである。


「被害の出ない魔法……収納とか明かりとか? あ、使い魔……は無理だけど人形作成もありか。具現化、物質化、温度変化……は怖いな。知識転写とかそういう他人に使う者や他人から奪ったりする相手がいないと使えないのはできないな。転移、転送、形成、物質変換、いろいろあるな……あらゆる魔法って言ってたか」


 知識を引き出すと、本当に色々な魔法がある。この知識は本のように書かれているものを確認するようなものではなく、どちらかといえば必要な情報をもとにその情報に引っかかる魔法を検索するタイプだ。しかもその条件に当てはまる中で適性の高い最善の魔法を選んでいるようだ。例えば火の玉ならば"ファイアーボール"と"フレアボール"という魔法があるが、これは前者が手のひら大、後者が頭位の大きさになるらしい。単純に火の玉の魔法と考えるとすると前者が知識で引き出される。これが大きい火の玉を生み出すもの、もしくは炎の玉の魔法で考えると後者になる。厳密な区分はわからないが、単純な条件だけではなく俺のイメージも影響しているようだ。

 そしてこの魔法の知識の引き出し方には一つの欠点があり、自身が使いたいと思った魔法以外の魔法の知識が引き出せないことである。どんな魔法でも扱えるが魔法にどんなものがあるか、どんなことができるかはわかりにくい。


「試しにゴーレムでも作ってみるか。土よ人の形をもって命なき従者となれ。"クリエイトゴーレム"」


 地面が盛り上がり、人の形を取っていく。生まれたのは俺と全く同じ姿をした体の全部が土で構成されたゴーレムだ。自分と全く同じ姿なので少々心穏やかではいられない。幸いなことに服も模倣しているのはありがたかった。


「これは……とりあえず、歩け」


 動作を命令してみた。動け、というとあまりに曖昧すぎるため、歩くことを命じる。方向や歩く速度を指定しているわけでもないのでこちらもあいまいな命令だろう。命令を受けたゴーレムは歩き出す。それと同時に体からぱらぱらと土が落ちている。ある程度魔力で体の維持はできるが限度があるようだ。ゴーレムはそのまま真っ直ぐと歩き、目の前にある木に衝突する。衝突してなお歩こうとして体がばらけた。そのままゴーレムの肉体は崩壊し、魔法が解ける。


「人形の方とは違う感じか?」


 人形の時は歩けという命令でも今回のようなことにはならなかった。そもそも魔法の種類が違うのだが、だからといってその内容がどの程度違うのかまではわからない。


「これは検証必須だな」


 どのような魔法を使うにしても、意図したとおりに魔法が作用するかわからない。例えば以前エルマさんを運んだ場合も人形ではなくゴーレムを使っていたらどうなっていただろう。あの時は使い魔をイメージした結果で人形操作の魔法だったからだが、最初から人形を生み出して行使したいとなっていたらどちらの魔法になっていたかわからない。

 軽く土を利用しながら人形を作成し操作する魔法、ゴーレムを作成し操作する魔法を試す。使い魔も作りたいところだが、地味に生命を作り出す魔法少ないようで、魔力によるごり押しができるものの、必要な条件が多く簡単にできるものはない。

 色々と魔法を試し、その中で魔法の知識を引き出していく中で、あらゆる魔法の知識があるが、すべてが無条件で使用できるというわけではないらしい。例えば太陽光を利用する魔法は太陽が必要なので昼間しか使えないし、相手が必要な魔法は魔法を使う相手がいなければ使えない。そういった前提条件が整っていなければ使えないの当然と言えば当然だ。


「あらゆる魔法を使えるって言っても無条件で何でもできるわけじゃないのか」


 少々の落胆はあるものの、大半の魔法は魔力さえあれば使える魔法だ。自分が一番使いたいと思った魔法もこの世界には存在し使えるようなのでありがたい。ただ、その魔法は少々必要な準備があるようなので、その準備をいつかやらなければならない。そのためにもいろいろと魔法を試し、その準備に必要なものを集められるようになるべきだ。


「まずは使い魔……人形を扱えるようになるべきか」


 家にある木で作った人形を思い浮かべる。人形の魔法は単純に人形操作だけではない。他の魔法もそうだが、類似したり性質の違う魔法は幾つもあるようだ。一度作ったのに利用しないのももったいないと思い、様々な人形に使えるものも探しながら、森を見回ることにする。


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